2021年の10月に発売され、家電業界とコーヒー業界ともにザワつかせているバルミューダのコーヒーメーカー「BALMUDA The Brew(バルミューダ ザ・ブリュー)」。コーヒーの抽出過程を楽しめるデザインを採用したほか、雑味を極限まで取り除き、「ストロング&クリア」な味わいを目指したとのこと。発表会の取材で試飲して、その味わいに筆者も納得しました。ただし、そこでふと気になったのが、「コーヒーのプロは本機をどう評価するのか?」という点です。

↑発表会で展示されていた「BALMUDA The Brew」(実売価格5万9400円・税込)。緻密な温度制御、コーヒー豆の個性を引き出す0.2ml単位の正確なドリップ、クリアな後味を生むためのバイパス注湯といった技術を組み合わせた「クリア ブリューイング メソッド」により、「ストロング&クリア」な味わいを実現します

 

そこで、東京・渋谷の有名喫茶店「茶亭 羽當(ちゃてい はとう)」のバリスタ・天野 大(だい)さんに協力を得て、実際に本機を使ってもらいました。その評価を中心に、「BALMUDA The Brew」の特徴をいっそう深掘りしていこうと思います!

↑サードウェーブコーヒーの旗手として知られるブルーボトルコーヒーに影響を与えた名店「茶亭 羽當」のバリスタを務める天野さん。バリスタ歴は20年以上で「茶亭 羽當」での勤務は15年目となっており、コーヒーの味わいを見極める目は確か。THE OMEN 666という、パワーパンクバンドのドラマーという顔も持っています

 

淹れたての香りをダイレクトに届けてくれる

まずは外見など、味わい以外の感想からうかがっていきましょう。天野さんは、ドリッパーがオープンになっているデザインは目で見える楽しさだけでなく、おいしさの訴求としても理にかなっているといいます。

 

「コーヒーにとって、香りはすごく重要。そして実は、飲むときよりも淹れているときのほうがフレッシュな香りが立つんです。つまり、ドリッパーが露出しているということは、淹れたての香りをよりダイレクトに届け、広げてくれるということ。飲む空間までおいしくしてくれるんです」(天野さん)

↑ドリッパ―が露出しているオープンドリップ式を採用。蒸気とともに豊かな香りが広がります(製品のカットは編集担当者宅で撮影)

 

このオープン構造をはじめ、天野さんはマシンが生み出す“ライブ感”にも言及。これはバンドマンでもある天野さんならではの視点ともいえそうですが、バルミューダの寺尾 玄社長もバンドマン。この共通点は、筆者にとって非常に興味深いです。

 

「立ち上げ時の電子音や電源ランプのゆらめき、抽出時のメトロノームのようなクリック音(※)、それに水蒸気のシューッという音にも、こだわりを感じますね。『体験』という表現が、実によく似合うコーヒーメーカーだと思います」(天野さん)

※実際は古時計の振り子の音をイメージした音

 

地味ながらサーバーを予熱する点がいい

次に、肝心の味に対する感想を教えてもらいました。先述の通り、オープンドリップ式の採用で香りが空間に広がることに加え、保温機能がなく、味の劣化が少ないのが魅力だと言います。

 

「保温機能がない点は、むしろコーヒーをおいしく飲むなら好都合。温め続けると、それだけ風味が飛んでしまうからです。それに、保温機能はなくても下のサーバーが熱を逃がさない真空構造なので、すぐに冷たくなることもないですから」(天野さん)

↑本体に保温機能はありませんが、サーバーに真空二重構造のステンレス素材を採用することで、温度の低下を抑えます

 

「すぐに冷めない」ことに関連して、天野さんは本機の予熱機能にも言及。

 

「コーヒーを淹れる直前に、サーバー内に蒸気を入れて温めますよね。これ、地味なんですがかなり重要です。例えば、レストランやラーメン店でも器を温めてから提供することがあるじゃないですか。街のカフェでもよくエスプレッソマシンにマグが積まれているのを見かけますよね。あれはマグを温めているんです。うちの店でももちろん、カップを温めてから提供していますよ。なるべく冷めないように、かといって温め続けて香りを飛ばさないようにすることが、コーヒーのおいしさには重要なんです」(天野さん)

