缶入りのチューハイやサワーなど、開封してすぐ飲めるお酒やドリンクのことをRTD(Ready To Drinkの略)といい、ここ数年のアルコール市場で特に元気なカテゴリーです。たとえばいまも大人気のレモンサワー。また、数年前には高アルコール度数のストロング系もブームとなりましたが、このRTD界に新風が巻き起こっているのです。本稿はその注目商品を中心に、最新トレンドをレポートしていきます。

↑筆頭は、9月15日発売の「キリン ベジバル」シリーズ(各実勢価格229円)と、10月13日発売の「キリン 麹レモンサワー」(実勢価格174円)

 

野菜と果実の恵みが凝縮したスムージー感覚の新作

RTD界の新風とはズバリ、「やさしさ」です。たとえば、身体に良さそうな素材を使ったり、ナチュラルな製法にこだわったり。これまでも糖質、プリン体、人口甘味料にフォーカスしたオフやゼロ系のカテゴリーはありましたが、さらに素材や製法にもいっそう踏み込んだ新商品が続々登場しています。

↑キリンビールの資料より

 

背景にあるのはやはり、コロナ禍における健康志向の高まり。これはお酒だけでなくフード業界全体のトレンドであり、たとえば昨年大ヒットしたタピオカブームの火付け役「春水堂」(チュンスイタン)は腸活ティーを、「ゴンチャ」はヘルシーなビネガードリンクを新発売するなど、やさしさにフォーカスする流れは勢いを増しているのです。

↑キリンのソフトドリンクでも、おなじみの乳酸菌飲料「iMUSE」が機能性となり、装い新たに11月から発売

 

一連の流れのなかでキリンが今秋新発売したやさしいRTDの第1弾が、冒頭の「キリン ベジバル」シリーズです。こちらはひとことで言うと、スムージーのようなカクテル。野菜と果実をバランスよくミックスし、繊維を含んだ野菜汁と果汁が最大33%使用されています。

↑左から、グリーンmix、レッドmix、オレンジmix。色鮮やかなボトル缶のデザインが印象的です。容量はすべて250mlでアルコール度数は4%

 

グリーンmixはマスカット、キウイ、ケール、小松菜入りで、果汁と野菜が計20%のふくよかなうまみが特徴。レッドmixはりんご、アセロラ、トマトが計31%で、まろやかな酸味がウリ。オレンジmixはオレンジ、マンゴー、ニンジンが計33%で爽やかな甘味を感じられるテイストになっています。開封して飲んでみました。

↑色味が鮮やかで、ルックスはますますカクテル。聞けば、反響次第で中身が見えるボトルを採用するかもしれないとのこと

 

香りにも味にも青っぽい感じはなく、野菜と果汁のうまみや甘みがみずみずしいおいしさです。口当たりもきわめて特徴的で、素材の繊維感を楽しめるジューシーなテクスチャーが絶品。フタの部分が広口になっているのは、この舌触りを最大限楽しむためであり、メーカーの自信を感じます。

↑無炭酸ながら、爽やかな飲み口ですっきり。また、炭酸がないぶんいっそうやさしい味わいに感じます

 

お酒であるため、あえてスムージーという表現をしていないそうですが、飲んだ印象は確かにスムージー。甘めのお酒やカクテル好きな人はもちろん、野菜を摂れるので、罪悪感の低い一本としてもアリだと思いました。

 

麹のうまみでまろやか爽快なレモンサワー

9月に「キリン ベジバル」シリーズが発売し、筆者は「やっぱりコロナでRTDのトレンドも変わってくるのかな〜?」と思っていましたが、10月になって予感は確信となりました。それがこれから紹介する、やさしいRTDの第2弾。「キリン 麹レモンサワー」です。

↑「キリン 麹レモンサワー」はアルコール7%。この350ml缶のほか、500mlも同時発売されました

 

マーケティングリサーチ企業のインテージによると、コロナ禍によって納豆やヨーグルトをはじめとする発酵食品が伸長。また、「日本の伝統的な発酵食品を意識して食べるようになったという人が増えている」というデータも。

↑それぞれ、インテージとキリンの市場調査によるデータ

 

キリンは、もともと約10年前から伝統的な発酵食である麹(こうじ)に着目しており、その可能性を模索していました。また、冒頭で触れたようにRTDのなかで最も活況なフレーバーがレモンですが、消費者の期待のなかに「人工感の低減」「果汁のうまみアップ」「食事との相性の改善」があることをキャッチ。そこで、麹を活用した自然派RTDの開発を急ぎ、約1年半をかけて「キリン 麹レモンサワー」が完成したのです。

↑ルックスは一般的なレモンサワーと同様。果たしてその味は?

 

ちなみに、麹とは蒸したお米などの穀物に麹菌を繁殖させて発酵したもの。麹菌の酵素の働きにより、多様なうまみ成分を含んでいます。2011年ごろに「塩麹」が大ブームになったことを覚えている人も多いでしょう。あのトレンドも健康志向が関係していますが、麹自体のやさしいうまみが一般認知されるきっかけともなりました。

↑香りはレモンサワーのフレッシュ感そのまま。ブライトで心地よいフレーバーです

 

飲んでみると、想像以上にやさしいテイストであることを実感。これが麹のソフトパワーなのでしょう。レモンの酸味が引き立つすっきりした爽快感と、まろやかな飲み口が両立した、ふくよかなボディのレモンサワーです。

 

なお、麹自体が伝統的な日本食とよく合うため、「キリン 麹レモンサワー」は和食と一緒に味わうのがオススメとのこと。そこで、刺身、だし巻き卵、魚介を具にしたおにぎりと合わせてみました。

↑レモンサワーは料理との汎用性の高さも魅力ですが、特に和食と合うというのは興味深いところ

 

なるほど! 確かに、「キリン 麹レモンサワー」のコアな部分にあるやさしいボディが、刺身やだしのうまみ、そしてお米のはんなりとした甘やかさとも調和します。ほかに、おでんや天ぷら、柿の種などにもよく合うと思いました。

↑パッケージも個性的。店頭で見かけたらぜひチェックを

 

今年10月に酒税改定となり、ビールは安く、新ジャンル(第3のビール)は高くなりましたが、RTDは非対象だったので価格は据え置き。このことから、一部の新ジャンルユーザーがRTDに流れるという見立てもあり、RTD市場はより活況になるとも予想されます。そこに登場した、やさしい自然派という新提案。お酒の需要が伸びる年末年始をふまえ、どこまでヒットするか、要注目です。

 

 

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