100円ショップと聞いて、どの店を思い浮かべるだろうか。ほとんどの人が「ダイソー」と答えるだろう。筆者は100円ショップが大好きなのだが、やはりなんだかんだとダイソーが一番だなと思っている。とにかく「こういうものが欲しいな」という商品があることが多い。

 

ダイソーの商品が100円とは思えないクオリティのワケ

そのダイソーの創業者であり社長が矢野博丈氏だ。氏は非常にネガティブな社長として有名。「いつか潰れる」「ずっとうまくいくことはありえない」「店舗が増えるのが怖い」など、およそ経営者とは思えない発言が多い。

 

その矢野博丈を追った書が『百円の男 ダイソー矢野博丈』(大下英治・著/さくら舎・刊)だ。本書は、ジャーナリストの著者が10年以上にわたり、矢野および矢野をよく知る社員などに取材して書かれている。

 

100円ショップ好きの筆者から見て、ダイソーの商品は100円の割にはクオリティが高いと思っている。それもそのはず、ほかの100円ショップに比べて原価が高いらしい。商売の基本は「お客様に喜んでもらうこと」と語る矢野は、1977年の創業当時、ほかにあった100円ショップよりも高品質なものを取り扱うことで、「100円でこのクオリティ?」とお客さんが喜ぶやらビックリするやらする顔が見たかったようだ。

 

もちろん、その分儲けは少なくなる。オイルショックで商品の原価が上がったときには、98円で仕入れたものを100円で売っていたこともある。

 

<自分の儲けを考えていたら、商売なんてできん。ワシは、客が驚く姿が見たかったんじャ。客が喜んでくれればそれでええ。その分、ワシは売って売って儲けを出すんじャ>

(『百円の男 ダイソー矢野博丈』より引用)

 

究極の薄利多売。しかしそれが功を奏し、2021年2月末現在の売上高は5262億円。世界に5800店舗以上出店するまでになっている。効率化や利益率を追求するビジネスとは真逆の、いかにも「商売」といった感じでここまで大きくなったのだから、社長をはじめ従業員がどれだけ働き者なのかがわかるのではないだろうか。

 

小さなことをコツコツと

矢野はとても謙虚かつネガティブだが、それが経営哲学にも大きく反映されている。創業時から現在までダイソーは、長期計画を立てていない。予算も作らない。社是や社訓もない。会社の規模を大きくすることにもそれほど興味がない。創業当時はトラックでスーパーなどの店頭または催事場での販売をメインにしていたが、そのときの夢が「年商1億」。そのための具体的な目標として「夫婦ふたりで一番売るトラック」を目標に掲げた。

 

仮に、年商一〇〇億円、三〇〇億円という大規模の目標を掲げたなら、トラックの台数を増やし、安いものを大量に仕入れ、粗利を追求していく道を選ばざるを得ない。

(『百円の男 ダイソー矢野博丈』より引用)

 

野心は大きいほうがいいが、それに囚われてしまうと道を誤ってしまうこともある。矢野は「夫婦ふたりで一番売るトラック」という小さな目標を掲げ、そのために地道なチラシ配りを行ったり、それこそ寝る間も惜しんで働くことを積み重ねてきた。その結果が今のダイソーなのだ。目の前の小さな目標をコツコツクリアしていく。一見簡単そうだが、それを何十年も続けるのは、なかなかできることではないだろう。

 

1か月に500〜700もの新アイテムを開発

矢野の100円均一へのプライドはとても高い。昔は、名刺交換をしたときに「100均かぁ」「安売りかぁ」とバカにされると、矢野は反論していたようだ。

 

「ちがいます。一〇〇万円の車は安物ですが、一〇〇万円の家具は高級品ですよね。一〇〇円でも高級品を売っているんです」

(『百円の男 ダイソー矢野博丈』より引用)

 

100円で100円の価値があるものを売っているのでは、当たり前。100円で100円以上の価値があるものを提供することで、ダイソーはお客さんの心をつかんできた。

 

このマインドは現在まで変わることはない。何せ、1か月で約500〜700もの新アイテムを投入。それだけ新製品開発の余念がないのは、常に100円以上の価値のあるもの、そして常に目新しいものを店頭に並べておきたいからだ。

 

現在、大手100円ショップといえば、ダイソー、セリア、キャンドゥになると思うが、やはりダイソーは品揃え、クオリティ、店舗数、どれを取ってもナンバーワンではないかと感じる。

 

本書を読むと、なぜダイソーは人気があるのか、他社とは何が違うのかがわかることだろう。そして無性にダイソーでいろいろ買い物をしたくなってしまう。まあ、ダイソーなら散財しても1000円2000円。それでストレス発散ができると思えば、安いものだ。

 

【書籍紹介】

百円の男 ダイソー矢野博丈

著者:大下英治
発行:さくら舎

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