ソフトバンクグループが法人企業向けに開催するイベント「SoftBank World 2017」の開幕基調講演に、代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏が登壇。「情報革命」の時代に向けて、今後ソフトバンクとしてスマートロボットやIoTのビジネスにどう関わっていくのか、展望を語りました。

20170721_y-koba8 (1)↑「SoftBank World 2017」の開幕基調講演で熱弁を振るう、ソフトバンクグループ 代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏

 

スマートロボットやAI、IoT関連ビジネスをいかに切り開いていくか

「SoftBank World」は今年で6度目の開催を迎えました。全2日間の日程で開催されるイベントでは、情報・通信の技術、IoT、ロボットをテーマにした多数の基調講演や、パートナー企業によるBtoB向けのソリューションが特設展示ブースで紹介されます。

20170721_y-koba8 (7)↑「SoftBank World 2017」の展示ブースにはシャープも参加。独自に掲げる「AIoT(モノの人工知能化)」の開発プラットフォームや、高性能な音声対話システムの活用事例を紹介。自社での商品化も予定しているという、アシスタントロボットの試作機の姿もありました

 

孫氏の基調講演はイベント初日のオープニングを飾るイベントということもあり、朝早くから大勢の来場者が孫氏のスピーチに耳を傾けていました。

 

今年の基調講演のテーマは、今後、スマートロボットやAI(人工知能)、IoTに関連するビジネスをグループ傘下のパートナー企業とどのように力を合わせて切り開いていくのか、孫氏、そしてソフトバンクグループが描く航海図を示すものでした。およそ2時間半に渡って行われた講演には、2016年にソフトバンクグループに加わることが発表されて話題を集めた、イギリスのマイクロチップ設計のトップ企業であるARMや、今年の6月にソフトバンクが買収を発表した、アメリカでスマートロボットの研究開発を手がけるボストン・ダイナミクスなど10社のパートナー企業の代表者も駆けつけました。

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孫氏はまず、「情報革命の時代に生まれた私たちが、最先端のテクノロジーによって世界を変えることにチャレンジできることに、私は幸せを感じています」とスピーチを切り出しました。「18世紀以降にイギリスから始まった産業革命により、人間の肉体による機能が限界を超えて拡張されました。そして現代の情報革命は肉体よりも人間の頭脳や知識、脳細胞の働きの延長線上にあるものを拡張することで、より劇的な進化に導けるでしょう」と持論を展開しました。

 

情報革命の時代の“ジェントリ”に

ソフトバンクグループは投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立し、アラブのファンドや開発公社に加えて、フォックスコンにクアルコム、シャープなどの企業から合わせて10兆円規模の資金調達を成功させたことが先日報じられました。孫氏は「産業革命の時代に社会貢献に尽くした騎士のため、惜しみなく資金を援助した“ジェントリ”たちの精神に倣って、情報革命の時代にはソフトバンクが有望な企業や情熱家たちのジェントリになりたい」と力を込めて語りました。これまでにもソフトバンクは孫氏が決断を下しながら、成長領域と見込まれる企業などに積極的な投資を行ってきました。孫氏は、その大半からリターンを刈り取ることができたと胸を張って応えつつ、「これからもリスクを取りながら攻めの姿勢で投資を行うことがグループの成長には不可欠」と述べています。

20170721_y-koba8 (4)↑「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は世界のベンチャーキャピタルによる2016年度の総額よりもさらに大きな調達規模で有望な企業の成長を後押ししていく構えを整えました

 

来たる「技術的特異点」に向けて全力を尽くす

孫氏は数年前から、SoftBank Worldの基調講演の壇上で「Technological Singularity=技術的特異点」という言葉の重要性を繰り返し説いてきました。技術的特異点とは、コンピュータの処理能力が進化した結果、その性能が人間の知能を追い越してしまうときを指します。孫氏は「技術的特異点は、今後30年以内には必ず訪れる。コンピューターが人間を凌ぐほどに賢くなる時代がやってくることは疑いの余地もありません。その時に人々に幸せを感じてもらえるように、ソフトバンクグループはいま情報革命に全力を尽くしているのです」と壇上で強調しました。

 

そのために、ソフトバンクが育てるべき「改革の成長エンジン」として、孫氏はマイクロチップを挙げています。その理由は今後、スマホなどモバイル機器にとどまらず、様々な家電やIoT・産業用機器にも高性能なマイクロチップは不可欠であるから。また、広く普及したIoT機器から様々な情報をビッグデータとして取得して、これを解析するノウハウの重要性についても孫氏は指摘します。「パソコンだけでなく、ありとあらゆる機器にマイクロプロセッサーが組み込まれ、人工知能やディープラーニングの技術が発展していけば、いよいよ人間の『智恵』が機械によって拡張される時代がやってきます」と語る孫氏は、その人工知能を鍛えることのできるものが「データ」であるとしながら、「有益なデータを先に得た者が、これからの情報革命を勝ち抜くことができる」と意気込みを語りました。

20170721_y-koba8 (3)↑これからの情報革命の時代には、IoT機器(家電などインターネットでつながる多種多様なデバイス)に、ソフトバンクのグループ企業であるARM社の高性能なマイクロチップが搭載され、AI(人工知能)を搭載するロボットやデバイスがさらに増えていくと孫氏は語りました

 

20170721_y-koba8 (6)↑ARMのCEO、Simon Segars氏もマイクロチップ製品の世界戦略を語りました

 

新生代ロボットの実演&ペッパーの今後は?

ソフトバンクは人工知能を搭載するロボット「ペッパー」を、世界でもいち早く一般のコンシューマー向けに商品として発売したメーカーでもあります。ロボットビジネスについては、アメリカのボストン・ダイナミクスをグループ傘下に招いたことで、今後は産業用のロボットも含めてさらに開発に注力していく構えです。

 

SoftBank Worldの会場にはボストン・ダイナミクスのCEOであるMarc Raibert氏も駆けつけて、四脚歩行のロボット「SpotMini」を壇上でお披露目しました。SpotMiniは本体に搭載するカメラとセンサーで障害物を避けながら4本の脚で機敏に走り回ったり、アームでモノをつかむこともできるロボット。レイバート氏は「セキュリティや宅配サービスなどの分野に活躍できるロボットになるだろう」と誇らしげにアピールしていました。SpotMiniのデモンストレーションは基調講演のハイライトになりました。

20170721_y-koba8 (5)↑ボストン・ダイナミクスのCEO、Marc Raibert氏が「SpotMini」を披露

 

デモンストレーションの様子は次の動画をご覧ください。

孫氏はまた、自社のペッパーについても「現在のモデルは“ピノキオ”とからかわれることもあるようですが、これからもペッパーは世代を“20・50・100”と成長を重ねていくことで、よりスマートなロボットに成長していきます」と述べ、これからもバージョンアップを続けていく考えを明らかにしました。

 

これからのロボットは人工知能を備えて、自ら学習することで成長を続ける「スマートロボット」であることが、いままでのロボットとの決定的な違いであると孫氏は強調しています。「私たち人間がスマートロボットと共存しなければならない日はいつか必ず訪れます。その時、人間はロボットに“越される”側ではなく、“越す側”に立って世界を変革していきたいと私は考えています。技術的特異点が訪れたあとも、人はより幸せになれると確信しています。300年後、そして1万年後の人々の幸せのために、ソフトバンクは同じ志を持つ企業と一丸となって、情報革命に全力を尽くしていきたい」と、孫氏は壇上で熱く抱負を語りました。