第3回 実際にゲームをプレイしてみよう<1>ゲームの準備と進め方の基本

 

さて、前回は、「ノルマンディーの戦い」がどんな戦いだったのかについて、歴史的事実を説明しました。今回は、そうした背景を知った上で、「歴史群像」8月号付録ボードゲーム「ノルマンディーの戦い」を実際にプレイしてみましょう。

 

【第1回はコチラ】
【第2回はコチラ】

 

マップを広げてコマを並べよう

まずは、ゲームの準備から。テーブルの上に、縦50センチ、横66センチの付録マップを広げて「ノルマンディーの戦い」の面を上にして置きます。この時、折り目が山になっていると、その部分に置いたコマが滑り落ちることがあるので、何度か逆方向に折り返したりして、マップ全体を平らにします。

 

次に、付録のコマシートから「ノルマンディーの戦い」で使用する上半分の60個のコマを切り離します。コマの切り離しは、カッターナイフを使うときれいにカットできます。

 

全部切り離したら、ルールブックの説明に従って、両軍の部隊コマ=「ユニット」をマップ上に配置します。

↑ゲーム開始時のコマの配置。

【マップの配置をもう少し詳しく解説】

ドイツ軍のユニット(部隊コマ)が待ち構えるノルマンディー海岸に、マップ上方から米英連合軍のユニットが押し寄せる。このゲームは2人用で、マップの下側にドイツ軍プレイヤーが、上側に連合軍プレイヤーが、マップを挟んで座ってプレイする。「VP」と記された赤いコマは、ゲーム終了時点で行う勝敗判定の基準となる「勝利得点(VP)」を示す「VPマーカー」で、連合軍ユニットがそのヘクスを奪えば、マーカーは連合軍の手に入る。ただし、裏面には0〜3の数字が印刷されていて、個々のVPマーカーが何点なのかは、ゲームが終わるまで、両プレイヤーともわからない

 

各ユニットの右上には、ゲーム開始時の配置場所を示す数字や記号が印刷されています。一部の例外を除き、両軍の各ユニットは、実際の「師団」に相当します。

 

師団とは、軍隊における部隊の単位の一つで、ひとつあたり約一万数千人からなり、歩兵が中心の歩兵師団、戦車を中核とする機甲(装甲)師団、パラシュート兵が中心の空挺師団など、どういった種類の部隊が中心になっているかによって種類がいくつかあり、これは英米軍でもドイツ軍でも共通しています。

 

↑ユニットにはさまざまな情報が示されている。緑色はこのゲームでは米軍を示し、兵科記号の四角のなかの×印は歩兵を、その上の××は師団を示す。部隊名が1なので、この部隊はアメリカ軍の「第1歩兵師団」だとわかる。右上の「OB2」は、ゲームの準備で「OB2と記された上陸準備ボックスに配置」という意味。それ以外は図の通り

 

マップ上には、番号のついた六角形のマス目(ヘクス)が印刷されており、ユニットの位置確認や移動の単位として使用されます。「ノルマンディーの戦い」では、あるヘクスの中心から隣のヘクスの中心までの距離は、実際の5キロメートルに相当します。

 

ゲーム開始時には、ノルマンディー海岸の陸地に展開するのはドイツ軍ユニットがほとんどですが、例外的にアメリカ軍の2個空挺師団とイギリス軍の1個空挺師団を内陸部のへクスに配置しますが、これは、これらの師団が、先陣としてパラシュートやグライダーで敵陣に乗り込んだ史実を踏まえた配置です。

 

ターンとフェイズって何?

