〜〜2022年 鉄道のさまざまな出来事を予想〜〜

 

鉄道コーナーでは本年も鉄道をめぐるさまざまな話題をお届けしたい。まずは2022(令和4)年の初頭、寅年の鉄道をめぐる動きをピックアップした。

 

今年も注目の新型車両が走り始めるなか、長年親しんできた車両が消えていく。まだ日程は決まっていないものの新路線の開業も予定されている。

 

【2022年の話題①】10年の歳月を経て復旧を果たす只見線

まずは自然災害で不通になっていた路線再開の話題から。

 

福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶJR只見線は、2011(平成23)年7月30日に新潟・福島両県を襲った豪雨によって、同路線の複数の橋梁が流失し、各所で路盤が流失してしまった。1週間前に「只見線全線開通40周年」の記念列車が運転されたばかりだった。

 

一部区間はその後に復旧工事が進められ運転再開にこぎつけた。だが、被害が甚大だった只見駅〜会津川口駅間の復旧が問題となった。地元自治体との話し合いが滞り、復旧方針が定まらなかったこともあり、長年、不通のままになっていた。不通区間には代行バスが走っており、復旧費用が甚大になるということで、バス運行をそのまま続けるべきとの意見も多数見られた。

↑福島県の只見駅。同駅と小出駅間は列車が走るものの、会津川口駅との間は代行バスが走る。左上は只見駅から先の不通区間の様子

 

筆者も実母の郷里が近いため、何度か乗車したが、只見町周辺は山深いところというイメージが強い。雪深く、国道が平行して走るものの、只見から新潟県方面は、冬になると国道が閉鎖される。また会津若松方面へのアクセスも、国道に頼るしかなく、大雪になると除雪に手間どり移動が大変になる秘境エリアでもある。こうした公共インフラの脆弱さもあり、福島県がバスに変換する案に難色を示していた。

 

最終的には、福島県が復旧費用の負担を増やすなどで話し合いがまとまった。また、施設は福島県、運行はJR東日本が行う上下分離方式へ事業構造を変更することになった。2022(令和4)年度の上半期には復旧工事が完了の見込みで、2022年中の運行再開が発表された。

 

運行再開された後には、ぜひとも完乗し、路線の素晴らしさを改めて楽しみたいと思っている。

↑険しい山々に囲まれた第八只見川橋梁。雨の中でも作業船が川に出て復旧作業が進められていた 撮影:2019(令和元)年5月31日

 

↑本名ダムの前には第六只見川橋梁が架かっていた。大型重機を持ち込んでの架橋工事が進む 撮影:2019(令和元)年5月31日

 

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【2022年の話題②】西九州新幹線が秋に暫定開業へ

現在、九州には山陽新幹線と九州新幹線の路線が設けられている。この九州新幹線の西九州ルートとして計画されたのが、長崎まで走る新幹線の路線だ。2008(平成20)年に一部区間の工事が着工された。標準軌サイズのフル規格新幹線として工事が進められ、武雄温泉駅(たけおおんせんえき)〜長崎駅間66.0kmの路線工事が完了。2022(令和4)年秋に開業することになった。

 

路線名は西九州新幹線と決まり、走る列車にはかつての寝台特急、現在は博多駅〜長崎駅を走る「かもめ」の名前が引き継がれることになった。

↑JR大村線の沿線から眺めた西九州新幹線の高架橋。武雄温泉駅〜長崎駅間はフル規格の新幹線路線として開業する

 

西九州新幹線の開業はうれしいニュースだが、課題も残った。九州新幹線の新鳥栖駅と、武雄温泉駅の間の新幹線の路線を今後どうしていくかという問題だ。

 

当初、同駅間は台車の軌間サイズを線路幅に合わせて変更できるフリーゲージトレイン(軌間可変電車)を採用しようと計画されていた。

 

1998(平成10)年にフリーゲージトレインの試験車両がつくられ、各種試験が進められていた。第三次試験車両までつくられたが、予測していなかった車軸の摩耗が発生。長年の試験によりある程度の成果は得ることができたが、車両関連費用が従来の新幹線の2倍前後かかり、また安全性が確保できないということから、JR九州では導入を見合わせている。フリーゲージトレインの開発はその後も進められているものの、実用化の道は険しい。それとともに、新鳥栖駅〜武雄温泉駅間の新幹線路線をどうするのかも宙に浮いたままとなっている。

 

西九州新幹線が誕生した後に平行する在来線はどのように変わるのだろうか。

↑レトロな趣の長崎本線の肥前浜駅。同駅までは電化区間として残るとされている

 

