年々注目度を増すプラントベースドフード(植物由来食品。プラントベースフードとも呼ぶ)。特に大豆ミートはメジャーなプラントベースドフードで、レストランで素材からメニュー化をするケースも増えています。今回訪れたのはその一例。まずは全国に32店舗を展開する「キリンシティ」へ。

 

↑名物は1983年の創業当初から続く、ドイツ伝来3回注ぎのご馳走ビール。料理はソーセージを筆頭にビールが進むおつまみがそろいます。写真は「キリンシティ渋谷桜丘」

 

14種の試作から3品に絞り込んだミラクルメニュー

「キリンシティ」が採用したのは、熊本を拠点とする植物肉のスタートアップDAIZ社の「ミラクルミート」という商品。従来の脱脂大豆(工場での搾油後の粕)とは違い、畑からの大豆を丸ごと使用して、大豆そのものからうまみ成分、栄養価を引き出すことに成功した画期的な大豆ミートです。

 

↑「ミラクルミート」。穀物の大豆ではなく、芽を出して植物になった瞬間の大豆を採用することで、うまみは豊かに、香りは違和感なく仕上がるなど、様々な特徴があります

 

そこからメニュー化したのは3品。これまでの背景や開発のポイントなどを、「キリンシティ」の料理長 兼 商品開発部部長の小林知之さんに聞きました。

 

「『ミラクルミート』は素晴らしい食材ですが、とはいえ『ミラクルミート』ありきで開発したわけではありません。私たちが一番大切にしていることは、キリンシティを愛してくださるお客様の気持ちと期待を最優先に考えることです。お客様のライフスタイルが大きく変化するなかで、お客様の選択肢のひとつとして『おいしい!』と実感していただけるメニューを、『ミラクルミート』を使って考案しました」(小林さん)

 

↑小林知之料理長。「キリングループとして拡大を進めている、ヘルスサイエンス領域の一環としても、チャレンジの意義があると考えています」と言います

 

開発は今年4月からスタート。コロナ禍による休業期間があったこともあり、より集中して開発ができたといいます。最終的に試作したメニューは全14種。そのなかから絞り込み、特においしさに自信がある3品が10月からデビューすることになったのです。まずは「自家製さくさくメンチカツ」から特徴をうかがいました。

 

ウマいのはもちろん、三者三様の食感に驚かされた!

↑「自家製さくさくメンチカツ」(900円/テイクアウト980円・ともに税込/以下すべて税込み)

 

「見た目も量的にもボリューム感がありますが、食感はライトで重くはありません。『ミラクルミート』の味を生かしつつ、ひよこ豆のピューレと粗めの玉ねぎでより自然なおいしさに。野菜のうまみと水分で、まるで肉汁のようなジューシーさも楽しめますよ。理想の食感を目指すために10回は試作し、今回一番難しかった料理ですが、それだけに最大の自信作でもあります」(小林さん)

 

↑肉のメンチカツと言われて食べても違和感ないおいしさ。粒の弾力がありジューシーで、ヘテロ感(不均一な要素によって感じる、味わいの重層性やふくよかさ)も絶妙です。

 

「自家製さくさくメンチカツ」は、ソースなしでそのまま食べても絶品でした。これは塩やこしょうのほかにブイヨンも使ってうまみを底上げしているからだと小林料理長。次は「自家製スパイシータコライス」について聞きました。

 

↑「自家製スパイシータコライス」900円/テイクアウト980円

 

「本場沖縄のタコライスよりもスパイシーに仕上げました。タイのチリソース・シラチャ―のほか、クミンやコリアンダーなどのスパイスも使っています。さらに乾燥スパイスを仕上げにかけることで、より香りと食感にアクセントを加えました。サイドにあしらったケールの苦みも、一緒にお楽しみください」(小林さん)

 

↑こちらは大豆ミートの食感がより凝縮されている印象。スパイスの鮮烈な香りや、ニンニクチップ、粉チーズ、シーザードレッシングのコク深さもおいしさに拍車をかけます

 

