〜〜乗りたい&行きたいローカル線車両事典No.3〜〜

 

これまで、鉄道の旅に行きたくとも我慢していたという方が多いのではないだろうか。緊急事態宣言がようやく解除され、気軽に旅することができそうだ。

 

この1年半にわたるコロナ禍で、ローカル線は疲弊の度合いが増しているように思う。そこで、乗って少しでも営業に貢献したいと考え、今回は房総半島を走る2路線を乗り継ぎ、気になる車両観察の旅に出た。

 

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【はじめに】小湊鐵道の路線も10月中旬には全線復旧の予定

JR内房線の五井駅と上総中野駅を結ぶ「小湊鐵道」。一方、「いすみ鉄道」はJR外房線の大原駅と上総中野駅を結ぶ。上総中野駅で接続しており、乗り継げば房総半島を横断することができる。ちょうど日帰り鉄道の旅にうってつけな距離の路線である。ちなみに両社共通の「房総横断記念乗車券」は1730円とお得になっている。

 

そんな2つの路線だが、今年の7月3日の集中豪雨の影響で、小湊鐵道の路線が不通となってしまった。10月初旬現在も光風台駅〜上総牛久駅間が不通のままとなっている。この区間の代行バスの運行が行われているものの、時間が余分にかかり、半島横断もスムーズにできない。

 

そんな不通区間も、小湊鐵道の発表によると、10月中旬には復旧の見込みとされている。新しい車両の運行も始まり注目度が高まっているだけに、路線が復旧されるのに合わせて、秋の旅を楽しんでみてはいかがだろう。

 

房総半島の鉄道旅。まずは2社の列車に乗る前に内房線、外房線を走るJRの車両から見ておきたい。普通列車には、長らく209系が使われてきた内房線、外房線だが、新しい車両の導入が行われた。

 

○JR東日本E131系

新しい電車はE131系で、2021(令和3)年3月13日から内房線、外房線、鹿島線に2両編成の車両が導入されている。今後、このE131系は、相模線、宇都宮線、日光線などに導入の予定だ。

 

房総半島に導入されて半年あまりの新しい車両に乗車して、外房線の大原駅を目指し、いすみ鉄道に乗り換えて房総半島を横断した旅の最新レポートをお届けしよう(取材・撮影日は10月3日)。

↑外房線を走るE131系。ワンマン運転により運行の効率化を図ろうとJR東日本が導入を進める。この11月からは相模線などに導入予定

 

【乗ろう!いすみ鉄道①】普通車両の中で気になるのがキハ20

いすみ鉄道の大原駅はJRの駅に隣接して駅舎とホームが設けられている。さて、この日にホームに入線していたのは、肌色と朱色の〝国鉄一般色〟に塗られたキハ20。正式にはキハ20-1303とされている。

 

いすみ鉄道では普通列車用の車両が5両導入されているが、キハ20は1両のみ。〝写真映え〟するこの車両が大原駅のホームに停車していると、ついカメラを向けたくなる。キハ20に巡りあうと今日は幸先がいいな、とつい思ってしまうのである。

 

そんないすみ鉄道の車両を紹介しよう。まずは在籍する普通列車用から見ていこう。

 

○いすみ300形(301号車・302号車が在籍)

↑国吉駅を発車するいすみ300形。右の2両は同駅で保存されるキハ30と、いすみ200形。キハ30は運転体験のイベントにも利用される

 

いすみ鉄道開業以来24年ぶりの新車として2012(平成24)年に導入された。ローカル線向け軽快気動車で新潟トランシス製、中央に貫通扉がある最新気動車のごく標準的な顔立ちをしている。座席はセミクロスシートでトイレ付きだ。

 

○いすみ350形(351号車・352号車が在籍)

↑単行で走るいすみ350形。国鉄キハ20形のような顔立ちで、その後のいすみ鉄道キハ20製作のベースとなった車両でもある

 

