いま「メタバース」として認識されているサービスには、具体的にどんなものがあり、どんなトレンドがあるのか。ここではゲーム、ファッション、ビジネスの3分野におけるメタバースについて、それぞれの概要と傾向をチェックしていきたい。

※こちらは「GetNavi」2022年3月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

メタバースの“いま”を探る

↑日産は実在するショールームをバーチャルギャラリーとして再現。デジタル上での新たなコミュニケーションの場のひとつとなっている

 

私が解説します

デジタルライター

井上 晃さん

メタバースは2017年ごろからゆるく追う。Questでは卓球とお絵描きが好き。21年末の忘年会はclusterで実施した。

 

《ゲーム分野》

オンライン空間に集まり「一緒に何かをする」という点で、ゲームは20年以上の歴史を持つ。オンラインゲームにおける、遊びながらコミュニケーションをする“場所”としての役割は、メタバースを語るうえで無視できないテーマのひとつとなっている。

 

ゲームのメタバース的体験はVR化や用途の変換に注目

広義の「メタバース」は新しいものではない——。語源はニール・スティーヴンスンが1992年に発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」に遡るが、3D空間で人が交流する概念はそれ以前からある。現実のサービスについては、オンラインゲームの原型が登場したのが97年ごろ。米Linden Lab社によるMMOG(大規模マルチユーザー参加型オンラインゲーム)の「セカンドライフ」が提供されたのが03年だ。

 

このように「アバターで集まって交流する」という体験は、ゲーム分野に一日の長がある。家庭用ゲーム機でのオンラインサービスも一般化したので、ゲームでの交流は経験済みな方も多いだろう。

 

そんなゲームにもここ数年で顕著な変化が2つあった。ひとつは個人で入手しやすいVRヘッドセットが普及し、VRが身近になったこと。例えば、Thirdverseが提供する「ソード・オブ・ガルガンチュア」では、VRのアクションゲームをオンラインマルチプレイで楽しめる。もうひとつは、既存のオンラインゲームが交流用途で使われだしたことだ。特に、EPIC GAMESの「フォートナイト」は、新たに戦闘禁止のマップ製作ガイドラインなどを整えるなど、メタバース的役割を意識的に伸ばしている。

 

メタバースの代表的ゲームはコレだ

 

【その1】マイクロソフト 「マインクラフト」

Mojang (c) 2009-2021

ブロックで自由に世界を作るゲームで、「サンドボックス型(※)」に分類される。世界で最も売れたゲームでもある。サーバーを介したマルチプレイが可能で、第三者が公開した「配布ワールド」を訪れる遊び方もある。Java版と統合版の差に注意したい。

※隔離された領域でプログラムを実行し、問題発生時においてもほかのプログラムに影響を及ぼさないようにする仕組み。公園の「砂場」を意味し、外部から仕切られた環境で自由に遊べる状況から由来する

 

↑大規模な人数で同じワールドに集まることも可能だ。ただし、サーバーを用意するなど、ネットワークの知識が必要になる部分もある

 

【その2】サードバース 「ソード・オブ・ガルガンチュア」

(c)Thirdverse, Co., Ltd.

2019年に正式リリースされたのち、SteamやOculus Quest Storeなどのストアで高く評価されたタイトル。巨大な敵を、剣と盾で討伐していく迫力ある“剣戟(けんげき)”がテーマのVRアクションゲームで、4人のマルチプレイにも対応している。

 

↑武器は剣と盾で決まっているわけではなく、様々な片手武器や両手武器を選択可能。二刀流スタイルでのプレイも可能となっている

 

【その3】EPIC GAMES 「フォートナイト」

(c)2022,Epic Games,Inc.

2017年にリリースしたTPSゲーム(※)だが、独自マップを作れる「クリエイティブモード」も備えている。21年末には戦闘行為なしで、ミニゲームや会話を楽しむための「パーティーワールド」を作成するにあたってのガイドラインを提示した。

※サードパーソン・シューティングゲーム(Third Person shooting game)の略称。 自分が操作するキャラクターの後方あたりからの視点でプレイする

 

↑メタバース化が進むフォートナイトでは、バーチャルコンサートが開催されることも。20年には米津玄師の出演が話題になった

 

《ファッション分野》

3D空間でアバターが着る衣服「バーチャルウエア」が盛り上がっており、大手ブランドの参入やクリエイターの成功事例など話題にはこと欠かない。厳密な「メタバース」との関連性は低いが、投機的なNFTコレクションの展開も過熱する。