在来線もこの秋に、大きく変更されそうだ。博多駅から武雄温泉駅までは、リレー列車が運行されることになる。以前、九州新幹線が新八代駅〜鹿児島中央駅間を先行開業した時と同じ対応法だ。現在、博多駅〜長崎駅間を走っている特急列車は廃止となるが、「かもめ」の名前は西九州新幹線の列車名として残る。

 

一方、大きく変わりそうなのは長崎本線の肥前山口駅から長崎駅までの在来線だ。現在、電化区間として電車が運行されているが、JR九州では、コスト削減のために非電化区間としたいとしている。肥前山口駅〜長崎駅間のうち、肥前山口駅〜肥前浜駅間は電化区間として残すという情報も伝わってきている。

 

長崎駅〜佐世保駅間にはハイブリット車両のYC1系がすでに走っているが、このYC1系の増備が同区間で必要な車両数以上に進んでいる。この車両を長崎本線の主力とするのであろうか。佐賀県と長崎県の在来線の運行形態もだいぶ変わりそうである。

 

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【2022年の話題③】走り始める注目の新車両

2022(令和4)年も複数の新型車両が走り始めることになりそうだ。まだ運転開始日は明らかになっていない車両もあるが、注目の車両に触れておきたい。

 

◆東武鉄道 C11形蒸気機関車123号機

↑2021(令和3)年12月24日に火入れ式が済み、SL大樹の牽引機の仲間入りを果たしたC11形123号機  写真協力:東武鉄道株式会社

 

今年、新たな蒸気機関車が走り始める。東武鉄道のC11形蒸気機関車の123号機だ。同車両は、滋賀県を走っていた江若鉄道(こうじゃくてつどう)が太平洋戦争後に導入した機関車で、同鉄道ではC11形1号機とされていた。その後、北海道の雄別炭鉱(ゆうべつたんこう)鉄道→釧路開発埠頭へ譲渡され、現役を退いた後は、個人が保有していた。

 

静態保存していたC11形を東武鉄道が譲り受け、2年前から復元作業を進めていた。2021(令和3)年12月24日には蒸気機関車に〝命を吹き込む〟神事の「火入れ」が行われ、2022(令和4)年にはいよいよ本線を走ることになりそうだ。

 

「SL大樹」の牽引機といえば、すでにC11形蒸気機関車の207号機と325号機が走っていて、123号機が加わることで3機体制となる。蒸気機関車はメンテナンスや検査に時間がかかる。また古い車両のため過度の負担は禁物だ。調子が悪く運転を断念せざるをえない日もある。人気の列車をこれからも継続的に運行させるために、3機体制が欠かせなかったというわけである。重連運転など、鉄道好きな人が喜びそうな運行も可能になるわけで、どのような体制になるか今から楽しみだ。

 

◆JR東海 HC85系特急用ハイブリッド車

↑防音防振対策も施され乗り心地が改善されたHC85系。先行車両の試運転も進み、量産車64両の新製も決定 写真協力:東海旅客鉄道株式会社

 

JR東海の非電化区間を走る特急「(ワイドビュー)南紀」、「(ワイドビュー)ひだ」。両特急には長い間キハ85系が使われてきた。キハ85系が新製されたのは、国鉄からJRになってすぐの1988(昭和63)年から1992(平成4)年にかけて。すでに30年以上の〝ベテラン車両〟になりつつあった。

 

キハ85系の後継車両として開発が始められたのがHC85系で、すでに試運転が始められている。HC85系は回生ブレーキによりつくられた電気を蓄電池にため、その電気とディーゼルエンジンで発電した電気を組み合わせ、電気モーターを動かして走る仕組みのハイブリッド方式を採用。ハイブリッド方式の鉄道車両としては初めて、日本最速の120km/hという高性能な車両となっている。

 

2022(令和4)年度の運転開始と発表されているが、どのような走りが見られるのか、楽しみにしたい。

 

◆JR東海 315系近郊用電車

↑丸みを帯びた前照灯にオレンジの帯の315系。まずは中央本線の中津川駅〜名古屋駅間に導入予定 写真協力:東海旅客鉄道株式会社

 

東海地区の東海道本線、中央本線、関西本線、飯田線等の電化区間を走る通勤型電車といえば、今は211系、213系、311系、313系の4タイプ。近年、313系が増備されつつあるが、国鉄時代に生まれた211系も、まだまだ走り続けている。この211系の後継車両として開発されたのが315系だ。

