「週刊GetNavi」Vol.57-1

20170730-i01

 

「最新のAR」を実現するAppleのARKit

Appleは毎年、iOSを秋にアップデートしている。当然ながら、その時期に登場する新しいiPhoneを想定してのものだ。iOSもかなり成熟しており、昔ほどアップデートに注目は集まりづらくなったように思う。だが、今年のiOSである「11」は、いままで以上に注目が集まりそうだ。理由は2つある。まず、iPad向けに機能アップが行われ、一般的なPCのようにファイルの操作が可能になること。そして、iPhoneを含む多くの機器に「AR(拡張現実、Augmented Reality)」の機能が搭載されることだ。

 

ARは、スマホなどのカメラで撮影した現実の世界にCGをうまく重ねることで、本来はそこにないものを描く、という手法のこと。画像合成と位置合わせの技術によって可能になる。

 

ARそのものは決して新しいものではない。2009年に話題になった「セカイカメラ」というサービスを覚えている、という方もいるのではないだろうか。また、看板などに向かってスマホを向けると特別な映像が見える……というプロモーション用アプリも多数ある。自然に「CGの物体」を置けるように進化しかし、現在広まりつつある「今日的なAR」は、それら過去のものとはレベルが大きく異なる。iOS 11で追加されるフレームワークのARKitも、そんな「最新のAR」を実現するもののひとつだ。

 

過去のARは、CGを重ねる場所に特別な「マーカー」が必要だったり、重ねられるものが板一枚だったりした。だが、現在のARは違う。机の上に本物の物体を置くように、自然に「CGの物体」を置ける。もちろんマーカーなどいらない。周囲の照明の状況に合わせて物体も自然な色になり、机の端にずらせば床に落ちる。要は「下になにがあるか」を把握し、その上に乗っている状況が再現されているのだ。

 

既存のiPhoneも対象に巨大なAR市場が誕生

iOS 11は現在ベータテスト中だが、すでに開発者は様々なARアプリを開発し始めている。街中にキャラクターを出して踊らせたり、「穴」を空中に開け、その奥に全天球カメラで撮影した映像を出して「どこでもドア」のように向こうに移動できるようにしたり……。秋にiOS 11が正式公開された時には、ユニークなARアプリが多数登場することだろう。

 

ARKitは、「iPhone 6s以降のiPhoneとiPad Proおよび第5世代iPad」であればすべてで利用できる。特別なハードウエアは不要。iPhone・iPadに搭載されているカメラとモーションセンサーだけを使って、高精度なARを実現している。膨大な数のiOS機器を市場としてARアプリを展開可能になるわけだから、デベロッパーとしてもやりがいがある。

 

ARは、マイクロソフトやGoogleも手掛けており、競争が激化している。そのなかで、Appleは「すでにあるiPhoneをうまく使う」ことで一歩先に出ようとしているのだ。

 

では、その戦略に死角はあるのか? 他社との違いは? そのあたりは次回のVol.57-2以降で解説する。

 

週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!