 

アバターのファッションが新たな金鉱となりつつある

メタバースにおける課金要素として、アバターが着る「バーチャルウエア」の注目度は高い。

 

バーチャルウエアはすでにアプリ内課金などの仕組みを用いて販売されている。例えば、韓国のNaver Z社が提供する3Dアバターソーシャルアプリ「ZEPETO(ゼペット)」では、ナイキやラルフローレンといった大手を筆頭に、様々なファッションブランドがアイテムを販売している。

 

また、ブロックチェーン技術を活用したNFT(非代替性トークン)の認証技術を用い、アイテムに関連する「鑑定書/証明書」的情報を含めた販売が行われる方向性も加速する。最近ではアディダスが2021年末に、NFTアイテムを販売して話題となった。

 

名だたるブランドがメタバースに参入

 

【その1】adidas Originals

NFTコミュニティと連携した展開を進める

有名スポーツブランド「adidas(アディダス)」のアパレルラインであるadidas Originalsは2021年12月、NFTコレクションとなる「Into The Metaverse」をリリース。その売り上げは26億円に上ったと発表している。

 

↑公式サイト表記によれば、NFTの購入者は、2022年に実際のアイテムを手にする権利も得ているという。リミテッドエディションは完売した

 

【その2】NIKE

メタバース参入のための基盤を整えた

昨年11月に「Roblox」内で「NIKELAND」を開設。12月にはバーチャルスニーカーなどのNFTアイテム製作を手掛けるRTFKT(アーティファクト)スタジオを買収するなど、積極的なメタバース進出を図っている。

 

↑ナイキ本社から着想を得たというNIKELANDでは、様々なミニゲームを楽しめる。アバターでナイキ製品を着用できるデジタルショールームも

 

【その3】ラルフローレン

アプリ内バーチャルウェアを販売中

ファッションブランドのラルフローレンは2020年夏に、スナップチャット内のアバター機能「Bitmoji」用の服を発売。21年夏には「ZEPETO」内でバーチャルウエアを発売するなど、デジタル市場へ堅実に展開中だ。

 

↑20年5月にSnowから独立したNaver Z社が提供する「ZEPETO」にて、アプリ内通貨で購入できるバーチャルウエアが販売されている

 

《ビジネス分野》

「メタバース」の一側面を構築する要素として、VR空間で会議などを行うためのコラボレーションツールも重要だ。同ジャンルではメタ社が先行する一方で、マイクロソフトも本格参入を宣言しており、目が離せない市場と言える。

 

没入型の会議室に集まって会議を行える時代になった

ビジネス向けのVRコラボレーションツールはまさに群雄割拠の状態で、各ストアで様々なサービスが展開されている。なかでも、プラットフォーマー自体が提供するサービスとして、メタ社の「Horizon Workrooms」や、HTCの「VIVE Sync」などは代表的な存在だ。また、マイクロソフトもMRフレームワークである「Mesh」を用いて「Teams」を拡張したツールを発表しており、2022年前半にプレビューとして提供予定である。

 

こうしたツールを使えば、遠隔地にいる複数人が同じ空間に集まって、臨場感のあるコミュニケーションを取ることが可能。ウェブ会議ツールに次ぐ新しい形の会議室として、注目度は高まっている。

 

オンライン会議では足りない“多彩な”やり取りが可能

 

【その1】Meta「Horizon Workrooms」

Quest 2があれば入れる無料のVR会議室

2020年8月発表のVRコラボレーションツール。VRヘッドセット「Meta Quest 2」を使って無料で利用でき、バーチャルな会議室でコミュニケーションが行える。先駆的に提供されたツールだが、現在提供されているのは、まだベータ版だ。

 

↑一部のノートPCや周辺機器をVR空間に持ち込んで作業できる。PC画面のモニター投影や、ホワイトボードへの書き込みなどにも対応

 

【その2】マイクロソフト「Mesh for Microsoft Teams」

Teamsのビデオ会議にアバターで出席することも

2021年11月に発表されたツールで、同社のコミュニケーションプラットフォームである「Teams」を基盤としつつ、3Dアバターを介したコラボレーションができるようにしたもの。2022年前半にプレビュー版が提供開始予定だ。

 

↑会議や交流が行える3D空間が提供されるほか、ビデオ会議にアバターで参加するといった機能も搭載される予定だ