将棋の場合、双方のプレイヤーが駒を1つずつ交互に動かしますが、歴史ボードゲームの場合は、ルールブックで定められた手順に従ってプレイします。具体的には、野球の「回」に当たる「ターン」と、各ターンを構成する「フェイズ」から成ります。今回のゲームでは各ターンは実際の1日に相当し、1944年6月6日(Dデイ)から6月12日までの計7ターンからなります。また各ターンは、このゲームでは、6つのフェイズで構成されています。

 

つまり、第1ターンのフェイズ1(連合軍上陸フェイズ。下の《ターンを構成する手順》参照)からゲームが始まり、フェイズ2、3、4と順に6までやり終え、次に第2ターンのフェイズ1から6までを行います。これを繰り返していって第7ターンをやり終えたところでゲームは終了となります。そして、終わった段階で、ルールブックに決められた条件を踏まえてポイントを計算し、勝敗が決まります(勝敗の判定のしかたについては、最終回の第6回で説明します)。

 

《ターンを構成する手順》

1.連合軍上陸フェイズ

2.連合軍移動フェイズ

3.連合軍戦闘フェイズ

4.ドイツ軍移動フェイズ

5.ドイツ軍戦闘フェイズ

6.両軍補給フェイズ

 

連合軍の上陸とドイツ軍の上陸阻止射撃

各ターンの最初に行われるのが、「連合軍上陸フェイズ」です。ここでは、アメリカ軍やイギリス軍、カナダ軍の連合軍ユニットが、ノルマンディー海岸に上陸します。

 

ただし、すべての連合軍ユニットが一度に上陸するわけではありません。歴史的な事実に基づき、第1ターンには、アメリカ軍3個師団とイギリス軍2個師団、カナダ軍1個師団という決められた計6ユニットが、あらかじめ設定されたノルマンディーの上陸海岸ヘクス(連合軍が上陸できるへクスで、下図では0906などオレンジのへクス)に上陸します。

 

↑第1ターンの連合軍上陸フェイズ、アメリカ軍ユニットが「ユタ・ビーチ」(図の中央)と「オマハ・ビーチ」(同右端)に上陸したところ。これに先だって、第82と第101の2個空挺師団は「ユタ・ビーチ」の内陸部にパラシュートとグライダーで降下していた(図の左下、2つのミドリのユニット)。一方、「オマハ・ビーチ」はドイツ軍の沿岸防御ユニット(オレンジの上陸海岸へクスに配置された「沿岸」と書かれたユニット)が強力(3戦闘力)で、しかも背後には強力な(5戦闘力)第352歩兵師団が控えるので、上陸する第1と第29の2個歩兵師団は甚大な損害を被りやすい

 

↑第1ターンの連合軍上陸フェイズ、英連邦軍ユニットの上陸エリア。左から「ゴールド」「ジュノー」「スウォード」の3つの上陸海岸ヘクスがあるが、ドイツ軍の沿岸防御ユニットは「オマハ」ほど強くはない(戦闘力が1か2)。また、第6空挺師団のグライダー部隊がオルヌ(Orne)河の対岸にあるランヴィルを確保した。戦線の端にあり、ドイツ軍が反撃をかけやすい位置にあるランヴィルは、激しい争奪戦の舞台となる

 

また、第1ターンの「連合軍上陸フェイズ」のみ、海岸のドイツ軍ユニットは「上陸阻止射撃」を実行できます。これは、スピルバーグ監督の映画「プライベート・ライアン」の冒頭シーンでリアルに描かれたような、海岸の砲台や機関銃陣地による、連合軍の上陸用舟艇に対する猛烈な射撃を再現するものです。

 

↑「オマハ・ビーチ」の現在の様子(2014年4月、筆者撮影)。映画「プライベート・ライアン」の冒頭シーンで有名な、ノルマンディー上陸作戦で最大の激戦地となった海岸で、砂浜の長さは8キロにおよぶ。遠浅なので満潮時には奥行きが狭まる

 

↑「オマハ・ビーチ」の西にあるドイツ軍の砲台跡(2014年4月、筆者撮影)。大口径の大砲が据えられていたが、今は撤去され、見晴らしのいい屋根は展望台に改装されている

 