2013(平成25)年に導入された。基本設計はいすみ300形と同じだが、正面の形は国鉄の気動車キハ20形にそっくりな姿形をしている。塗装は黄色ベースのいすみ鉄道色ながら、レトロな趣だ。座席はロングシート、トイレはない。

 

運用の傾向を見ると朝夕の混雑する時間帯や、観光シーズンなどの増結用に使われることが多いようだ。

 

○キハ20-1303

↑青空をバックに走るキハ20-1303。肌色と朱色という国鉄一般色が何ともレトロな雰囲気で絵になる

 

2015(平成27)年に導入された車両。キハ20形といえば、国鉄を代表する気動車で、全国の非電化路線の無煙化に役立った車両だ。そんな旧国鉄のキハ20形を彷彿させる姿と、そのものずばりの「国鉄一般色」と呼ばれる塗装で、〝新しいけれど懐かしい〟車両として登場した。導入時はキハ303、キハ20-303といった形式名が考えられたが、他社の既存車両の数字と重なるなどの理由から、キハ20-1303となった経緯がある。

 

座席はセミクロスシートで、トイレ付き。キハ20-1303の導入により、古いいすみ200形が全車両引退となり、新車両への切り替えが完了した。

 

現在、普通列車用の車両は計5両だが、やはり鉄道ファンから注目を浴びる車両はキハ20-1303であろう。訪ねた時にこの車両が走っている・走っていないでは、乗る・撮る気合いの入り方が不思議と違ってくるのである。

 

【乗ろう!いすみ鉄道②】もちろん看板列車はキハ28&キハ52

キハ20よりも増していすみ鉄道の名物車両といえば、キハ28とキハ52であろう。両車両は常に2両で組み、週末に運行される「急行列車」や、「レストラン列車」として生かされている。両車両とも国鉄時代に造られ、その後にJR西日本で活躍した後に、いすみ鉄道へやってきた。

 

大原駅側が「キハ28-2346」で上総中野駅側が「キハ52-125」の並びとなる。それぞれ車両は次のような経歴を持つ。

↑大多喜駅を出発したキハ20(左)とキハ52が並ぶ。大多喜駅で販売の「鉄印」(右)や、鉄印帳用のポーチもキハ52とまさに〝52づくし〟

 

○キハ52-125

キハ52形は、1957(昭和32)年に開発されたキハ20形の勾配区間用としてエンジンを2基搭載した出力増強タイプ。本州、四国、九州の多くの路線で活躍した。

 

いすみ鉄道へ譲渡された車両は1965(昭和40)年生まれで、福井県の越美北線、後に大糸線を走り続けた。2010(平成22)年に譲渡され、翌年からクリーム+朱色の国鉄一般色で走り始めた。その後に朱色一色の首都圏色に変更されたが、2019(令和元)年6月に再び国鉄一般色に戻されている。

 

○キハ28-2346

キハ28形は急行型気動車キハ58系に含まれる一形式だ。キハ28形とキハ58形の違いは、キハ28形が冷房用発電機を搭載するために、動力用のエンジンを1基しか積んでいないのに対して、キハ58形は動力用エンジンを2基積む。2基積んだものの、スペースの都合から冷房用発電機が非搭載の車両が多かったため、キハ28形とキハ58形と組んで走ることが多くなった。現在、いすみ鉄道ではキハ52形と組んで走っている。

 

いすみ鉄道へやってきたキハ28-2346は、さまざまな場所で走った経歴を持つ。生まれは1964(昭和39)年のこと。その後に米子機関区→新潟機関区→千葉気動車区→米子機関区→七尾機関区と移る。北陸での運用中にJR西日本に継承され、その後に富山運転所→高岡鉄道部→越前大野鉄道部と移り、最後は富山へ戻って最後は高山本線を走っていた。いすみ鉄道へは2012(平成24)年に譲渡されている。ちなみにキハ28形で動いているのはいすみ鉄道の車両のみとなっている。

