Vol.106-1

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはGoogleが日本で発売するセキュリティカメラ。その特徴である「オンデバイスAI」について解説する。

 

端末内で処理することでプライバシーも守られる

グーグルは8月末より、家庭向けの見守り・セキュリティ機器である「Google Nest Cam」シリーズを日本でも発売する。バッテリー式で屋内外で使用できるネットワークカメラと、カメラ付きのドアホンの2モデルである。

 

同シリーズは、AIによる画像認識技術を用い、セキュリティ対策を行うための機器である。例えば、ドアの前に人が来たことや荷物が置かれたこと、家の中で猫が動いたことなどを自動的に認識して動画として撮影し、スマートフォンにも転送してくれるモノだ。

 

この種の製品で重要になっているのが「オンデバイスAI」技術である。

 

画像認識はもう珍しい技術ではなく、スマホやPCのカメラにも使用されている。スマホでは笑顔などを認識して自動で撮影してくれるモデルもある。これもオンデバイスAI技術によるものだ。業務用セキュリティカメラはもっと高度に進化している。だが、セキュリティカメラを「自宅内で使う」となると、プライバシーの問題も大きくなる。常に映像がクラウドに送られ続けているのでは、誰かに覗かれているようで落ち着かないという人も多いだろう。

 

そこで、クラウドへデータをアップロードすることなく認識をする「オンデバイスAI」を使う。これは読んで字のごとく、AIの処理をすべてデバイスのなかだけで完結するものだ。プライバシー面で安心できるだけでなく、クラウドへデータをアップロードせず、リアルタイムで処理するため反応も早くなる。使い勝手の面ではプラスに働くと言えるだろう。

 

市場競争の加速が米国での普及を後押し

ただ、この種のセキュリティカメラは、日本ではまだあまり普及していない。一方で、アメリカでは数年前から大きな市場となっている。「スマートホーム」というと、日本では家電連携やエアコンの操作などを思い浮かべる人が多いのだが、アメリカでの主軸は間違いなくセキュリティの向上だ。

 

アメリカでは早期に市場競争が起きたことが、AIを使ったセキュリティカメラの普及を後押しした。グーグルが2015年よりアメリカでNest Cam事業を開始したのに続き、アマゾンも2017年にセキュリティカメラ関連企業「Blink」を買収しラインナップに加えたことで、競争が加速したのだ。いまはほかにも多数の企業が参入している。アップルも自社でセキュリティカメラこそ作っていないが、Apple TVなどを利用して他社製カメラをコントロールすることで、グーグルやアマゾンが実現した機能と同様のことができるようになっている。また、アップルはオンデバイスAIへの対応を強化することを発表している。今秋公開のiOS15で実装予定だ。

 

とはいえ前述の通り、日本ではまだ普及前。治安と自衛に関する意識の差、DIY的にカメラを自宅に取り付けることへの積極性など、文化的な違いが影響している。だが今回、グーグルはそれを理解したうえで、日本に本格参入してくる。どんな戦略を持っているのか? そして、技術的にどのような特徴があるのか? そのあたりは次回で解説していく。

 

週刊GetNavi、バックナンバーはこちら