〜〜春に発表の鉄道各社2022年度 事業計画その2〜〜

 

首都圏大手私鉄各社の「設備投資計画」が出そろった。それぞれアフターコロナを見極め、次の時代へ向けての積極的なプランを打ち出している。今回は首都圏大手が発表した事業計画の中で、新型車両の導入計画および立体化工事などの設備投資を中心に、首都圏大手6社の気になるポイントに注目してみた。

 

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【東急電鉄】新横浜線開業目前で目黒線8両化が進む

東急電鉄が5月13日に発表した2022年度の「設備投資計画」。「事業基盤の強靭化と社会的価値の持続的提供のため総額444億円を投資」する。ちなみに首都圏大手9社の中で、最も金額が多い設備投資計画となった。

 

新車増備計画:2020系増備で8500系も残り1編成に

「新型車両の導入」プランでは、田園都市線用の2020系の10両一編成を導入する。この導入により、旧型車両(8500系)との置き換えが完了する。

↑最後まで残った田園都市線用の8500系8637編成。残念ながら5月末現在、朝夕のみの運用などに限られている

 

東急2020系は2018(平成30)年3月28日に東急の次世代の標準車両として開発され、田園都市線用だけでなく、すでに目黒線用に3020系、大井町線用には6020系が生み出され導入されている。モーターの高効率化、車内照明、ヘッドライト・尾灯のLED化により使用電力を軽減、2020系と旧型の8500系と比較すると使用電力が50%ほど軽減される。

 

一方、消えていく8500系は1975(昭和50)年に開発された車両で、47年にわたり田園都市線を走り続けてきた。東急電鉄の言わば〝ご長寿車両〟だった。今年の4月からは「ありがとうハチゴー」プロジェクトとして残る編成にヘッドマーク装着が行われ、撮影会、貸切イベントも開かれている。田園都市線の沿線で、旧型電車らしいモーターの甲高い音が聞けなくなるのは、ちょっと寂しいところである。

↑東急田園都市線の主力車両となりつつある2020系。2022年度の導入分で旧型8500系の置き換えが完了となる

 

設備投資計画:東急新横浜線開業に向けて最後の仕上げに

2022年度末にあたる2023(令和5)年3月に開業予定の東急新横浜線。相模鉄道の羽沢横浜国大駅と東急東横線の日吉駅間が結ばれることにより、東海道新幹線の新横浜駅利用が非常に便利になる。さらに、この新線開業により3都県、7社局14路線を結ぶ大鉄道ネットワークが完成される。今年は最後の仕上げの年となるわけだ。

 

この新線には主に目黒線を走る列車が乗り入れる予定だが、これまで6両だった同線の電車が徐々に8両編成化が進んでいる。中でも3020系の一部編成は早くも6両から8両となり走り始めている。今年度の設備投資計画では新横浜線開業までに東急電鉄の全26編成がすべて8両化される予定だ。すでに他社の乗り入れ車両である、都営三田線用の新型6500形も8両編成で走り始めている。東京メトロ、埼玉高速鉄道などの電車も追随予定で、来春にはさらなる輸送力増強が図られそうだ。

↑新横浜線開業を1年後に控えた3月31日。元住吉運転区では8両化された東急3020系と相模鉄道20000系が並ぶ様子が見られた

 

その他にも設備投資の一環として大井町線で実施している有料着席サービス「Qシート」の他路線展開も、今後検討していくとしている。

 

【東武鉄道】新特急車両の導入で東武特急の〝顔〟が変わる

4月28日に東武鉄道から2022年度「鉄道事業設備投資計画」が発表された。この計画では総額322億円の設備投資を行うとしている。その1「安全・安心の持続的な提供に向けて」のトップに「鉄道立体化の推進」を掲げている。首都圏の大手私鉄の中で最も立体化の推進に力を入れている様子がうかがえる。同件の詳細は後述するとして、まず車両に関して見ていこう。

 

新車増備計画:N100系を新造、一方で消滅した350系電車

「鉄道事業設備投資計画」の2に「さらなるサービス向上に向けて」として新型特急N100系に関して触れている。このN100系は2022年度に車両製作を行い、2023年に正式にお目見えとなる。走るのは東武スカイツリーライン・日光線・鬼怒川線で、浅草駅〜東武日光駅・鬼怒川温泉駅間に導入される。計画では6両×4編成、計24両を新造する。横3列のプレミアムシート、運転席越しの展望が楽しめる11立方メートルの個室「コクピットスイート」が設けられるなど贅沢な車両となりそうだ。