↑国吉駅を発車した大原駅行きの急行列車。キハ28が先頭に、後ろがキハ52という編成だが、天気の良い日は正面が陰りがちに

 

筆者は10月3日の日曜日に訪れた際に、急行列車として出庫準備中のキハ52と、大多喜駅を出発したキハ20がちょうど並んだところを撮影する機会を得た。最近に製造された車両のキハ20だが、並んでみると色や形がキハ52にそっくり。房総半島で国鉄一般色2車両が並ぶ光景に出会えて嬉しく感じた。

 

【乗ろう!いすみ鉄道③】現在1往復の列車撮影の難点とは

キハ28とキハ52の組み合わせは、常に鉄道ファンに人気となっているが、実はちょっと残念なこともある。10月現在、土・日曜祝日に一往復。大多喜11時37分発→大原12時16分着。大原12時46分発→大多喜13時23分着が有料の急行列車として運行される。以降、大多喜13時26分発→上総中野駅13時50分着、上総中野駅14時→14時23分大多喜駅着は普通列車として運行されている。

 

残念なのは、現在の運行時刻だと、天気の良い日には、大原駅行きの列車の正面、つまりキハ28側に光が当たらず、陰りがちに写ってしまうのである。

↑大原駅行き急行列車は好天の日よりも、薄日ぐらいの日の方が場所選びに困ることがなさそうだ(大多喜駅〜城見ヶ丘駅間)

 

以前には8時台に走る列車があり、正面が陰ることが少なく順光でとれる場所が多かったが、現在は遅い時間帯に走るダイヤが定着してしまっている。今後、観光シーズンに増便があるのか気になるところだ。ちなみに新田野駅(にったのえき)〜上総東駅(かずさあずまえき)間など一部では、順光での撮影が可能なのでトライしてみてはいかがだろう。

↑大原発の急行列車、キハ52側の先頭車は沿線の各所で順光での撮影が可能となる(新田野駅〜国吉駅間)

 

【乗ろう!いすみ鉄道④】房総両路線横断の〝難点〟と言えば

筆者は何度目になるのか分からないほど、いすみ鉄道、小湊鐵道にたびたび乗って、撮って楽しんでいる。首都圏に近く貴重な非電化区間であり、懐かしの車両が走るとあって、つい時間があれば訪れてしまうのだ。

 

さらに房総半島を横断する列車旅を楽しむことにしている。ところが最近、やや不便に感じることが出てきた。

 

まずは昼食をどうするかで悩む。10年ほど前までは途中駅でも、駅前に飲食店や、パンやおにぎりなどを販売する店があって、昼食に困ることがなかった。ところが近年は規模の大きな大多喜駅あたりでも、駅前食堂がなくなり、飲食店へは少し歩くことが必要となってきた。コンビニなども駅前にないところが多い。いすみ鉄道と小湊鐵道が接続する上総中野駅でも、駅前付近に店がない。それだけ列車を利用する地元の人たちが減って、商売にならないということなのだろう。

 

そこで、房総半島を横断する時には事前に昼食を購入しておくことをお勧めしたい。

↑国吉駅で販売されている「たこめし」(900円)。外房沖で獲れるマダコを使用、いすみの地野菜とともに楽しめる

 

いすみ鉄道の大原駅側から入る場合には、大原駅そして国吉駅の売店でお弁当を販売している。さらに、週末には国吉駅での停車時間に、いすみ鉄道応援団の人たちが車内まで弁当の販売に訪れるので、そうした時に購入することをお勧めしたい。

 

小湊鐵道から乗る場合には、五井駅周辺で購入、また上総牛久駅など一部の駅前に飲食店がある。

↑上総中野駅にいすみ鉄道のキハ20が到着して賑わう。同写真を撮影した2020(令和2)年10月25日は小湊鐵道の一部路線が不通だった

 