3品目は「自家製ガパオ」。こちらも本場のタイとは違い、あえて和風テイストに仕上げているとか。

 

↑「自家製ガパオ」900円(テイクアウトは未提供)

 

「玉ねぎ、小松菜、ピーマン、バジルといった野菜のうまみを『ミラクルミート』に吸わせることで、ジューシーな食感と奥深いうまみに仕上げました。タイの魚醤・ナンプラーは使わず、オイスターソースとしょうゆで調味しているので、親しみやすいおいしさになっていると思います」(小林さん)

 

↑クセを抑えたまろやかなテイストに、バジルが上品に香ります。大豆ミートはしっとりとした食感で、ほかの2品とは違う印象に感じました

 

上記3品は想像以上なおいしさで、特に驚いたのが大豆ミートの弾力の違い。三者三様で異なる食感に仕上がっていて、料理技術の高さを思い知らされました。

 

「ベースの『ミラクルミート』は水でふくらませるのですが、その加減はどうするか、さらに味の染み込ませ方や粘りの出し方まで、何度も試作し研究しました。調理工程でも違いが出ます。例えば『自家製スパイシータコライス』は『ミラクルミート』をよく搾ったうえで、水分を飛ばすように炒めることで香ばしい食感に。一方で『自家製ガパオ』は、注文が入ってから炒めて野菜の香りをまとわせ、ソースを加えて炒め煮るような手法です。この工夫により、しっとりとした食感に仕上げることができました」(小林さん)

 

「キリンシティ」は多店舗展開しているにも関わらず、セントラルキッチンではなく各店で仕込みも調理もするほど料理にこだわっています。そのため、仕込みが難しい「自家製さくさくメンチカツ」は上野店、八重洲地下街店、CIAL桜木町店、渋谷桜丘店、池袋WACCA店の5店舗のみで展開。また、今回紹介した3品はランチタイムとテイクアウトでの提供となります。

 

食べ手の想いに寄り添う姿勢がハンパない!

もう一店、キリングループのレストランで「ミラクルミート」のメニューを提供しているのが、代官山にある「スプリングバレーブルワリー東京」。こちらでも料理の特徴を聞きました。

 

↑「スプリングバレーブルワリー東京」。代官山駅から徒歩4分、恵比寿駅から徒歩7分の場所にあります

 

↑「スプリングバレーブルワリー東京」の新メニュー、「ヴィーガンナチョス」700円

 

「ヴィーガンナチョス」は、「ミラクルミート」を使った自家製チリビーンズと、トルティーヤチップスの組み合わせにアボカドをオン。チリビーンズは、ランチで人気の「SVBチリービーンズバーガ―」(1300円)の味付けをヒントに、「ミラクルミート」版で再構成したのだとか。

 

↑「キリンシティ」の「自家製スパイシータコライス」のタコミートより、本場のTEXMEXライクなスパイス感。大豆ミートはむっちりと弾力豊かで、こちらも絶品です

 

聞けば、ビーンズにはうまみの豊かな金時豆、まろやかさを演出するチーズは、よりテーマに沿うようミルク由来ではなくカシューナッツ、塩、レモンによる自家製ビーガンチーズを使っているのだとか。同店もまた、食べ手の想いに寄り添う姿勢がハンパなかったです。

 

↑クラフトビールとの相性は言わずもがな。特に「スプリングバレー 豊潤496」(左)と「スプリングバレー ジャズベリー」(中央)がドンピシャです(ともにレギュラーサイズ780円)

 

乾杯といえばビール。樽から注がれる生の味は、やはり格別です。久しく飲んでいないという人も少なくないでしょう。一方でグルメの秋ですから、おいしい一杯とともに美食の大豆ミートメニューを味わってみませんか?

 

※本稿の「キリンシティ」の3品は、登戸店、E’site高崎店、高槻店、新京極店、青森店、盛岡店では未提供となります。

 

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