↑100系の「デラックスロマンスカーカラー」編成。昨年12月に登場したリバイバルカラーで他の100系も塗り替えが進められている

 

現在の、東武鉄道の特急形車両は、100系スペーシアに、200・250型りょうもう、他に500系リバティの3本立てで運行される。N100系は形式名にも「100」という数字が踏襲されるように100系スペーシアの後継にあたる車両となる。100系が登場したのは1990(平成2)年6月のことで、すでに30年以上走り続けている。

 

現在の100系は6両×9編成、計54両が走っていて、昨年からリバイバルカラーへの塗り替えが一部の編成で行われている。これはN100系の新造とどのような関連性があるのか気になるところだ。500系リバティも徐々に増備されており、将来はN100系と500系によって、現在の100系の運用が引き継がれることが予想される。

↑東武鉄道の特急型電車の中ではユニークな存在だった350系。定期運用は消滅したものの夜行団体臨時列車などでの運行が行われる

 

ちなみに、今年の3月までは350系という特急形電車が走っていた。元は1800系という急行型電車で、特急形として改造した4両編成の車両を350系とした。土休日に浅草駅〜東武日光駅間を走る特急「きりふり」に使われていたが、2022(令和4)年3月6日の運行をもって同列車の運行が終了、同時に350系電車の定期運行が終了している。

 

東武の投資計画には記されていないものの、4月28日に車両に関して気になる発表があった。東武アーバンパークライン(野田線)に5両編成の新型車両を導入するというのである。同線には現在60000系と10030系、8000系の3タイプが走っている。すべて6両編成で運転されている。新型は60000系の5両編成版となる。2024年度以降から順次導入される予定だとされる。

 

コロナ禍により、在宅勤務やテレワークが多くなり、電車通勤をする人が減っているとされるが、既存の編成車両数を減らすというのは、かなり思い切った計画である。将来、5両編成と6両編成を共存させていくのか、気になるところだ。

↑東武アーバンパークライン(野田線)を走る60000系。2024年度以降は5両編成の車両が登場することが発表された

 

設備投資計画:立体化工事が進む東武スカイツリーライン

東武鉄道の沿線では踏切を減らすために複数の高架化工事が進められている。投資計画に掲げられた区間を紹介しておこう。

 

◆竹ノ塚駅付近高架化
東武スカイツリーライン・竹ノ塚駅付近(西新井駅〜谷塚駅/やつかえき間)の高架化工事で2023年度に事業完成予定。

◆清水公園駅〜梅郷駅(うめさとえき)間高架化
東武アーバンパークライン・清水公園駅〜梅郷駅間が立体交差かの工事を施工中。2023年度中に野田市駅の供用開始および2面4線化される。

◆とうきょうスカイツリー駅付近高架化
東武スカイツリーライン・とうきょうスカイツリー駅付近(とうきょうスカイツリー駅〜曳舟駅間)の工事で、2022年度は上り線の高架橋工事が推進される。

↑とうきょうスカイツリー駅付近で進む高架化工事。まずは上り線の高架橋工事が進められている

 

◆春日部駅付近高架化
東武スカイツリーライン・東武アーバンパークラインが交わる春日部駅付近(一ノ割駅〜北春日部駅間、八木崎駅〜藤の牛島駅間)の高架化工事で、2022年度には春日部駅東側で仮上り線ホームと東口仮駅舎の工事を推進する。

◆大山駅付近高架化
東上線・大山駅付近(下板橋駅〜中板橋駅間)の高架化で、2022年度に連続立体交差化工事についての地元自治体と施行協定を締結のうえ、工事着手に向けて設計業務等を行う。

 

こうした立体化工事は地元の自治体との都市計画事業として行われている。交通渋滞の原因となりがちな開かずの踏切を減らし、高齢化社会が進む時代、危険性が高い踏切を減らす要望がそれだけ強くなっているということもあるのだろう。

 

【京王電鉄】ライナー用車両の新造と連続立体化工事の推進

5月2日に京王電鉄から2022年度の鉄道事業設備投資計画が発表された。その額は288億円で、首都圏大手の3位にあたる。【主な取り組み】の中で「1.より高度な安全・安心の追求」のトップとして「(1)京王線(笹塚駅〜仙川駅間)連続立体交差事業の推進」が上げられている。連続立体交差事業が同社最大の事業という位置づけなわけである。

 

