現在、多くの企業が休業を余儀なくされています。音楽業界も例外ではなく、自身のバンドでいつも練習で使っている音楽スタジオも休業中です。僕ら、音楽を生業とする人はもちろん、さまざまな形で音楽に関わる全ての人にとって非常に厳しい状況が続いています。それでもやっぱり思ってしまう「バンド練習してえ!」

 

緊急事態宣言発令中は当然無理ですし、今後ある程度自粛が緩和されてきたとしても、いつも通りスタジオに入ったりライブしたりできるようになるのはもっともっと先の話になると予想されています。そんな状況のなか、なんとか在宅でバンド練習できないものかと色々調べてみました。いま危機に瀕している音楽業界のためにも、この記事が一人でも多くのミュージシャンに届けばうれしいです!

 

遠隔でのバンド演奏の進化が凄い。ヤマハ「NETDUETTO」

在宅でバンド練習やセッションしたい! そこでまず提案したいのがヤマハの「NETDUETTO」というサービスです。「NETDUETTO」はインターネット上でのリアルタイムセッションを目的に、2015年から実験的に開発を進められてきたアプリで、最初にβ版がリリースされ、現在はβ2がリリースされています。

 

↑NETDUETTOのトップサイト「NETDUETTOラボ」

 

インターネットを通じて合奏する時に、一番問題になってくるのが音の遅れです。会話をするぐらいでは特に気にならないような音の遅延でも、複数人で楽曲をセッションする際には死活問題になってしまいます。NETDUETTOはこの音の遅延を極限まで少なくすることによって、離れた場所でもリアルタイムで音楽セッションができる技術なのです。

 

家庭用のインターネット環境に特に手を加える必要もなく、比較的容易に導入することが可能です。外出自粛の状況下でも希望が持てる技術ですよね。遠隔で音を送受信する技術に関しては、まだまだ実験的な開発段階であると言えますが、コロナウイルスによる情勢の激変によって一気に高まる需要と共に、開発のスピードも更に加速していくことでしょう。

 

実際にインストールしてみた

NETDUETTOラボからダウンロード、インストールまで完了すると、先ずは「ルーム」というチャットルームを作ることから始めます。NETDUETTOはセッションするグループごとにルームを作成してプレイします。

↑ルームの作成者を決めて作成

 

メンバーがルームに入るとこの様な画面になります。

↑メンバーが自分だけ入室した画面

 

↑他のメンバーが入室するとこんな感じ

 

他のメンバーが入室して楽器を接続すると、楽器ごとの調整画面などが表示されます。入室の際にパスワードを自由に設定できるので、決まったメンバーで集まってセッションしたり、入室制限をかけずにその場で入室してきた人達とフリーセッションしたり楽しみ方はそれぞれです!

 

オーディオプレイヤーを接続することもできるので、足りない音をプレイヤーから流しながら演奏できます。設定画面ではオーディオの入出力設定やMIDIコントロールの設定、簡単な音質の設定などが行えて便利です。

↑設定画面で最適な演奏環境を作れる

 

1つのルームに入室できる人数の上限は5人となっています。それ以上の人数でセッションしたい場合にはルームを2つ作成して、ルーム同士を連結させることで最大10人まで同時にセッションできます。まだまだ実験段階のアプリですが、現在のユーザーニーズに応えられる仕様になっています。

 

いくつかのハードルは存在する

比較的簡単に導入でき、遠隔での音楽セッションをグッと身近なものにしてくれるNETDUETTOですが、快適なプレイ環境にするには、やはり相応の準備が必要です。

 

まず、ネット環境ですが一番快適にプレイできるのは光回線の有線接続です。そして、光回線よりは少し劣りますがブロードバンドの有線接続でも比較的音の遅延は少なくプレイできます。しかし、無線接続やモバイルルーターなどのネット環境になると、一応プレイはできますが、セッションとなると音の遅れが激しく、合奏するのは厳しくなってしまいます。

 

そして、肝心のオーディオ環境ですが、オーディオインターフェイス(USB端子を使ってギターやマイクの音をパソコン上に取り込む装置)は用意しないと厳しいかなと思います。パソコンに内蔵されているドライバーやマイクでも一応音は出せます。しかしそれだけだと音の遅延や劣化が出てしまい、合奏できるクオリティではないかなと。オーディオインターフェイスと言われるとあまり馴染みのない機材かもしれませんが、最近ではかなり安価なモデルも発売されており、導入は難しくないでしょう。いくつかおすすめのオーディオインターフェイスをご紹介します。