さらに問題なのが、自然災害の影響を受けやすいことだ。房総半島の地図を見ると、川が右左に激しく蛇行していることが分かる。地形も複雑で、強固な地盤と言いがたい。小湊鐵道の線路端に連なる斜面などを見ると、水分を多量に含み、脆そうな印象が感じられる。

 

このところ台風が千葉県沖を通過することも多く、ここ10年の被害だけをあげてみると、いすみ鉄道での不通期間はないが、小湊鐵道では2013(平成25)年秋〜2014(平成26)年春、2015(平成27)年秋、2019(令和元)年に至っては9月9日〜21日、同年10月25日〜2020(令和2)年1月27日にかけて。さらにこの年は10月11日〜12月16日に不通となった。そして今年の7月4日以降(10月中旬に復旧予定)、というように路線のどこかの区間が不通になる状態が続いている。

 

そのたびに復旧作業が行われるのだが、こうした災害の影響が一般観光客の足を遠のかせる一つの要因になっているようにも思え、とても残念である。

 

さらに億劫なのが上総中野駅の乗り継ぎである。10月3日現在、途中区間が不通のままのため、列車本数が限定的になっていた。影響はいすみ鉄道にも波及しているように感じた。

 

筆者が乗車した上総中野駅着12時27分着のいすみ鉄道の列車は、乗っていたのが筆者1人のみだった。バスでは人が少ない例はあるものの、ローカル線の列車で、乗客が筆者のみというのは初めての経験だった。もちろん乗客1人のみでは、営業は成り立たないように思う。

 

【乗ろう!小湊鐵道①】接続する上総中野駅で列車を待つことに

いすみ鉄道の上総中野駅へ到着したのが12時27分。ここで小湊鐵道の接続列車が13時41分までない。1時間ちょっとの待ち合わせである。ちなみに、同列車の後はキハ28・キハ52利用の列車が13時50分に到着する。あと数分で、小湊鐵道の列車と接続できるのだが、なぜ接続させていないか、不思議に感じた。13時41分の後の列車は16時39分発で、3時間近く待つことになるわけで、これでは房総半島の鉄道での横断はとてもしにくい。

 

さらに上総中野駅〜上総牛久駅間を往復する列車は1日に3本のみ。いすみ鉄道の列車は上総中野駅まで走る列車は1日に11本あり、その差が大きい。

 

災害前の時刻表によると、五井駅〜上総中野駅間往復の列車は6便あった。不通になる前の時刻に戻るとしたら、いすみ鉄道との接続がかなり改善される。小湊鐵道の日常が早く戻ることを期待したい。

 

上総中野駅に到着して30分ほど。ホームへ入ってきたのは小湊鐵道のキハ208だった。キハ200形の208というわけだ。キハ200形とはどのような車両なのだろう。

 

○小湊鐵道キハ200形

↑上総中野駅に停車する小湊鐵道キハ208。後ろの木造駅舎と良く似あう。竹筒のような建物は公共トイレだがその巨大さに違和感を感じた

 

小湊鐵道のキハ200形は1961(昭和36)年から1977(昭和52)年にかけて導入された気動車で、国鉄のキハ20系をベースにしている。総計14両が造られ、長年にわたり活躍してきた。

 

キハ200形は小湊鐵道の顔と言うべき古参車両である。そんなキハ200形にも転機が訪れている。今後導入される後継車両に関しては後述するとして、上総中野駅に到着したキハ208をカメラに納めようというファンや、ローカル線の鉄道旅を楽しむ家族連れの姿が見受けられた。

 

【乗ろう!小湊鐵道②】バスに乗り継ぐ上総牛久駅で出会ったのは

上総中野駅13時41分発の列車に乗車したのは鉄道ファンや家族連れが10人あまり、この列車は上総牛久駅止まりとなる。上総牛久駅から先は不通のため代行バスの利用となる。

