「スマホで全部済ませたい」「パソコンは難しそうで面倒くさい」ーーいまスマホとともに育ってきた若者は、パソコンに対して苦手意識を持っています。そんな若者達にパソコンの魅力を伝えるために、メーカーはどのようなパソコンを提供すればいいのでしょうか。

 

その答えのひとつとして富士通クライアントコンピューティング(以下、FCCL)が開発し今年10月に発表したのが、「FMV LIFEBOOK CH」シリーズです。

↑13.3型のホームモバイルノートPC「FMV LIFEBOOK CH」。フルスペックのCH90/E3が富士通WEB MART価格で17万円強、より軽量なCH75/E3が15万強となる

 

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CHシリーズは、キャッチコピーを「日常と瞳に彩を」と銘打った、これまでのFCCLのモデルにはない空気を纏ったモデル。パソコン離れをしているという若者…特に新たなビジネスマンや大学生などのZ世代に対して、家の中と外どちらにおいてもなじむツールとしてのコンセプトを持っていると言います。

 

本記事では、「パソコンの魅力を若者に伝えたい」という開発者の声を、若者のデジタル文化を取材している筆者が伺ってきました。

 

好きな人だけが買うカラーを選んだCHシリーズ

LIFEBOOK CHシリーズは、13.3インチのモバイルノートパソコンです。「日常に溶け込む」をコンセプトにデザインされており、本体カラーはカーキ、ダークシルバー、ベージュゴールド、モカブラウンの4色。家電量販店で目立つ色、もしくは一般的な人気色を選択することが多いパソコン市場において、穏やか過ぎるようなカラーバリエーションです。

↑CHシリーズのカラバリは4色。右上から時計回りにダークシルバー、ベージュゴールド、カーキ、モカブラウン

 

「カラーについては社内外の若者に調査を行いました。データで人気色を選ぶと各社同じ色になってしまうので、今回はあえて好きな人と嫌いな人が分かれる色を選んでいます。カーキとブラウンは特に意見が分かれた色です」と話してくれたのは、デザインセンター星 真人マネージャー。緑色はファッションやインテリアの世界ではごく普通に使われる色ですが、デジタル製品となると急に抵抗を感じる人が多いそう。

 

私もCHシリーズを初めて見たとき、もっとも目に留まったのが「カーキ」でした。パソコンではあまり見かけないアースカラーなので、自分らしさを表現したい人や、デジタル機器の冷たさを感じたくない人に良いのではと思いました。そして、こうした淡い色合いはスマホのカラバリでは珍しくありません。CHシリーズのターゲットであるスマホネイティブの若者は違和感もなく、ごく自然に好みの色を選択しそうです。

↑富士通株式会社 デザインセンター 星 真人マネージャー

 

「カラーを決めるときは、カフェや家のテーブルに置いたときにマッチするように、木の板の上に置いてチェックしていました。パソコンは各パーツの材質が違うため、それぞれに適した処理を行うことで発色をチューニングする必要があります。また、青みや黄みを細かく調整することで、男女ともに受け入れられる色を模索しました。カバーを開けても同じ世界観になるように、キーボードの色もすべて本体カラーに合わせています」(星さん)

 

↑パーツごとに木の板の上で色味をチェック。カーキの色合い1つとっても、社内でCHシリーズのターゲット層に近い年代のスタッフ中心に、アンケートをとり精査していったとのこと

 

細かく調整したカラーでも、製品化する際には「量産」というハードルを越えなければなりません。「今回はゴールドの色を思い通りに量産させることが非常に難しかった」とコンシューマ事業本部 コンシューマ事業部 第一技術部の近澤永久さんが話してくれました。ゴールドはネジもゴールドに揃えられています。何度もトライを重ねた結果、思い通りの発色になり、女性を中心に好評を得ているそうです。

↑コンシューマ事業本部 コンシューマ事業部 第一技術部の近澤永久さん

 

こだわりは色だけではなく、細部に渡ります。CH90では液晶ガラスの周囲をなめらかな曲面処理で仕上げています。これはスマホでは一般的に行われている処理であるため、スマホネイティブが自然になじめるデザインを目指すなら必須と考えたとのこと。また、キーボードにかな入力のためのかな表記がありません。 かな入力を使う若者は少ないと考え、少しでも簡単に使えるように見せるために英字表記のみにしたそうです。

