日本全国には3000種以上のレトルトカレーがあるといわれますが、その頂点に君臨するのがハウス食品の「咖喱屋カレー」。2002年から19年連続で売り上げ1位の一大ブランドですが、実は今年大きく進化したことをご存知でしょうか。また、同社は開発面もチャレンジングで、「おえかきカレーペン」という画期的な新商品が発売されました。

 

↑おなじみの「咖喱屋カレー 中辛」(180g/税別参考小売価格145 円)と、新作の「おえかきカレーペン」(40g/税別参考小売価格198円)

 

これはフードライターとして見逃せない!ということで、新旧2つの商品を中心に家カレーの最前線をレポートします。

 

ククレカレーより7年もパウチ化が遅れたワケ

「咖喱屋カレー」の進化はズバリ、レンジ調理に対応したパウチへのリニューアルです。ハウス食品のレトルトにはすでにレンジ調理できるタイプがありましたが、「咖喱屋カレー」は非対応でした。「売り上げ日本一なのに?」と意外に思われるかもしれませんが、そこにはナンバーワンならではの苦悩があったのです。同社の企画担当者や開発責任者が舞台裏を教えてくれました。

 

↑左から、ハウス食品グループ本社 容器包装開発部 グループ長の門田恭明さん、ハウス食品 開発研究所 グループ長の仲田弘樹さん、食品事業二部 チームマネージャーの岩﨑拓実さん

 

「当社で湯せんパウチから最初にレンジ対応パウチに変更したブランドは、2015年の『ククレカレー』です。当時から咖喱屋のレンジ対応も視野に入れていたのですが、咖喱屋はトップブランドとして安定して大量に生産できる仕様にすること、生産設備を整えるところまでが必須要件でした。そのため、他のブランドよりも時間がかかったのです」(岩﨑さん)

 

↑右側がレンジ対応パウチのリニューアル品。パッケージにも「レンジで簡単!!」の文字やイラストが記載されています

 

実は同じ商品でも、パウチが変わると調理後の味は同じにはならないとか。そのため、レンジ対応パウチでは具材の処理やカレーソースの配合を変える必要があったといいます。

 

「咖喱屋シリーズは味の種類も多いですからね。11品同時にリニューアルしましたが、これ自体が初めてでした。味づくりも開発研究所の総勢11人でやり遂げましたが、1つのブランドでこれだけの大人数が担当するのは異例のことです」(岩﨑さん)

 

レンジ対応ならではの味づくりは、スパイスの香りがポイント。というのも、レンジ調理時に蒸気口が開くことで、香りが飛びやすくなるからです。そこで、クミンなど香り系のスパイスを増やすなどして微調整を行ったといいます。

 

↑右がレンジ対応パウチ。袋の左上に蒸気口が付いています

 

「最初に取り掛かったのはメインの『中辛』で、2年かかりましたね。大変でしたがここで味の骨格ができ上がったので、それをもとに他の10品の味づくりに取り掛かりました。実は11品のなかでも『大辛』は唐辛子やブラックペッパーといった“辛さ”が特徴なので比較

的スムーズに味づくりができたのですが、『辛口』は“香り”が特徴ですので、『中辛』に次いでかなり苦労しました」(仲田さん)

 

↑レンジ調理する際は、このように外箱のフタを折りたたんで温めましょう。中辛に関しては、600Wのレンジの場合1分20秒が目安です

 

パウチの開発も難航をきわめたとか。これは、レンジ加熱に適した新素材の採用で解決したそうです。

 

「レンジでの調理中は、局所的に100℃以上になることがあります。耐熱性が不十分だと、一部の電子レンジと特定の中身では、まれに調理時にパウチを痛めてしまうことがありました。この解決が一番難しく、包材メーカーの協力を得て耐熱性を担保できる新素材を見出だしたことが突破口となりました。さらに今回のパウチは、開け口が平行に切れるよう工夫しているので、気持ちいいぐらい真っすぐ、より小さい力で開けられるようになりました」(門田さん)

 