 

キハ208の座席はロングシートで、前後にドアは2つということもあり、ひたすら横一列の長いシートが連なる。上総中野駅〜養老渓谷駅間は、房総丘陵の横断路線の中でも、難路で途中、板谷トンネル、朝生原トンネルで房総半島のピークを越える。

 

菜の花の季節には賑わいを見せる月崎駅や飯給駅(いたぶえき)、また珍しいタブレット交換が行われる里見駅、テレビドラマのロケ地としてたびたび登場する上総鶴舞駅など名物駅を停車しつつ走る。途中駅では、駅の見物に訪れた観光客をよく見かけた。いすみ鉄道、小湊鐵道の沿線は、高速道路・国道などの道路網が発達していて、撮り鉄を含めて、首都圏からクルマでやってくる人が非常に多い。この人たちの一部でもよいので、列車で訪れて欲しいと感じた。

↑上総牛久駅に停車していたキハ207。路線不通後は、上総牛久駅〜上総中野駅間は同車両とキハ208のみで運行がやりくりされていた

 

上総中野駅から乗車して約45分。この日の〝終着駅〟である上総牛久駅の1番線ホームに到着した。3番線にはキハ207が停車していた。10月上旬現在、上総牛久駅〜上総中野駅間のみの運行となり、五井駅側はまだ路線が不通のままとなっている。

 

同社の車両基地は五井駅にある。7月初旬の水害によりキハ207とキハ208の2両が上総牛久駅〜上総中野駅間にとり残されたこともあり、かろうじて同区間の運行が続けられていたわけである。2両が残されていなかったとしたら、どうなったのであろうか。2車両による〝孤軍奮闘〟により、路線の営業が細々と維持されていたわけである。

↑上総牛久駅前にはすでに光風台駅行き代行バスが待っていた。列車が14時28分到着した後、バスは14時47分発と20分待つことに

 

上総牛久駅の代行バス発車までは約20分待ち。筆者にとって、その待ち時間の間に駅の周りなど撮影時間がとれるからラッキーだったものの、一般の利用者にとって、この待ち時間は何とも〝じれったい〟思いではないだろうか。

 

上総牛久駅で新しい施設を発見した。上総牛久駅が観光列車の「里山トロッコ」の出発駅であることから整備された施設で「里山トイレ」と名付けられる。要は公共トイレなのだが、トイレが公園風に清潔に、おしゃれに整備されていた。階段でのぼる「階段のトイレ」は列車が見える、いわば〝お立ち台〟なのだそうだ。子どもたちの遊び場にもなりそうな公共トイレだった。

↑上総牛久駅の駅前にできた「里山トイレ」。緑に包まれるようにできた公共トイレで、清潔感が感じられる。階段の上は〝お立ち台〟に

 

光風台駅行きのバスがそろそろ発車しそうだったので、断念したが、次回は階段の上の〝お立ち台〟から列車を撮ってみたい誘惑にかられた。

 

【乗ろう!小湊鐵道③】東北のような風景に見えるキハ40の走り

上総牛久駅から先は不通となっていたこともあり、2駅先の光風台駅まで代行バスでの移動となる。所要時間は12分ほどで、乗車してまもなく光風台駅に到着する。ここから先、五井駅までは30分〜1時間おきに列車が出ていて便利となる。

 

この区間では7月からすでに〝新車両〟が走り始めている。その新車両とはキハ40形だ。

 

○キハ40

↑JR只見線を走ったキハ40形。キハ40形は両端に運転席があり便利な車両だった。同塗装は東北地域本社色と呼ばれた

 

キハ40系(2代目)は国鉄が1977(昭和52)年〜1982(昭和57)年に新造した気動車で、キハ20形の後継車両として開発された。キハ40系の基本番台は車両の前後に運転台があるキハ40形、ドア位置を中央よりにした都市近郊タイプのキハ47形、片運転台のキハ48形が基本形として造られ、その派生系などを含めると大量の計888両が造られた。