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新車増備計画:好調な京王ライナー用の5000系を増備

まずは車両増備計画から見ると、5000系の新造車両1編成(10両)を増備するとある。5000系は2017(平成29)年9月に登場した車両で、ロングシート・クロスシートと座席が変換できるデュアルシート(マルチシート)の機能を生かして、有料座席指定列車の「京王ライナー」などに使われている。デュアルシートは、多くの会社の車両に使われる機能だが、クロスシート利用時にリクライニングできないといったマイナス要素があった。

 

本年度に増備される京王5000系は、日本初のリクライニング機能を取り入れたデュアルシートが使われる予定となっている。すでに導入されて4年になる座席指定列車「京王ライナー」だが、密を避けたいという思いを持つ利用者が増えたせいか、運行される列車は概ね好評のようである。

↑朝夕に運行される座席指定列車「京王ライナー」。今年度はリクライニング機能付きの5000系の新車が導入される予定だ

 

車両に関しては「車両やホーム上における防犯・安全対策」とある。具体例としては「車両併結による車内通路非貫通の解消」と記されている。これは8000系同士の連結時にあったもので、先頭車両同士が連結されることにより、通り抜けができない状態が生まれていた。この8000系の連結される側の運転室を廃止し、貫通幌を付けて通り抜けが可能にした車両が整備されている。外から良く見ると、後付けした連結部ということもあり、やや異なる姿だが、こうした変更も防犯・安全対策として有効なのであろう。

 

ちなみに、今年の3月のダイヤ改正で京王線の列車運行で変更があった。「準特急」という「特急」に準ずる列車が廃止され、「特急」のみに変更された。誤乗車を防ぐための工夫であるとともに、京王ライナーを「終日運行の検討を進める」と投資計画内にあるように、次の時代の列車運行のための布石でもあったのだろう。

 

設備投資計画:笹塚駅〜仙川駅間の連続立体化工事を進める

京王電鉄が進める事業として最も大掛かりなのが、京王線の立体交差化である。京王線の笹塚駅〜仙川駅間約7.2km区間で進められる連続立体交差事業で、「引き続き事業主体である東京都および世田谷区・渋谷区・杉並区とともに用地取得や高架化工事などを進める」とある。この高架化により途中7つの駅が高架化、25か所の踏切が廃止される予定だ。

↑代田橋駅〜明大前駅間の現状。高架化工事を進めるために都道413号線(右)の位置が変更された。中央の工事部分が高架化される

 

筆者は同路線の沿線に住んでいることもあり、日々、この事業の進み具合を目にしているが、用地取得は最終局面を迎えつつあり、また一部の高架化工事も順調に進められているように見える。

 

投資計画の最後の「DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した業務省力化等の推進」の中に「土木構造物や電気設備の維持管理業務のデジタル化に向けて検査システムの構築を進める」とあった。同社には900形電車DAX(Dynamic Analytical eXpressの略)という軌道検測車両(総合高速検測車)が在籍している。DXとは言葉が異なるものの、この車両が調べたデータなども取り入れた仕組みづくりが進められていると思われる。

↑偶数月の月初めに走る京王線の検査列車。中間にDAXを連結して軌道検測などの検査を行っている

 

【小田急電鉄】5000形増備+3000形をリニューアル

小田急電鉄からは4月28日に2022年度「鉄道事業設備投資計画」が発表された。「安全対策の強化」と「サービスの向上」を重点に、総額263億円の投資が行われるとされた。

 

トップに掲げられた「安全対策の強化」として1日の利用者数10万人以上の駅へ優先的にホームドア整備を推進するとしている。同条件に当てはまる駅としては本厚木駅が上げられ、まずは1・2番線にホームドアの導入を行う。

↑増備が進む小田急5000形(2代目)。ワイドサイズの車体を生かし「車内スペースを拡張し、広さ、明るさ」をより感じる造りに

 

新車増備計画:5000形の増備の一方で1000形の減車が進む

今年度に導入される車両は5000形で10両×3編成が新造される。この新造により1000形の一部が引退となる。特に引退が進められているのは1000形の未更新車と、ワイドドア車だ。ワイドドア車とは、側面の乗降扉が通常(扉幅は1.3m)を扉幅2mに広げた車両で、乗降時間を短くすることを目的に造られた。乗降時間を短くする試みとして成果はあったものの、座席定員数が減ったことが逆に不評だったとされる。

↑1000形ワイドドア車。運転室の後ろの扉以外はみな2mと幅広くされた。写真の1752編成は2021(令和3)年6月に廃車となった

 