↑安定のおいしさ。29種類ものスパイスが華やぐ、奥深くて複層的な香りがたまりません

 

レトルトカレーを湯せんからレンジ加熱に変えることで、調理時間が短縮されるだけでなく、調理時にコンロを使わないのでCO2排出量の削減にも寄与。同社の算出によると、約80%もCO2を削減できるのだとか。社会全体でSDGsが推奨されるなか、ハウス食品も着実な企業努力を行っていることがわかりました。

 

課題は絵を描くためのちょうどいい固さだった

新作となる注目商品が「おえかきカレーペン」です。これはカレーがチューブに入った商品で、9月1日からLOHACO(ロハコ)で数量限定発売されています。こちらの開発も一見、カレーのパッケージを変えればいいだけと簡単そうに見えますが、実現までにはなんと3年もかかったのだとか。

 

↑開発秘話を教えてくれたのは、ハウス食品 開発研究所 チーフ研究員の濱洲紘介(はます・こうすけ)さん

 

「『おえかきカレーペン』は、当社の幅広い部署からのべ10名が参加し2017年10月に発足した新製品開発プロジェクトチーム『ゼロイチ(ゼロからイチを生み出す!)』から生み出されました。消費者8名×2時間の計16時間のインタビューから、着目すべき370個の発言を分析した結果、子どもの『食前食』『食事前の過ごし方をデザインする』という切り口に着目。私自身、3歳と1歳(2017年時)の子どもがおり、一緒に楽しく過ごせたらと思っていました。そうしてアイデア会議を重ねるなかで出たのが『おえかきカレーペン』の原型です」(濱洲さん)

 

↑「おえかきカレーペン」の箱にはチューブと専用キャップが入っています。写真右は箱の裏側

 

試作品ができ上がったものの、絵を描くためのちょうどいい固さにするための試行錯誤が苦労だったと濱洲さんは言います。

 

「最初は息子に使ってもらったのですが、固くて思うように描けませんでした。そこで緩める調整をしたところ、絞り出しやすくはなったのですが、描いたソースがゆるすぎて絵がくずれてしまい作品が台無しに。その後社内の様々な年齢のお子さまに試していただき、使っている様子を動画撮影してきてもらいました。子どもたちの絵の描き方、力の入れ具合などを映像で観察し、最適なソースの固さを決定。力の弱い子でも出しやすく、描いた絵が崩れない粘性を実現しました」(濱洲さん)

 

↑キャップを開けて内ブタをはがして専用キャップを取り付ければ準備完了

 

商品のインプレッションは、筆者のほうも子どもにお願いすることに。まずはご飯の上に書いてもらいました。固すぎずやわらかすぎず、スマートに描けたようで満足気です。

 

↑硬さも粘度も描きやすく、ペン字の太さもちょうどいいとのこと

 

次はパンでお試し。ご飯より吸水率が高そうな食パンでも、チョコペンのように自由に描けたそうで、大きな失敗はありませんでした。

 

↑このあとトースターで焼きましたが、焦げたり蒸発したりすることなくちょうどいい焼き加減に仕上がりました。食事に楽しさをもたらしてくれるアイテムとして、かなり使えそうです

 

味見は筆者が行ったところ、大人でも違和感なく食べられるおいしさ。甘口なので辛さはないもののスパイスの香りはあり、フルーティなうまみとほのかな酸味、余韻に残る甘やかなスパイシー感は、さすがはカレーの名門・ハウス食品だと思いました。

 

↑ただ甘いだけでなく、トマトやチャツネを思わせるフルーティな甘み。グレイビーで濃く、煮込んだような凝縮感のある味わいが印象的です

 

ユニークなカレー商品としてはカルディの「ぬって焼いたらカレーパン」も大ヒットになりましたが、子どもが喜ぶという点では「おえかきカレーペン」に軍配が上がるはず。気になる人は、なくなる前にLOHACOでゲットを。そして改めて今回、ハウス食品の攻めの姿勢に唸らされました。今後もチャレンジングな動向を追っていきたいと思います。

 

 

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