 

全国津々浦々で活躍をし続け、その後にJR各社に引き継がれたものの、徐々に引退する車両が増え、JR東日本ではジョイフルトレイン用に改造された車両以外のキハ40系すべてが今年の3月で引退となっている。

 

そうしたキハ40形を今後に生かそうと引き取ったのが小湊鐵道だった。これまでのキハ200形の置き換え用に最適と考えたわけである。そして7月から五井駅〜光風台駅の運行に利用を始めている。

 

走り始めた車両はキハ40-2。JR只見線を2020(令和2)年3月まで走った塗装と同色で走り始めた。白地に濃淡2色のグリーンという塗装は、〝東北地域本社色〟と呼ばれていた。

↑稲刈りが終わったばかりの房総の田園地帯を走るキハ40-2。JR当時と同じ東北地域本社色のキハ40形が走る光景を見ることができる

 

JR只見線を走ったままの姿が房総半島で再現されたのである。それこそ行先案内の表示がなければ、これは東北の光景なのではと見間違えてしまう

 

キハ40形自体、国鉄カラーの強い車両であるし、さらにJR当時の塗装の車両が房総半島を走ることになるのは、予想できないことだった。この夏、緊急事態宣言下ということもあり、沿線では鉄道ファンの姿は限られていたものの、早くも同車両を撮影しようというファンの姿がちらほら見受けられた。

 

多くのキハ40形が小湊鐵道の五井駅にすでに運び込まれているが、今後、出場する車両がどのような塗装で出てくるのか、楽しみでならない。

 

【乗ろう!小湊鐵道④】光風台の駅へ入ってきた注目の異種編成

さて、レポートは10月3日に訪れた光風台駅の様子に戻る。代行バスが駅に着いて、まもなく駅に入ってきたのが、なんとキハ210と、キハ40-2の〝異種編成〟。気動車の場合には、電車とは異なり、このように違う形式であっても編成を組むことができるわけだ。

 

光風台駅で待つ乗客も興味津々で見ている人たちが多かった。光風台駅では、入ってきたホームからは、分岐ポイントの造りによってそのまま折り返すことができず、いったん先に進んで折り返す方式がとられていた。

↑この日、光風台駅に入線してきたのはキハ210とキハ40-2の組み合わせ。こうした車両編成での運行も今後、行われていくのだろうか

 

入線したホームから折り返し運転ができないということで、ダイヤよりもやや遅れ気味で発車した五井駅の列車。キハ210とキハ40-2という組みあせでの運行はどのようなものだろうと走りに注目した。五井駅までは5駅だが、停車は良いのだが、出発時にはあまりスムーズとは言えない様子だった。こうした異種での組み合わせに、まだ慣れていないということもあるのかも知れない。単行での運行の方がもちろん、スムーズだ。このあたり、全線が復旧した時にどうなるのか気になるところだ。

 

光風台駅からは20分ほどで五井駅に到着した。途中に寄り道はしたものの、半日がかりの房総半島横断となった。災害による路線の不通がなければ、大原駅から五井駅まで、最短2時間ちょっとで横断が可能になる。

↑上総山田駅〜光風台駅間にある第一柴の下(だいいちしばのした)橋梁を渡るキハ40-2。こちらの橋も国の登録有形文化財に指定される

 

余談になるが、小湊鐵道の路線では2017(平成29)年に22施設が国の登録有形文化財に登録された。駅や鉄道施設の多くが文化財なのだ。いわば古い時代物が数多く残っていることにほかならない。

 

そうした文化財と昭和に生み出された車両とが生み出すコラボレーションは、いわば同鉄道の〝財産〟であり〝宝物〟となっている。そんな恩恵を利用者も存分に見て、魅力を堪能したいものである。

 