ドイツ軍プレイヤーは、計6つの上陸海岸ヘクスそれぞれに配置された沿岸防御ユニットを用いて、上陸してくる連合軍の師団を射撃します。個々の射撃は、沿岸防御ユニットに記された戦闘力の数値を、マップ上に印刷された「上陸阻止射撃判定表」に当てはめてサイコロを1個振り、戦闘力値とサイの目の交差する場所にある結果を見て解決します。

 

もし、そこに1以上の数字が記されていたなら、数字と同じ数だけ、連合軍の損害が発生したことになります。マップ上には、連合軍とドイツ軍の双方が被った損害を記録する「損害トラック」が印刷されており、それぞれの「損害マーカー」と呼ばれる表示コマをトラック上のマス目で進めることにより、損害の蓄積を記録します。

 

史実で最も連合軍の損害が大きかった「オマハ・ビーチ」では、さらにドイツ軍の第352歩兵師団も、上陸阻止射撃に加わることができます。これらの射撃が終了したら、ドイツ軍の沿岸防御ユニットは除去されて、連合軍ユニットが海岸に上陸します。

 

↑映画「プライベート・ライアン」で主人公のミラー大尉が九死に一生を得たのが、ノルマンディーの「オマハ・ビーチ」。このゲームでも「オマハ」は連合軍の上陸部隊がドイツ軍の「上陸阻止射撃」で損害を被ることが多い。まず、3戦闘力のドイツ軍沿岸防御ユニットが、第1と第29の各歩兵師団にそれぞれ射撃。続いて5戦闘力の第352歩兵師団が第1と第29歩兵師団に各1回の射撃を行う。射撃のたびにマップ上の「上陸阻止射撃判定表」を見てサイコロを1個振り、損害を判定する。例えば、5戦闘力でサイの目が「4」なら、連合軍は「2損害」を被る

 

第2ターン以降は、イギリス本土を船で出発した増援ユニットが、連合軍上陸フェイズに、既に味方によって確保された上陸海岸ヘクスに上陸します。

 

↑第1ターンの連合軍上陸フェイズが終わったところ(一例)。フェイズ終了と共に、ドイツ軍の沿岸防御ユニットは連合軍にすべて撃破されたと見なされ、各上陸海岸ヘクスから、マップ上の「全滅ユニットボックス」に移される。上陸段階での激戦が終わると、次は連合軍のノルマンディー海岸内陸部への侵攻段階に入る

 

以上、ゲームの準備の仕方から、ターンとフェイズに基づいたゲームの進め方の基本について、そして、実際にゲームを始めてみて、第1ターンのフェイズ1「連合軍上陸フェイズ」の進め方について説明しましたが、ご理解いただけましたでしょうか。

 

これらはすべてルールブックに詳しく記載されていますので、わからなくなったらルールブックを確認することを習慣にしていただければ、そのうち少しずつルールを覚えてみなくてもサクサクできるようになるでしょう。

 

明日は第4回「実際にゲームをプレイしてみよう②部隊のコマの「移動」方法と、理解するとプレイの幅が広がる「支配領域(ゾック)」とは?」です。いよいよ部隊コマの「移動」の方法について説明します。お楽しみに!

 

解説:山崎雅弘(やまざき・まさひろ)

1967年大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家。軍事面だけでなく、政治や民族、文化、宗教など、様々な角度から過去の戦争や紛争に光を当て、俯瞰的に分析・概説する本と記事を「歴史群像」などで執筆。同様の手法で現代日本の政治問題を分析する原稿を、新聞、雑誌、ネット媒体に寄稿。著書多数。

また、1989年からオリジナルの歴史ボードゲーム(ウォーゲーム)をデザインし、日本とアメリカ、フランス、中国のメーカーから出版されて高い評価を得ている。1992年には、第二次世界大戦中のスターリングラード攻防戦を再現したゲーム「スターリングラード・ポケット」で、共同制作者のアメリカ人と共に優れたウォーゲームに与えられる賞「チャールズ・S・ロバーツ賞」を受賞。これまでに制作した歴史ボードゲームは、30点以上にのぼる。

 

 

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