〜〜春に発表の鉄道各社2022年度 事業計画③〜〜

 

2週にわたり鉄道各社が発表した「事業計画」「設備投資計画」を見てきた。各社とも今年はアフターコロナを見極め、次の時代に向けての計画案を打ち出しつつある。

 

今回は首都圏大手の3社と、東海・近畿・九州の大手各社の「事業計画」「設備投資計画」を見ていきたい。なお、近畿各社は単年度の計画は発表しないこともあり、中・長期計画の注目ポイントに迫った。

 

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【京成電鉄】3100系の増備と押上線の下り高架化を進める

京成電鉄は5月17日に「2022年度 鉄道事業設備投資計画」を発表した。鉄道事業では総額167億円の設備投資を行うとしている。計画では「(1)安全・安定輸送の追求」と「(2)人と環境に優しい取り組み」の2本柱を掲げている。

 

新車増備計画:成田スカイアクセス用の3100系を増備

今年度の計画に記述はなかったが、昨年の11月4日に発表した「2021年度 鉄道事業設備投資計画」の中で、アクセス特急用の3100形車両の2編成(16両)を導入するとあった。2019(令和元)年10月に登場した3100形は、2021(令和3)年9月までに6編成が導入されていて、さらに追加され8編成となる。

↑近未来的な正面デザインが特長の京成3100形、京成グループの標準車両で、新京成電鉄にも同形の80000形が走る

 

この3100形の増備とともに、駅や車内照明のLED化を図るとしている。LED照明の利用は省エネ効果が期待できるだけに、新車両の導入とともに、既存車両の照明の変更を多くの鉄道会社が行うようになっている。

 

設備投資計画:押上線の高架化もかなり進みつつある

京成押上線では東京都葛飾区内での連続立体交差事業が進められている。現在進められているのが京成立石駅(けいせいたていしえき)付近の高架化で、工事区間は四ツ木駅〜青砥駅間約2.2kmとなる。工事はまず仮の下り線工事を進めるとしている。

↑京成立石駅付近で進む立体交差事業。下りホームの後ろ側で仮の下り線の敷設工事が進む

 

工事完了すると2.2km間にある11か所の踏切が廃止される予定だ。仮の下り線の線路が現在の線路と平行に敷設中で、まずは下り線を移動した上で、次に上り線を移動、現在の上り線の位置から高架化する計画が立てられている。

 

同工事の完了は用地買収が遅れた影響もあり、当初は2022年度中の完成としていたものの、実際の完成は2027年度ごろになると見られている。

↑京成立石駅〜四ツ木駅間では仮の下り線の設置が進む。左の電車が走るところが現在の下り線で、工事の後は右の仮線へ移される

 

立体交差事業の他に計画されているのが「京成本線荒川橋梁架替(かけかえ)工事の推進」だ。京成電鉄の荒川橋梁が架けられたのは1931(昭和6)年3月のこと。地球温暖化のせいなのか、豪雨の際にはかなりの水位上昇も見られる。もしもの時に備えて、現在の架橋位置と堤防を高くして、街と路線を守ろうというのが、橋の架け替えの理由である。

 

国土交通省と京成電鉄では、同橋梁の掛け替えを20年近く前から検討を始めており、今年度の事業計画でも「沿線地域防災への取組みとして、国の荒川下流特定構造物改築事業である京成本線荒川橋梁架替工事について、工事に着手します」としている。完成予定は2037(令和19)年度とされている。

↑京成電鉄の荒川橋梁。荒川と平行する綾瀬川に全長446.99mの橋が架かる。工事では堤防とともに橋梁自体も高い位置に変更される

 

【相模鉄道】新横浜線に乗り入れる21000系の増備が進む

相鉄グループは4月26日に「2022年度 鉄道・バス設備投資計画」を発表。総額170億円のうち、鉄道事業へは164億円の投資が行われる。相模鉄道では2022年度末に羽沢横浜国大駅〜東急東横線日吉駅間を結ぶ新横浜線の開業を控えている。投資計画もこの新線開業に投入される新車の増備が記述されている。

 

新車増備計画:今年度に増備されるのは21000系3編成

新線乗り入れ用車両として増備されるのが相鉄21000系。2018(平成30)年2月に登場した20000系の8両編成版で、東急目黒線への乗り入れ用に新造された。今年度は3編成24両が導入の予定で、21000系は計7編成となる。将来は全9編成となる予定とされている。

 