 

●ZOOM「U-22」

ZOOMから発売されている「U-22」は、7000円前後で販売されている安価なモデルで必要な機能性もあるので、入門モデルとしておすすめです。コンパクトサイズでiPhoneやiPadと接続して活用するのにも便利。

↑サイズはW91.8×H44.6×D119.2mm

 

弾き語りをする人など複数の回線が必要な方は、入力端子が2つ以上あるモデルを選んでください。U-22より少し値段は上がりますが、プロでも使っている人が多く、高音質で低遅延のモデルとしてはベリンガーの「UMC202HD U-PHORIA」がおすすめ。値段が上がるとはいえ、こちらも実売価格で1万615円と、かなりお手頃な価格となっています。

↑2入力2出力、USB2.0に対応。192kHz/24bitまでの高音質データの処理もできる

 

Macユーザーは、Macに内蔵されているドライバーが優秀なため、ある程度どんなオーディオインターフェイスを選んでも正常に動作すると思いますが、WindowsユーザーがNETDUETTOを利用する場合は、「ASIO」ドライバー対応となっているオーディオインターフェイスでないと正常に動作しない場合があるようです。この点だけはお気を付けください。

 

これからの進化に期待する事と5Gの普及

NETDUETTOは2020年6月に「SYNCROOM」としてリニューアルされ、正式にサービスが始まります。現在アナウンスされている情報では、引き続き無料でほとんどの機能が使えるようです。また、追加でアナウンスされている追加機能は「録音機能」「メトロノーム機能」。正式にサービスが始まれば、まだ機能追加を期待したいところ。

 

 

↑SYNCROOMのルーム画面。NETDUETTOのUIを踏襲している

 

追加機能として、僕が一番期待するのは映像による通話機能です。現在のNETDUETTOには通話機能は搭載されていません。文字によるチャット機能のみです。プレイ中に顔を突き合わせながら会話するには、NETDUETTOとは別にSNSなどを起動してビデオチャットで会話する必要が出てきます。これは少々面倒なんですよね。さらに、映像付きで会話ができないと、リアルタイムで楽曲に対する意見交換をしたり、アイコンタクトを介した合奏もできず、一緒にプレイしている感は半減してしまいます。自宅でバンド練習を突き詰めると、聴覚だけでなく視覚的にもリアルタイム性が必要なのです。

 

そこで、遠隔セッションにおいて進化の道標となるのが、最近話題の5Gの普及ではないでしょうか。5Gのメリットは、無線環境でのデータ通信量が格段にアップすることです。現在有線接続じゃないとまともに機能しないNETDUETTOも、モバイルルーターなどの通信環境でセッションが可能になることが期待できます。

 

しかし、キーボードやエレキギターなどオーディオインターフェイスを通じてデータ入力できる楽器は問題ないのですが、やはりドラムや管楽器など実際に生音を出す必要がある楽器に関しては、どうしても自宅の防音環境が必要になってきます。それでもドラムは、電子ドラムを用意する手がありますが、電子ドラムもスペースを占有するものなので、用意できるかは環境次第かと。今のところは、ドラムや管楽器の人だけスタジオにパソコンを持ち込むとか、あらかじめ録音してもらってオーディオプレイヤーで流しながらなどの方法がベターですが、本来なら全員が自宅でプレイできる環境が作れるとベストですよね。

 

緊急事態宣言が発令されている今はスタジオに入れませんが、今後自粛が緩和されていけば、例えばドラムの人はスマホを持ってスタジオから、他の楽器の人は自宅からといった感じで遠く離れていてもセッション可能になりますよね。まだこれからという部分もある遠隔セッションですが、ライブハウスが次々と閉店を余儀なくされるなど猶予のない現状です。早急な展開が熱望されているのではないでしょうか。

 

今回紹介したNETDUETTO、SYNCROOMは今後期待が集まるサービスですが、すぐ「おうちでバンド」を実現するにはハードルがあります。後編記事では、さらに即時性の高い「おうちでバンド」する術を紹介していきたいと思います!