 

新型電車らしく、あらゆる面での性能向上が図られた。例えば211系に比べて電力消費量の35%低減を実現した。また、主要な機器が2重系統化されたために、故障しにくくなっている。バリアフリー対応の設備も充実し、全編成に車いす対応トイレを設置、車両とホームの段差を縮小するなどの工夫が施される。ほか1両に5か所の車内防犯カメラ、3か所の非常通話装置を設置。冷房機能にはAIによる自動学習・制御最適化機能も国内で初めて導入した。

 

運転開始は3月5日を予定している。2021(令和3)年度内には8両×7編成、計56両が新製される。12月中旬現在すでに4編成が試運転を始めている。

 

◆京都市交通局 20系電車

京都の町を南北に走る京都市営地下鉄烏丸線(からすません)。開業は1981(昭和56)年のことで、長年にわたり10系電車が使われてきた。最も長く走る電車はすでに40年を経過している。

 

この10系の後継車両として導入されるのが20系で、外観や内装には京都の伝統技法の「鎚起(ついき)」が使われている。従来の平面的な10系の車体正面と比べると、曲線を生かしたデザインとなり、よりスタイリッシュになった印象だ。運転開始は3月の予定で、現在走る10系20編成のうちの9編成までを、2025(令和7)年までに新型車両に置き換える予定だ。

 

◆JR九州 西九州新幹線N700S

2022(令和4)年秋の開業に合わせて同路線を走る新幹線車両が、2021(令和3)年12月22日に日立製作所笠戸事業所で報道公開された。すでに東海道・山陽新幹線用に導入されているN700Sを西九州新幹線用にリメイクした車両で、従来のN700Sが16両編成であるの対して6両と短い編成に変更。

 

デザインはJR九州との縁が深い水戸岡鋭治さんで、内外装とも水戸岡さんらしい味付けがなされている。西九州新幹線の路線に運ばれ、路線上でどのような姿を見せるか、今から楽しみだ。

 

【2021年の話題④】今年に引退していく車両といえば

新型が登場する一方で、長く走ってきた車両は引退となっていく。今年は意外な人気車両も第一線を退きそうだ。定期運用を外れる車両も含めて見ていこう

 

◆JR北海道 キハ283系気動車

↑長く札幌と道東・釧路の間を走ったキハ283系「おおぞら」。特急車両らしいスタイリッシュな姿も春で見納めとなる可能性が高い

 

キハ283系はJR北海道の札幌駅〜釧路駅間を走る特急列車に長年使われてきた。運用開始されたのは1997(平成9)年のことで、振り子式車両の特長を生かし、営業最高速度は130km/h、設計最高速度は145km/hと高速を誇る。導入前まで4時間25分かかっていた札幌駅〜釧路駅間の所要時間が、導入後は最短3時間40分と大幅なスピードアップを実現した。

 

ところが問題が生じてしまう。2011(平成23)年5月27日に脱線火災事故が起きたのだ。その後に運転最高速度を110km/hに引き下げたこともあり、性能が生かせなくなっていた。そのため、それまでキハ283系が使われていた「スーパーとかち」を汎用タイプのキハ261系に置き換え。さらにこの春には「おおぞら(以前の名はスーパーおおぞら)」も置き換えられ、キハ283系による定期運用が消滅する。

 

高性能が活かせなかったことに加えて、構造が複雑でメンテナンスに手間がかかる振り子式構造も弱みとなった。JR北海道で残る振り子式車両は、キハ281系のみとなる。キハ281系は現在、特急「北斗」に使われているが、こちらもキハ261系との置き換えが進んでいる。今後キハ281系もどうなるのか気になるところだ。

 

◆JR東日本 E3系「とれいゆつばさ」

↑山形新幹線の福島駅〜新庄駅間を走るE3系「とれいゆつばさ」。スタイリッシュな塗装で人気の観光列車となっている

 

当初は秋田新幹線に導入され、その後に山形新幹線用にも導入されたE3系。すでに秋田新幹線からは撤退したものの、山形新幹線は走り続けている。そんな山形新幹線を走る観光列車がE3系「とれいゆつばさ」である。

 

E3系「とれいゆつばさ」は秋田新幹線用のE3系0番台R18編成を改造し、2014(平成26)年から走り始めた観光列車である。車内に足湯や、座敷席があるなど、くつろげる新幹線車両でもあった。7年あまり走ってきた名物列車だったが、老朽化もあり3月に運行終了することが発表された。

 