↑かな表示のないキーボード

 

ロゴの配置にもこだわっています。天面の中央に配置されることが多い企業のロゴですが、CHシリーズは隅にデザインされています。「富士通ここにあり、と主張するよりも、本シリーズではさりげない配置にしたかった」(星さん)。FCCLはコンシューマ、法人向けとも豊富にモデルを出しています。CHシリーズのコンセプトには、この位置がベストだと判断されたとのことです。

↑ロゴマークは控えめな場所に設置された

 

↑CHシリーズのボディは、四つ角に丸みをもたせスマホライクなデザインとなっている。起動していない時のインテリアとしての存在感としても、あらゆるシーンにスタイリッシュになじむ

 

デザインを尊重しながら軽量化と機能性を洗練

若者に受け入れられるデザインを追求することは大切ですが、同時に考えなければならないことが軽量化です。街で見かける若者は大きなバックバックを背負っていますが、それぐらい荷物が多いのです。1kgを切る重さのパソコンが珍しくない今、若者が重いパソコンを選択することはほとんどないでしょう。ましてや、CHシリーズは「スマホのように気軽に持ち歩ける」ことがコンセプトです。リビングで家族と談笑しながらそれぞれスマホやパソコンを使い、Netflixなどの映画を観るときは自室にパソコンを持って行って楽しむという使い方が想定されています。重いパソコンでは、気分転換にカフェに持ち込むこともおっくうになるのです。

 

CHシリーズは、CH90とCH75の2種類が用意されています。今回はCH90は1.2kg以下、CH75は1kgを切るという目標があったそうです。さらに、厚みも15.8mmと最初から決めていたとか。

 

「CH90は天面カバー、本体カバーともアルミニウム使い、高級感を演出しました。CH75は軽量化を優先して天面カバーをマグネシウム、本体カバーをアルミニウムにしています。薄型化には、キーボードとI/Oコネクタを重ならないようにレイアウトすることで実現しました」(近澤さん)

 

高級感を持たせつつ軽量化と薄型化を実現するには、エンジニアの力が必要です。プレス材には樹脂を貼り付けて堅牢性を確保するなど、あらゆるバランスを保ちながら実現したとのこと。この探究心がFCCLへの信頼を確保してきたのだと感じました。

↑メタリックな高級感があるCH90(手前2台)、CH75(奥2台)

 

また、使いやすさへの配慮として、排気を後方にし、左右に置いた手やカップなどに排気が当たらない工夫もされています。後方の排気はゴム足によりストップされ、再びパソコン内部に戻ることがないような細かな設計が施されているのもポイント。ちなみに、そのゴム足や、裏面のビスも本体カラーに揃えられているので、持ち運ぶときに背面を見られても美しいという点に感心させられました。

 

外出時に重要なバッテリーに関しても、イマドキの利用シーンに合わせられています。Type-C端子でスマホでも利用するモバイルバッテリーから充電できるのです。今やモバイルバッテリーを持たない若者はほぼいないので、CHシリーズにとってこれは重要なポイント。若者は家の中でもスマホをモバイルバッテリーで充電しながら持ち歩きます。電源ケーブルに縛られるだけでパソコンを使わなくなってしまうことも考えられるほどですが、そういったニーズに対してもCHシリーズは細かに向き合っていると感じました。また、スマホのバッテリーが減ったときは、パソコンから給電することもできて便利です。

 

スマホ連携、エンタメ機能ともに目線は真っすぐ若者に

「パソコンは、スマホや周辺機器と連携して使うとさらに活用できることを知ってほしい」とマーケティング本部 商品企画統括部 林部圭司マネージャーは語ります。CHシリーズをはじめとした10月発表の新モデルには、スマホで撮影した写真などのデータをパソコンに転送するアプリが搭載されています。

↑マーケティング本部 商品企画統括部 林部圭司マネージャー

 

「若い世代はスマホで撮った写真をパソコンに転送する方法がわからない方も多くいました。クラウドサービスはお金が掛かるので、メールで転送しているとも。そこでとにかく簡単に転送が出来る専用アプリを用意したのです」(林部さん)

 