1000形のワイドドア車は6両×6編成が走っていたが、2020(令和2)年11月から引退が進められ、最後の車両は、今年の5月に正式に引退となった。ちなみに乗降扉を1.6mと広げつつも、座席数を確保した2000形は今も9編成72両が走り続けている。

 

さらに車両計画では、3000形の6両×3編成をリニューアルするとしている。「省エネルギー化が図られる制御装置の搭載やオイルフリーコンプレッサーへの更新」が行われる予定だ。

 

↑小田急電鉄の主力車両3000形。6両・8両・10両のうち6両編成の車両からリニューアル工事が進められる

 

設備投資計画:横浜線跨線橋などで耐震補強工事が進む

車両以外の設備投資プランとしては中央林間駅の駅舎改良工事(2024年度竣工予定)、町田駅近くに架かる「横浜線跨線橋」や、渋沢駅〜新松田駅間にある「第1四十八瀬川橋梁」の耐震補強工事が行われる予定となっている。

 

【西武鉄道】西武新宿線の複数個所で地下化・立体化が進む

西武鉄道からは5月12日に2022年度「鉄道事業設備投資計画」が発表された。総額245億円で、安全対策、サービス向上、環境対策などの鉄道事業に関しての設備投資を行うとしている。

 

特に今年度は次世代の新宿線を目指し、複数個所での連続立体交差事業をさらに推し進めるとしている。

 

新車増備計画:増備が進む40000系、一方で引退が進む旧型電車

まずは新車両の導入計画から見ていこう。新車両としては「S-TRAIN」用として導入された40000系3編成30両を増備するとしている。40000系は2017(平成29)年3月25日に導入された車両で、クロスシート・ロングシートが転換できるデュアルシートを備えた車両として開発された。すでにデュアルシートを取り入れた0番台が6編成60両を導入。さらにロングシートに固定された50番台の導入が行われ、0番台を超える編成数がすでに走っている。

↑池袋線を走る40000系50番台。座席は固定式のロングシートのみとなっている。主に池袋線での運用が続く

 

西武鉄道では池袋線の特急として登場した001系ラビューが2022年(令和4)年2月までに7編成56両が導入され、池袋線の特急列車の運用についている。新宿線では従来の10000系ニューレッドアローが特急「小江戸」の運用されているが、こちらの後継車両の導入はまだ先のことになりそうだ。

 

40000系の増備で徐々に減る可能性があるのは、やはり新101系ということになるのだろう。新101系は西武鉄道では唯一残る3扉車で、1979(昭和54)年〜1984(昭和59)年製造と〝古参車両〟となっている。多摩川線などを走る路線も限られている。かつての西武鉄道の電車を思わせる赤電復活塗装車、黄色レトロ塗装車が残り人気があるものの、徐々に減りつつある。この3月初旬にも1編成が姿を消した。さらなる引退も進みそうな気配だ。

↑今年の3月初旬で姿を消した新101系の1259編成。最後は赤電復活塗装車として走った。写真は多摩湖線を走った当時のもの

 

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設備投資計画:東京都内で進む西武新宿線の立体化工事

これまで立体交差区間が限られていた新宿線で、新たな立体交差事業が進められている。次の区間だ。

 

◆中井駅〜野方駅間の連続立体交差事業
2014(平成26)年1月、工事に着手したもので、野方駅〜中井駅間2.4kmの地下化工事が進められる。この工事により7か所の踏切が廃止される。予定は本年の計画には記されていないが、2027(令和9)年3月末に完成を目指すとされている。

↑工事が進む新宿線の新井薬師駅〜沼袋駅間。東京都と中野区との共同事業として工事が進められる。完成後はこの区間は地下化される

 

◆東村山駅付近連続立体交差事業
新宿線と国分寺線、西武園線が交わる東村山駅。新宿線の中でも乗り換え利用者が多い駅となっている。この東村山駅周辺を連続高架化して5か所の踏切を廃止することを目指し、2015(平成27)年1月に工事が着手された。事業区間は4.5kmで、中でも線路内で都道を含む5本の道路が交差していた「東村山第1号踏切(通称・大踏切)」の存在が立体化を強く押し進められた原因とされる。今年度は、駅構内と一般部の高架橋構築工事と、新宿線の切替工事を行うとされる。予定では2024(令和6)年度に完成の見込みだ。

↑工事が進む東村山駅の東口。駅前名物の「志村けんの像」のちょうど後ろの駅構内で立体交差工事が進められている

 