さらに「既存車両のリニューアルを引き続き実施します」とあり、ますます「YOKOHAMA NAVYBLUE」塗装の車両に乗る機会が増えそうだ。

↑東急目黒線乗り入れ用車両の相模鉄道21000系。「YOKOHAMA NAVYBLUE」と呼ばれる濃いブルーで塗装される

 

設備投資計画:改良工事が進む海老名駅、鶴ケ峰駅も高架化が始まる

東急東横線との相互乗り入れが行われる新横浜線。羽沢横浜国大駅付近の工事はすでに終了していて、あとは東急電鉄側の工事の終了と、開業日を待つのみとなっている。他にも今年度の設備投資計画には鶴ケ峰駅付近の連続立体交差事業と、海老名駅の改良工事が記述された。

 

相鉄本線の鶴ケ峰駅は相鉄新横浜線が分岐する西谷駅(にしやえき)と、相鉄いずみ野線が分岐する二俣川駅(ふたまたがわえき)のちょうど中間にある駅で、新横浜線開業後には、通過する列車本数が増えることが予想されている。計画では「鶴ケ峰駅を含めた上下線約2.1km」が地下化される予定で、横浜市の都市計画事業として進められる。工事は2022年度下半期の着手を目指す。

 

今年度の計画では、さらに相鉄本線の終点、海老名駅の改良工事が進められる予定だ。北口改札を新設、「南口改札新設に向けた準備工事として鉄骨製作、架設や新駅舎構築」などが行われる。現在、海老名駅は他線との乗換えがやや不便となっているが、工事が完了すると乗換えも便利になりそうだ。

↑鶴ケ峰駅を通過する横浜行き12000系。現在同駅は地上駅だが地下化をめざして立体交差事業が始められる予定だ

 

【東京メトロ】3線の車両の増備が進められる

東京地下鉄株式会社(以下「東京メトロ」と略)からは2022(令和4)年3月に「2022年度(第19期)事業計画」が発表された。「さらなる安全・安心の提供と鉄道事業の進化による東京の多様な魅力と価値の向上」とする項目1の中で、「新型車両の導入」と「輸送サービスの改善」「新線建設」に関して触れている。いくつかの興味深い事柄も見られるのでチェックしておきたい。

 

新車増備計画:丸ノ内線の電圧を750Vに昇圧するプランも

まず「新型車両については、丸ノ内線、有楽町線・副都心線及び半蔵門線への導入を推進する」としている。それぞれすでに登場している丸ノ内線2000系、有楽町線・副都心線17000系、半蔵門線18000系が増備される。

↑丸の内線2000系電車。増備に伴い1988(昭和63)年生まれの02系が徐々に引退に。本年度から750V昇圧の検討も

 

興味深いのが銀座線・丸ノ内線の電圧を「標準電圧の750V化へ向けた取組みを推進する」と記述されていることだ。銀座線と丸ノ内線の電車は東京メトロで2線のみとなったサードレール(第三軌条)から電気を取り入れて走る方式を採用している。電圧は現在、直流600V方式だが、それを昇圧させ750Vを目指すとしている。説明には「輸送の安定性を高めるとともに、消費電力の削減等、環境負荷低減も図るため」としている。ちなみに、一般的な路線には直流1500Vが使われている。600Vの電圧は、やはり弱点があるということなのだろう。

↑2021(令和3)年8月から運転開始した半蔵門線18000系。グッドデザイン賞や鉄道友の会ローレル賞を受賞するなど評価も高い

 

設備投資計画:地下鉄内の複数の折り返し施設などの増強が図られる

事業計画の中では「輸送サービスの改善」として地下構内の施設の整備も行うとしている。

 

まずは東西線。列車の遅延防止・混雑緩和のため「飯田橋駅〜九段下駅間の折り返し設備整備」を行うとしている。地下鉄構内には、意外なところに側線や留置線が設けられ、路線を走る列車本数の調整や留置に使われている。飯田橋駅〜九段下駅にも側線が設けられているが、これを折り返し設備として有効活用しようというわけだ。

 

銀座線も列車の遅延防止のために、浅草駅構内の折返し設備整備を推進する、としている。浅草駅のホームの先には折返し用の3本の留置線がある。この折り返し用の留置線を、より使いやすいように整備するようだ。

 