確かに、スマホネイティブ世代に話を聞くと、写真のバックアップにはかなり苦労しています。パソコンを使うぐらいなら過去のスマホをストレージ代わりにして置いておく、という人もいました。クラウドサービスも浸透してきたとはいえ、写真の枚数が増えると料金も上がるため、契約までのハードルは高い模様。専用アプリで転送できるならチャレンジする若者も多そうです。

 

データ転送にくわえて、スマホで聴いていた音楽をパソコンで再生できる専用アプリも用意しています。

 

「CHシリーズには、2W+2Wのスピーカーを使っていますが、音を響かせるために通常よりも空間を大きく取っています。そのため、かなり大きい音を出すことができます」とコンシューマ事業本部 コンシューマ事業部 第一技術部 八木澤 麗マネージャー。さらに音響補正技術Diracにより、映画などの「エンタメ」、オンライン会議などで声をクリアにする「ボイス」で音質を調整できるとのこと。

↑コンシューマ事業本部 コンシューマ事業部 第一技術部 八木澤 麗マネージャー

 

CHシリーズには3.5mmステレオミニジャック端子も搭載されていますが、この点は社内でも「ワイヤレスイヤホンがあるので不要では?」と議論があったそう。しかし現在でも、有線のイヤホンやヘッドフォンのニーズはあるだろうとの判断です。大学生は別ですが、ビジネスシーンでは打ち合わせ・会議の連続もままあることです。そうした時に、イヤホン側のバッテリーが切れてしまって使えないのでは確かに意味がないでしょう。

 

有機ELディスプレイも、パソコンで映像を楽しんでほしいという思いで搭載したとのこと。「スマホでは有機ELディスプレイを使われている機種も増えています。でも大画面で迫力を楽しんでほしい。事務用パソコンのようなアンチグレア液晶ではないので、美しい映像を楽しめます」(林部さん)

↑ハイコントラストな映像が楽しめる有機ELディスプレイ。↑CH75はスーパーファイン液晶IGZOが搭載されていますが、同じくスマホとは違う体験が得られる

 

そしてHDMI入力/出力端子の搭載も、エンターテインメントをもっと楽しんでほしいとの意図があるそう。

 

「NHシリーズでHDMI入力端子を搭載したところ、非常に好評でした。NHシリーズは17.3型ノートなのですが、モバイルノートにも欲しいという声が多数あり、そこでCHシリーズへの搭載を決めました」(林部さん)

 

ノートPCではHDMI入力を備えているモデルはまだ少ないが、別機器のサブモニターとしての使い道は特にスマホでコンテンツ消費することに慣れている若者には、とても大きなメリットがあると思います。

↑3.5mmステレオミニジャック端子とHDMI端子、USB Type-C端子を搭載

 

CHシリーズは日常遣いがコンセプトとはいえ、コロナ禍ではオンライン会議やオンライン授業へのニーズもあります。社会情勢の変化に合わせて、CHシリーズの設計思想もスピーディーに変更したとのこと。そこで、マイクの性能にもこだわり、雑音などが入らずクリアに声を拾えるように設計されています。Webカメラももちろん装備。

 

また、ホームオフィスのように環境を整えている人もいるでしょう。CHシリーズにはHDMI端子に加えてThunderbolt端子が両脇にあるので、他のディスプレイを繋いで活用できる上、メインディスプレイ、サブディスプレイのどちらにも対応できます。

 

若者をターゲットにすることで新たな一面を見せたFCCL

FCCLといえば堅実で信頼できるパソコンメーカーというイメージですが、CHシリーズは「良い振り切り」が各所に見られるパソコンでした。本体カラーの選定基準、キーボードのかな表示の廃止、LAN端子を廃止してミニジャック端子とHDMI端子を搭載するなど、スマホネイティブの若者に何が必要で、何が不要なのかを見極めた設計になっています。もっとスマホに近づけるのであれば、タッチパネルやSIMスロットも搭載してほしいところですが、まずパソコンへのアレルギーをなくすという面ではベストな選択肢のひとつだと思います。

 

お話を聞くまで、コロナ禍でパソコンを持ち歩くというコンセプトを不思議に感じていたのですが、振り返ってみれば私たちは家の中でもスマホを持ち歩いています。それぐらい気軽にパソコンを使ってみてほしい、という提案がCHシリーズには込められていました。若い世代が自然にパソコンになじみ、スマホとパソコンをうまく使い分ける未来が見えたパソコンでした。

 

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撮影/中田 悟