こんにちは、書評家の卯月 鮎です。和食に合うお酒といえばやっぱり日本酒ですよね。お刺身や魚料理をさらに美味しくしてくれる立役者。これからの季節、お鍋やおでんにもピッタリです。

 

気軽に日本酒の世界へ!

現在日本酒の銘柄はなんと1万種類ともいわれています。どれを飲んだらいいのか迷ってしまうというなら、その道のプロに聞くのが一番。

 

今回紹介する『日本酒テイスティング カップ酒の逆襲編』(北原 康行・著/日経プレミアシリーズ)は、日本酒ガイド本では取り上げられることの少ないカップ酒や「アル添酒」にも着目しているのが特徴。身近なところから奥深い日本酒の世界へと分け入っていきましょう。

著者の北原康行さんは、ホテル「コンラッド東京」のソムリエでシニアアウトレットマネージャー。日本酒への造詣も深く、2014年には「世界きき酒師コンクール」で世界一に輝いています。著書には『日本酒テイスティング』(2016年/日経プレミアシリーズ)があり、本書はその続編に当たります。

 

カップ酒で日本酒テイスティング

ラベルを見て、エリア(東日本か西日本か)とタイプ(吟醸系か非吟醸系か)の情報から日本酒を選ぶという、初心者にもわかりやすい方法を提唱している北原さん。気候的に東日本は「エレガント」、西日本は「パワフル」な酒質というザックリした分類が可能だそうです。

 

2章と3章では、ここ5年で種類が増えて入手しやすくなったカップ酒が主役です。カップ酒というと安かろう悪かろう……なイメージがありますが、最近では日本酒党も納得する通好みの銘酒が続々とカップ酒になっているとか。300円台で手軽に味比べができるならこんないい話はありません。

 

具体的に取り上げられているカップ酒は全13種類。同じエリアの吟醸系と非吟醸系を飲み比べるという形式で進んでいきます。たとえば、山形県の「上喜元 純米吟醸」と岩手県の「南部美人 特別純米」のカップ酒を飲み比べ。

 

「上喜元」は食べごろを迎えたバナナのような香りがして、繊細な風味。山形県の名産である桃やさくらんぼなど、水分量が多いフルーツとの相性もピッタリとのこと!

 

一方「南部美人」は、最初にヨーグルトっぽい香りがあり、口に含むと乳酸の酸味と旨味、お米の甘味が広がる純米酒。チーカマやカキのバターソテーがおつまみとして提案されています。酒蔵がある地元の名産品との相性が書かれているのも参考になります。

 

カップ酒以外に、軽視されがちな醸造アルコールを添加した日本酒、いわゆる「アル添酒」にも光が当てられています。ワインでいうとシェリーやポートワインなどもアル添酒。そのメリットは品質が安定し、劣化しにくいぶん、造り手のイメージがストレートに伝わることだとか。

 

アル添酒では福岡県の非吟醸系「庭のうぐいす おうから」が気になりました。玄米のような香りで麦を思わせる香ばしい印象もあり、パワフルながらすっきり。初心者でも楽しめる辛口に仕上がっているそうです。博多の一口餃子が合わせる料理として挙げられていて、ビールではなく日本酒と餃子のハーモニーをぜひ体験したくなりました。

 

そのほか、今注目の伝統的な製法で作る「生酛・山廃」、近年台頭してきたスパークリング日本酒などから全29銘柄を掲載。難しい分類や理屈にはページを割かず、カジュアルで親しみやすいのが本書の良さ。「獺祭」のスパークリング酒と五目チャーハン、「飛良泉」の山廃とタルトタタンなど、提案されている料理も意外性のあるものが多く、日本酒のポテンシャルを感じました。テイスティングの表現も直感的で、実際に自分でも試してみたくなる“そそられる”日本酒ガイドです。

 

【書籍紹介】

『日本酒テイスティング カップ酒の逆襲編』

著者:北原康行
発行:日経BP

カップ酒、スパークリング、生酛・山廃、アル添酒、熟成酒…どんな日本酒も、ラベルにある「たった2つの情報」で風味がざっくり想像できる。きき酒世界一に輝いたソムリエが29種をテイスティングしつつ、味の傾向を見極めるヒントから飲み方、料理との合わせ方まで紹介します。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。