【名古屋鉄道】9500・9100系の増備と立体交差化が進む

名古屋鉄道(名鉄)からは3月29日に「2022年度 名古屋鉄道 設備投資計画」が発表された。鉄道事業181億円、開発事業59億円、その他12億円と金額も細かく記述されている。この計画の中で鉄道事業では「1 安全・安定輸送確保」と「2 駅・車両の快適性・利便性の向上」の2つのポイントがあげられた。

 

新車増備計画:名鉄らしさが際立つ9500系・9100系

新車両の増備に関しては「2 駅・車両の快適性・利便性向上」の中に記された。具体的には「通勤型車両9500系及び9100系の新造」としている。

↑名鉄スカーレットと呼ばれる赤の正面デザインが目立つ9500系。9500系の2両編成版の9100系も新造される予定だ

 

9500系は2019(令和元)年12月に導入された新車両で4両編成だ。一方、9100系は9500系の2両編成版で、2021(令和3)年1月に走り始めている。名鉄の鋼製車両は赤一色で「名鉄スカーレット」として親しまれている。9500系・9100系はステンレス車体だが、正面から運転席入口まで名鉄スカーレットカラーを拡大し、名鉄らしい鮮やかな色合いの電車となっている。

 

9500系はすでに11編成まで導入されたが、2022年度に9500系は12編成目が、9100系は7編成目が導入予定。あわせて鋼製車両との置き換えが進むことになる。

 

設備投資計画:複数路線で進む立体交差、踏切の安全設備にも投資

名鉄は愛知県、岐阜県に営業キロ444.2kmという路線網を持つ。路線距離が長いせいもあり、沿線では現在4か所で高架化工事が進められている。どこで行われているか見ておこう。

 

◆知立駅(ちりゅうえき)付近(名古屋本線・三河線)

高架化されるのは名古屋本線の一ツ木駅〜知立駅〜牛田駅間1.6kmと、三河線の重原駅(しげはらえき)〜知立駅〜三河八橋駅間3.4km。知立駅は現在、地上駅だが、完成後には2階部が名古屋本線に、3階部が三河線のホームとなる。三河線は知立駅部分でスイッチバック方式となっている。計画を見るだけでも、大掛かりな工事になることが予想される。この高架化により計10か所の踏切がなくなる予定だ。

 

◆若林駅付近(三河線)

高架化工事が進む知立駅の東側にあたる三河線の三河八橋駅〜若林駅〜竹村駅間2.2kmでも高架化が進められる予定で、この工事完了後には4か所の踏切がなくなる。

 

◆喜多山駅付近(瀬戸線)

名鉄瀬戸線の喜多山駅前後の高架化工事で、小幡駅〜喜多山駅〜大森・金城学院前駅間1.9km間が高架化される。踏切は8か所なくなる予定だが、特に喜多山駅の東西側で瀬戸線と交差する国道302号(環状2号線)と県道59号線(瀬戸街道)といった交通量の多い幹線の踏切があり、同区間の立体交差化が急がれる理由となっている。

 

◆苅安賀駅(かりやすかえき)付近(尾西線/びさいせん)

尾西線の二子駅(ふたごえき)〜苅安賀駅〜観音寺駅(かんのんじえき)間1.8kmで進む高架化計画で3か所の踏切が消える。

 

こうした立体化とともに今回の事業計画には、踏切障害物検知装置の更新や、遠隔監視システム導入踏切の拡大により、踏切道の保安度向上を図ることが記述された。

↑独自の四角い警報灯が使われる名鉄の踏切。さらなる安全対策として複数の踏切で遠隔監視システムの導入が進められている

 

【近畿日本鉄道】新観光列車導入や駅周辺の開発計画が進む

ここからは近畿地方を拠点とする大手私鉄の事業計画・投資計画に話を進めたい。首都圏とは異なり、近畿地方の大手私鉄からは単年度の計画は発表されていない。中・長期計画のみとなる。

 

まずは私鉄最大の路線網を持つ近畿日本鉄道(以下「近鉄」と略)から。同社からは2021(令和3)年5月14日に「近鉄グループ中期経営計画2024」が発表されている。基本方針は「コロナ禍から回復し、新たな事業展開と飛躍に向かうための経営改革」としている。多彩な業種を持つ近鉄グループのプランということもあり、ここでは鉄道事業の一部に絞って見ていきたい。

 

新車増備計画:注目された新観光列車「あをによし」の導入

「中長期戦略/鉄道」の中で「魅力的な車両開発による観光需要の創出」があげられている。まずは名阪特急「ひのとり」デビュー1周年とし、2021(令和3)年2月で全72両(11編成)の投入が完了した。

