タイムマシンやパワードスーツ、人工知能にサイボーグ…。映画や小説にはさまざまなかたちの「未来」が登場します。いきなりですが、筆者の好きな映画は「アイアンマン」。空飛ぶスーツやホログラムなど、ストーリー以上に未来のテクノロジーにワクワクします。フィクション作品のなかでも、自分自身や日々の生活との接点があると、その未来をずっと身近に感じてワクワクしたりしませんか?

 

そんな体験ができたのは、10月15日から4日間にわたって開催された「CEATEC 2019」。国内外のさまざまな企業が最先端の技術や製品を披露する国際的な展示会です。近年は5G、AI、拡張現実、ロボット、自動運転など最新テクノロジーを披露するブースが少しずつ増えていましたが、今回はもはやそれらがメインだったと言い切っていいでしょう。会場ではまさにSFの世界で見た技術、展示が見られましたが、今後はさらに「実現性」が求められるはず。本記事では、今年のCEATEC会場で「実現することの驚き」と「日常で役立ちそうな利便性」の両方を感じられたものをご紹介したいと思います。

 

 

これぞ未来のクルマ「rFlight」

SF世界のテクノロジーの代表格といえば、空飛ぶ乗り物。バイクや車、宇宙船など実にさまざまな形のビークルが思い浮かぶのではないでしょうか。

 

通信や医療など多分野でセンサー製品を製造するタイコ エレクトロニクスが展示していたのは、小型飛行装置「rFlight」。VRヘッドセットを使った体験飛行ができるとのことで、さっそく体験してみました。

 

↑ハーネスやVRヘッドセットを装着して乗り込む

 

↑コックピットはこんな感じ

 

rFlightは「垂直離着陸」が可能なため、飛び立つための助走が要りません。パイロットは立った姿勢で乗り込み、うつ伏せになって飛行します。燃料補給や充電をせず、約32kmを飛行できるそう。

 

体験飛行は、海沿いの公園のような場所を飛び立ち、市街地にあるタイコ エレクトロニクスのオフィスに出勤するというルート。高層ビル群を抜けたり地上付近まで急降下したりと、映像にあわせてワイヤーで吊るした機体が動くので、リアリティが増します。

 

↑ビル群をすり抜けたり、鳥が目の前を横切ったりとなかなかスリルがある

 

↑VRで見ている映像。左上のアンドロイドがルートや周囲の情報を案内してくれる

 

このrFlightは、ボーイング社がスポンサーを務める個人用飛行装置の国際コンテスト「GoFly」に向けて開発中のもの。なんとこのコンテストは来年2月に開催され、カリフォルニア州で実際に飛行するのだとか。あと半年もしないうちに飛ぶのか…と驚きました。

 

「空を飛ぶ」ということでもう1つ。スイスの企業SOMNIACSは、VRとロボティクスを用いて鳥になる体験ができる「Birdly®」を展示していました。

 

↑翼は角度をつけて動かせる。顔の前にファンがあるため、風を感じながら空を飛べる。スイスの企業だから(?)か、デザインがクールだ

 

飛行装置であるrFlightとは違い、Birdly®はあくまでも飛行シミュレーター。現在は世界各地の博物館やゲームセンターなどに置かれているようです。

 

実は日本でも、経済産業省が空飛ぶクルマの実用化に向けたロードマップを発表しています。実用化の目標は2023年。都市部の道路の混雑緩和や、離島や山間部における新しい移動手段となることが検討されているほか、地形による影響を受けないために、災害時の救急搬送や物資輸送といった活用方法も期待できます。

 

SF世界の中の存在だったものが、まさに実現しようとしていることにワクワクします。体験してみて、未来と自分との距離がぐっと縮まった気がしました。

 

↑取材に同行してもらった編集部の玉造氏。VRの世界を堪能するあまり、全然前を見ない

 

