Vol.115-2

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはAmazonが発売した大画面の「Echo Show 15」。Amazonはこの製品で何を目指すのかを考察する。

↑Echo Show 15(税込2万9980円)。15.6型のフルHDディスプレイを搭載。5MPのカメラを搭載し、家族と共有したい情報やエンターテインメントを鮮やかなディスプレイに表示できる。家族ひとりずつのプロフィールを作成して、ビジュアルIDと音声IDを割り当てれば、自分用のカレンダーなどを自動で表示可能だ

 

Amazon・Google・アップルといった企業が、音声認識を使った「スマートスピーカー」を作っているのは、みなさんもご存知のとおりかと思う。音楽を聞くところからスタートし、今はさまざまな家電や監視カメラと連携し、「スマートホーム」の中核デバイスになろうとしている。

 

そこで重要になってくるのが「アンビエント・コンピューティング」という概念だ。

 

スマートフォンにしろPCにしろ、我々がコンピューターを使っているときには「強い意志」を持って、積極的に利用している。受身な存在である、と言われるスマートフォンにしても、「何かが読みたい」「何かが見たい」という意志を持って操作している。

 

アンビエント・コンピューティングはもう少し自然な使い方を模索した操作のあり方である。たとえば、家にいるとき、いる部屋を指定してスマートスピーカーに命令を与えるのは不自然だ。その部屋に何があり、命令を発した利用者はその部屋で何をしたいのか、ということを理解したうえで働いてくれるのが望ましい。

 

目の前にあるスピーカーの方を向き、近づいて話すのではなく、部屋のどこにいても、「やってほしいこと」を言えば答えてくれる……。そんな形が望ましいだろう。

 

家の中にセンサーや通信機器、家電が自然な形で配置され、それぞれがつながって家全体がコンピューターであるかのように働く様を「アンビエント(環境)・コンピューティング」と呼んでいるのだ。

 

家電連携というと、洗濯機や冷蔵庫をスマホから操作するような話を思い浮かべる。だが、AmazonやGoogleが思い描いているのは、そういう話とはちょっと違う。部屋から人が出たら電気が勝手に消えたり、自分がいる部屋でだけ音楽が流れたり、どの部屋にいても家族とのコミュニケーションが簡単にとれたり、といった姿を目指している。

 

その観点で見れば、壁につけて映像表示や音楽再生、家庭内の掲示板といろいろな機能を持ち、機器の前に立つ人によって表示する情報を変える「Echo Show 15」は、まさにアンビエント・コンピューティングのための機器、と言えるだろう。

 

ただ、Echo Show 15は単に大きいだけでなく、3.5cmもの厚みがある。机の上に置いてテレビ代わりに使うならいいのだが、壁にかけるのはかなり大変だろう。特に、日本の賃貸住宅では設置も難しい。そのため今回Amazonは、国内のメーカーと組んで賃貸向けの設置キットを作り、同時販売している。

 

そこまでして国内にEcho Show 15を持ち込みたかったのは、それだけ、この製品が、Amazonの考えるアンビエント・コンピューティングにとって重要な存在だった、ということなのだろう。

 

では、Echo Show 15がほかのAmazonの製品に比べ、ユニークな点はどこにあるのだろうか? そして、そこで使われているテクノロジーにはどのような意味があるのだろうか? その点は次回解説する。

 

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