E3系自体も後継のE8系が2024(令和6)年度から導入される予定が発表されている。まだ先の話とはいえ、長年走り続けたE3系も徐々に消えていくことになりそうだ。

 

◆JR九州 キハ47形・キハ147形「はやとの風」

↑明治期に建てられた嘉例川駅に停車する「はやとの風」。同駅で5分停車するなど、観光列車らしいダイヤが組まれ親しまれた

 

肥薩線の吉松駅と鹿児島中央駅の間を走っていた特急「はやとの風」。沿線に1903(明治36)年築という古い木造駅舎の駅、大隅横川駅や嘉例川駅(かれいがわえき)があることや、吉松駅で、肥薩線の観光列車「いさぶろう・しんぺい」に乗り継げることもあり人気となっていた。

 

この「はやとの風」が3月21日で運行終了となる。肥薩線が自然災害で不通となり、復旧が見通せなかったことが大きいのだろう。

 

ちなみに、車両は西九州新幹線の開業に合わせて生まれる新D&S列車「ふたつ星4047」に再改造される予定だ。完成後のイメージイラストを見ると「はやとの風」が黒い車体だったのに対して、「ふたつ星4047」は白のベースに金の帯になる予定で、対極とも言える車体カラーに生まれ変わりそうだ。

 

◆小田急電鉄 ロマンスカーVSE(5000形)

↑シルキーホワイトと呼ばれる白い車体にバーミリオンの帯。小田急線で長らく親しまれてきた名物車両も数年のうちに消えていく運命に

 

本原稿の準備をちょうど進めている時に、ニュースが飛び込んできた。小田急の人気ロマンスカーVSE(50000形)が春に定期運用を終了するというのである。

 

VSE(50000形)が生まれたのは2004(平成16)年のこと。「ロマンスカーの中のロマンスカー」と称され、小田急のフラッグシップモデルとして導入された。1963(昭和38)年に登場したNSE(3100形)に初の前面展望席を設けて以来、LSE(7000形)、HiSE(10000形)、そして本形式のVSE(50000形)と小田急ロマンスカーの伝統ともなっている前面展望が受け継がれた電車でもあった。

 

近年はEXE(30000形)やMSE(60000形)と展望席のないロマンスカーも導入されたが、GSE(70000形)には展望席が設けられているように、展望席はロマンスカーらしさの象徴のようにも思われる。

 

登場してからまだ18年ほどのVSE(50000形)。鉄道車両としてはまだまだ〝若い車両〟と言って差し支えない。それが定期運用を終了させるという。小田急電鉄としては唯一残った、車両と車両の間に台車がある「連接構造」がマイナス要素となったのだろうか。

 

春に定期運用が終了した後、2023(令和5)年秋ごろまでは臨時ダイヤでの運行が行われる予定だとされ、今すぐに消えるわけではないが、その動向が気になる車両となった。

 

【2022年の話題⑤】先祖返り!? 富士山麓電気鉄道へ名称を変更

この春には富士急行という鉄道会社名が消えて、新たに「富士山麓電気鉄道株式会社」が生まれる。

 

富士急行は山梨県内の大月駅〜河口湖駅間の路線を持つ鉄道会社だ。会社の設立は1926(大正15)年9月18日と古く、当時の社名が「富士山麓電気鉄道」だった。後の1960(昭和35)年5月30日に富士急行という名称に変更している。

 

その後、60年以上にわたり富士急行の名前が使われたが、2021(令和3)年に鉄道事業の分社化が発表され、2022(令和4)年4月1日からは正式に富士山麓電気鉄道となる。同社の歴史をふりかえれば、〝先祖返り〟することになるわけだ。

 

同社では分社化して動きを良くし、環境変化に即応するためと説明している。新型コロナ感染症の流行の前には、訪日外国人により非常に潤っていた同社だが、この2年は利用者の著しい減少に陥っていた。

↑富士急行の名物といえば、車窓から見る富士山の眺望。写真は8500系「富士山ビュー特急」

 

新型コロナウイルス感染症のまん延が始まったのは2020(令和2)年の春。そこからもうすぐ2年近くの歳月がたつ。鉄道経営にも経済的な影響がじわじわと忍び寄っているというのが現状なのだろう。

 

まだ始まったばかりの2022(令和4)年ながら、新たなニュースを見ていくと、鉄道自体が、難しい時代に直面していることが透けて見えるように感じる。

↑河口湖駅前で保存される富士山麓電気鉄道のモ1形、左下は富士山麓電気鉄道当時の時刻表。この当時の鉄道会社名に戻ることに