新宿線では他に東京都により2021(令和3)年11月に、井荻駅〜西武柳沢駅間が高架方式で立体交差事業を進めることが都市計画決定された。さらに2016(平成28)年3月、野方駅〜井荻駅間に関して、東京都から新規に着工を準備する区間として社会資本総合整備計画に位置づけられている。池袋線に比べて、やや立体化事業の遅れが見られた新宿線。これらの工事の進捗により、近代化された新宿線の姿が将来、見られるだろう。

 

【京浜急行電鉄】いよいよ本格化する品川駅の立体化工事

京浜急行電鉄からは5月11日に2022年度「鉄道事業設備投資計画」が発表された。副題は「さらなる安全対策の強化、ユニバーサルで快適な輸送サービスの提供を目指して」とある。投資金額は総額231億円となる。

 

概要のトップでは「1.さらなる安全対策の強化」として(1)連続立体交差事業の推進(品川駅付近・大師線)、(2)踏切安全対策の強化がうたわれる。同社としては神奈川新町駅に隣接する踏切で2019(令和元)年9月に起きた列車脱線事故があっただけに、安全対策を急ぐことを最初に掲げている。

 

新車増備計画:ブルーリボン賞受賞の新1000形がさらに増備される

同計画では新車両の増備に関して触れられていないが、1000形1890番台の増備は暫時進むと思われる。1000形1890番台はフランス語の〝空〟を意味する「le Ciel(ル・シエル)」という愛称が付けられた。座席がロングシートとクロスシートの転換が可能なデュアルシートが採用され、2022(令和4)年3月26日から運行が開始された。

↑今年の春に登場した1000形1890番台。羽田空港第1・第2ターミナル駅〜逗子・葉山駅間を走ることが多くなっている

 

この1000形1890番台が5月26日、鉄道友の会が選定する今年度のブルーリボン賞に輝いたことが発表された。最高水準の機器類を積極採用、同社で初のトイレ装備車で、さらに通勤・通学のみならず観光・イベントなどチャレンジングな姿勢が評価されたとしている。

 

京浜急行では39年前にあたる2000形(すでに全車引退)以来の2回目にあたる授賞車両となる。投資計画書の中では1000形の増備により、界磁チョッパ制御車の1500形の置き換えが掲げられている。解説によると「車種による運転用エネルギーの違い」の比較では新型は1500形に比べて37%減が実現できるという。2021(令和3)年4月1日現在、1500形は計158両が残っているが、徐々に減っていくことになりそうだ。

 

設備投資計画:北品川開かずの踏切の廃止に向けて立体化が進む

京急の沿線では2区間で連続立体交差事業の推進されている。

 

◆品川駅付近(泉岳寺駅〜新馬場駅間)連続立体交差事業

↑品川駅周辺では複数の駅改良工事が進む。将来は一番西側にある京急の線路は高架から地上に下りる予定となっている

 

2020年度から始められた事業で、泉岳寺駅〜新馬場駅間で3か所の踏切道をなくすように工事が進められている。品川駅〜北品川駅間では高架化し、逆に品川駅では、現在の高架線を地上に下げてホームは2面4線化(現在は2面3線で運用)して利便性の高い駅にするとされる。

 

品川駅付近は多くの交通機関が複雑に交差している。地上部にはJR在来線と東海道新幹線が走り、線路に平行し、西口駅前を国道15号が通る。リニア中央新幹線の品川駅開設の工事も行われ、将来は東京メトロ南北線の線路も延びるとされる。そうした交通の要衝に合わせて踏切道が抜ける北品川駅付近は高架にして、品川駅に至るまで高架線からJRの路線と同じく地平部に降ろす工事が進められる。そして駅構内を抜ける東西自由通路をより使いやすくするなどのプランが立てられている。

 

2022年度も同工事は推進し、2029年度の完了を目指すとされる。進む立体交差事業で品川駅がどのように変わっていくのか興味深い。

↑品川駅〜北品川駅間にある品川第一踏切。京浜急行の電車が徐行する区間とあって立体交差化によりスピードアップが実現する

 

◆大師線連続立体交差事業
他にも大師線での立体交差事業が進められている。すでに東門前駅付近と小島新田駅付近の約980mの区間が地下に切り替えられ、4か所の踏切道が廃止された。残る地上部整備工事や、大師橋駅と小島新田駅の駅舎工事がさらに進められる。

 

首都圏大手6社の事業計画・投資計画を見てきたが、大半の私鉄で、連続立体化交差事業といった大掛かりな事業が進められている。次週は、首都圏大手の残り3社と東海地方・近畿地方・九州地方の私鉄各社の今年度の事業計画・投資計画の注目ポイントを見ていきたい。