↑予熱の様子。写真ではわかりづらいですが、ドリッパーの後ろ、サーバーとの境目あたりから蒸気が噴き出しています

 

↑天野さんが話す、エスプレッソマシンにマグが積まれて温められている例(写真は過去に筆者が撮影)

 

酸味が豊かな豆は「レギュラー」で淹れるべし

↑「BALMUDA The Brew」の操作パネル。「REGULAR(レギュラー)」「STRONG(ストロング)」「ICED(アイス)」の3つのモードを用意

 

「BALMUDA The Brew」は「レギュラー」「ストロング」「アイス」の3つのモードが選べるようになっており、それぞれの特徴について天野さんにうかがいました。

 

「『レギュラー』は浅煎りから深煎りまで、どんな豆でもしっかり特徴を出してくれるオールマイティな設定です。なかでも、酸味を特徴とする豆を使うなら『レギュラー』がオススメ。ほかの2つだと、酸味が強く出すぎてしまうと思います」(天野さん)

↑「レギュラー」で淹れたコーヒー

 

「ストロング」は、ビターテイストが好きな人やミルクで割る飲み方にオススメとのこと。特にミルクをたっぷり入れたい場合は「アイス」がオススメだといいます。

 

「『レギュラー』でもビター感は出るんですけど、『ストロング』はさらに濃厚。豆の煎り方にもよりますが、深煎りの豆を使うなら『ストロング』を選んだほうがいいと思います。そして『アイス』は、アイスコーヒーはもちろん、ホットのままでミルクをたっぷり入れたいときにもオススメ。カフェラテやカフェオレは、濃くドリップしないと水っぽくなってしまうんですが、『アイス』ならその心配がありません。このように、本機の3つのモードは三者三様でキャラがはっきり分かれていて、面白いと思いました」(天野さん)

 

中深煎りで酸味が強すぎないフルーティな豆が合う

今回天野さんは、普段から使い慣れている「羽當オリジナルブレンド」の豆や、手に入りやすいカルディの「マイルドカルディ」のほか数種類の豆を使用。飲み比べて気付いた点もうかがいました。

 

「苦みと酸味のバランスが良くなるので、個人的には『シティロースト』ぐらいの中深煎りの豆がイチオシ。それ以上の深煎り(フルシティ、フレンチ、イタリアン)になると苦みが出すぎてしまうかも。シングルオリジン(単一品種豆)か、ブレンド豆かという点はあまり関係がなく、それよりも焙煎の度合いが重要です。あえてオススメの豆を挙げるなら、酸味が強すぎずフルーティな香りもある『マンデリン(インドネシア)』や『ブラジル』。『BALMUDA The Brew』は、ナッティな(ナッツのような)香りやウッディな香りが強調される傾向があるため、あえてフルーティな豆を使うことでバランスが整うと思います」(天野さん)

↑自宅でテイスティングを行う天野さん

 

湯を注ぐタイミングや湯量のコントロールが秀逸で「買って損なし」

最後に、「ここが惜しい」という点があったかどうかを聞いてみると、バリスタならではの回答が返ってきました。

 

「ハンドドリップのように、お湯を回しながら淹れられるといいですよね。そうすればドリッパーの全体にお湯を行き渡らせて、豆が持つ甘みや繊細な風味をもっと引き出せるのかな……と。とはいえ、シャワーで広範囲に湯を噴射するのでその点はカバーできているとは思いますし、湯を注ぐタイミングや湯量のコントロールは秀逸。現状でも十分に高いクオリティです。約6万円と価格は強気ですけど、買って損はないコーヒーマシンだと思いますね。仮に回しながら注ぐ機能を付けるとより高額になってしまうでしょうから、現状でベストなバランスなのかもしれません」(天野さん)

↑注湯シーン

 

コーヒーのプロも太鼓判を押す「BALMUDA The Brew」。今回、各モードの傾向やベストな豆などを教えてもらったことで、より具体的に味わいや使い方をイメージできた方も多いはず。ドリッパーが露出するオープンドリップ式の採用で、視覚と嗅覚で楽しめるのも魅力です。本機があれば、コーヒータイム、ならびにおうち時間が充実することは間違いありませんね。以前に紹介した「スタバモデル」とともに、検討してみてはいかがでしょうか。