触れずに操作する「空中ディスプレイ」

「アイアンマン」には、トニー・スタークが空中で設計図を展開し、図面を拡大したりパーツを指ではじき飛ばしたりする場面があります。とても好きなシーンです。それを思い出さずにいられなかったのが、新光商事の「空中ディスプレイ」。映像を空中に投影する技術です。

 

↑写真ではわかりづらいが、映像はこちら側に立ち上がった角度で投影されている

 

元のディスプレイに映る画像の光線が、特殊なガラスプレートを通過することで、ディスプレイとは反対側の同じ距離の位置に再び光線が集まり、元の画像と同じ像を形づくるという仕組み。タッチセンサーを利用して、空中での操作が可能になっています。

 

↑空中の映像に触れて、キャラクターを動かせる。押した感覚はないが、しっかり操作できる

 

思わず「アイアンマンだ…!」と興奮しましたが、社員の方から説明を聞いて、その実用性に納得しました。たとえば、病院や飲食店。濡れたり汚れたりした手でも物理的に触れることなく操作ができるので、衛生面で非常に効果的です。

 

また、具体的な数字はわかりませんが、上下左右の視野角もかなり狭い印象。横からのぞき込んでも見えなければ、銀行のATMなどにも活用できそうです。ディスプレイに指紋が残らないことも、セキュリティ面から見て大きいでしょう。

 

↑壁に設置するタイプも

 

映画の中の話であれば見た目のクールさがすべてですが、現実で重要なのは実用的かどうか。その点で、空中ディスプレイはかなりの利便性を備えています。スタークさんのように自由自在に操作する日は近そうです。

 

 

人にも環境にもやさしい「スマートホーム」

ゲーム機器の通信対戦やスマホの充電など、「ワイヤレス」っていまでこそ当たり前ですが、意外と身近な未来じゃないかと思うんです。

 

その未来のさらに先にあるのが、Arm Treasure Dataが展示していたコンセントのない家「OUTPOST」。コンテナ型の住居には、ワイヤレス給電システムや水循環装置が組み込まれており、水道管や電線を必要とせずに暮らせることをコンセプトにしています。

 

専用の照明やマグカップを「POWER SPOT™」に置くことで給電ができます。スマホのワイヤレス充電器などで使われるQi規格は最大で15W以下しか電送できませんが、このPOWER SPOT™は最大800Wまで電送できるので、PCの充電や、お湯を沸かしたり飲み物を保温したりといったことが可能です。

 

↑POWER SPOT™のマークがある場所に置くと給電が可能。このライトは左右に回すと明るさを調節できる

 

また、このPOWER SPOT™は専用アプリでホームネットワークとの接続ができ、スマホやAIスピーカーなどからも操作できます。

 

 

↑水やエネルギーの使用量、循環率もデバイスから確認できる

 

コンセントや配線のない部屋は、想像以上にスマート。それだけではなく、配線が絡まったりホコリが溜まったりすることがなく火事の危険が低いなど、見た目のスマートさ以上に実用的でもあることを実感しました。水の再利用など、環境への配慮もなされています。

 

OUTPOSTはまだコンセプト段階ですが、従来のテクノロジーに依存しないテクノロジーをつくることも、ひとつの未来なのだと感じました。未来に実感を持つことってなかなか難しかったりします。たとえば、SF作品の家に生活感がないのは、コード類が見当たらないからだと思うんです。POWER SPOT™が作り上げる世界観はまさにそれ。ワイヤレス技術自体は、すでに世の中に普及しているもので、まず言葉から入ると「未来!」という感覚はないのですが、ホーム全体という「徹底」をしただけでSFの雰囲気をまとうのです。SFを生み出すテクノロジーはもはや日常の中にあるのだと確信できました。

 

そのほかにも、rFlightや空中ディスプレイのように、体験したり実用例を聞いたりすると、自分が使うイメージというか、生活の一部になることが想像できるんですよね。未来はいまの生活の延長線上にちゃんとあるということが。その実感を持てただけでも、未来が近づいてきたように思います。みなさんも本稿で少しでも「未来」を感じてもらえたら幸いです。

 

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