【乗ろう!小湊鐵道⑤】復旧後の小湊鐵道の注目ポイントといえば

10月中旬になれば不通区間も復旧し、小湊鐵道の日常が戻ってくる。とともに、緊急事態宣言も解除されたこともあり、人気の観光列車「里山トロッコ」も上総牛久駅〜養老渓谷駅間での運行が再開されることになろう。

↑春には菜の花と桜、そして里山トロッコの共演が楽しめる上総大久保駅。こうした日常が早く取り戻されることを望みたい

 

さらに気になるのは、新しく導入されたキハ40の動向だ。下の写真が五井機関区の10月3日の状況だ。一番手前に見えているキハ40形が、キハ40-1で、小湊鐵道カラーの肌色と朱色で塗られ、イベント列車として走ることがすでに発表されている。

 

その後ろ側に「首都圏色」と呼ばれる朱色のキハ40が2両並ぶ。その横には「男鹿線色」と呼ばれる緑のラインが入った車両が止まっている。こうした塗装は、どのように変えて出てくるのか気になるところだ。

↑五井駅に隣接する小湊鐵道の五井機関区の模様。キハ200形とともにJR東日本から導入したキハ40の姿が多数に見える(10月3日撮影)

 

そんな五井機関区の車両の動向および観察に最適な小湊鐵道直営の施設もできている。五井駅の東口を降りた目の前に「こみなと待合室」という施設が今年3月にオープンした。広々したパブリックスペースでは、小湊鐵道のグッズ類の販売、そしてドリンク類やパンやスイーツが用意されている。

 

室内には駅側を見わたせるイス、さらには小湊鐵道のホームと機関区が目の前に見える中庭が設けられ、外にも座席とテーブル用意されている。それこそ、機関区に出入りする車両をじっくり見渡すことが可能なのだ。上総牛久駅の「里山トイレ」と、五井駅の「こみなと待合室」。最近の小湊鐵道の営業努力には頭が下がる。あとは、水害などの自然災害がなるべく房総半島を避けてくれることを祈るのみである。

↑ひと休みに最適な五井駅東口にある「こみなと待合室」。駅のホームや機関区が目の前に見えることもあり家族連れで訪れる人も多い

 

【乗ろう!房総の鉄道】気になる京葉臨海鉄道の赤い新型機関車

最後に、同じ房総半島を走る鉄道で注目の路線と新型車両に関して一つ触れておきたい。

 

内房線の蘇我駅と千葉貨物駅、さらに臨海工業地帯の京葉久保田を結ぶ21.6kmの貨物専用の路線がある。運行するのは京葉臨海鉄道臨海鉄道。貨物線としては屈指の輸送量を誇っている。これまで空色に塗られたディーゼル機関車KD55形とKD60形が長年にわたり使われてきたが、今年6月に新しい機関車が加わっている。

↑京葉臨海鉄道の新型DD200形の801号機。訪れた9月中旬には試運転が行われていた。後ろの村田川橋梁は明治期に米国で造られたもの

 

DD200形801号機がその新しい機関車で、筆者が訪れた9月には試運転が行われていた。「RED MARINE」という臨海鉄道らしい愛称も付けられた。

 

○DD200形ディーゼル機関車

DD200形はJR貨物が開発し、すでに複数の路線での貨車牽引だけでなく、駅構内の入れ替えなど、汎用性に富んだ機関車として使われている。JR貨物だけでなく、京葉臨海鉄道、水島臨海鉄道にもすでに導入されている。JR九州にも1両が導入された。臨海鉄道だけでなく、JR旅客会社にまでということは、DE10形といった古い国鉄形機関車の置き換えという役割を担うことになるのだろう。

 

京葉臨海鉄道の路線は内房線の蘇我駅・八幡宿駅・姉ケ崎駅からも徒歩で行ける距離にある。小湊鐵道を訪れたおりに、赤く鮮やかな新型機関車の活躍を見に行く楽しみも増えた。