↑名阪特急80000系「ひのとり」。6両と8両の編成があり、利用者の増減に合わせた運用が行われている

 

80000系「ひのとり」は、名阪特急用に2020(令和2)年3月14日に運行が始まった。余裕を持たせた座席配置で、密を避けたい時代にフィットしたこともあり、好評な運行を続けている。

 

中長期計画では2022年以降、新たな観光特急の運行を計画中と記されていたが、この最初の列車が観光特急「あをによし」となった。大阪難波駅〜近鉄奈良駅間と、京都駅〜近鉄奈良駅間を往復する。豪華な2人がけツインシートと、3〜4人がけサロンシートといった客席構成がユニークだ。

 

今年の4月29日からの運行だったが、筆者が走る前に近鉄京都線の沿線で写真を撮っていたところ、複数の人から「今日は『あをによし』が走るの?」と聞かれた。さらにみなが一度は「乗ってみたい」と話していたのが印象的だった。

↑新観光列車「あをによし」。日中は京都駅〜近鉄奈良駅間を、朝夕は大阪難波駅〜近鉄奈良駅間を走る。木曜日を除きほぼ毎日運行

 

「あをによし」は運賃+特急料金に加えて特別車両料金210円を払えば乗車できるとあってお得な印象が強い。沿線に住む人が興味を持ち乗ってみたいという列車は、これまであまりなかったように思う。沿線の人が興味を示してくれることは、鉄道会社にとってありがたいことではなかろうか。近鉄が今後、どんな新たな観光列車を導入してくるのか、興味深いところである。

 

設備投資計画:沿線の複数の駅で再開発が進められる

中期計画の「03重点施策の主な取り組み」では「駅周辺再開発の推進」も取り上げられている。5つの駅をあげているが、奈良線の駅が多く河内小阪駅、学園前駅、大和西大寺駅の3駅で再開発を計画している。

 

新観光列車「あをによし」が奈良線と京都線を走り、奈良線の複数の駅で再開発を行われることを見ても、近鉄が奈良線をかなり重視していることがわかる。

↑大和西大寺前駅では駅の南側を中心に土地区画整理事業が進められる。近鉄では「駅と周辺の一体的な再開発を推進」したいとする

 

【阪急・阪神】省エネ電車の導入と梅田エリアの開発

阪急阪神ホールディングスグループからは5月20日に「『長期ビジョン-2040年に向けて』及び中期経営計画の策定について」と題したプランが発表された。阪急電鉄と阪神電気鉄道の2社は阪急阪神ホールディングスグループの子会社にあたるが、両社とも中核企業ということもあり、プランの中でも大きく扱われている。

 

長期ビジョンの戦略1として「関西で圧倒的No.1の沿線の実現」を掲げている。具体的には「梅田エリアのバリューアップ」、「沿線主要エリアの活性化(千里中央地区の再整備構想)」、「鉄道新線等による交通ネットワーク(インフラ)の整備」の3テーマをあげている。

 

新車増備計画:阪急・阪神両社で進む次世代型電車の増備

中期経営計画の中の重点施策1として「収支構造の強靭化への取組」の「都市交通」の括りの中で、「鉄道の有料座席サービスの導入 2024年を目途(もくと)」を記載している。これまで有料座席サービスを行う車両を導入してこなかった同社グループ。近畿圏では近鉄、京阪、南海が有料座席サービスを行う中で、貴重な会社でもあったのだが、やはり収益力を上げるためには、有料座席サービスが必要不可欠と見ているのだろう。

 

また、重点施策4の「SDGs・2050年カーボンニュートラルに向けた対応」にある各事業の今後の主な取組内の「都市交通」に関して「鉄道車両の代替新造(省エネ車両)の推進」を掲げている。

 

両社はかなり前からこうした取組をしていて、たとえば2013(平成25)年から導入した阪急1000系(ほぼ同形の京都線用1300系も含む)は車体のリサイクルが容易なアルミダブルスキン構造で、客室照明や前照灯類などすべてLEDを採用している。

↑阪急電鉄の神戸線・宝塚線を走る1000系。9年ほど前に導入の車両だが、当初から環境に配慮した省エネ車両として造られた

 

一方の阪神電気鉄道の各駅停車用の5700系は「人と地球へのやさしさ」が考えられ新造されている。阪急電鉄の1000系・1300系が取り入れた要素を持つ省エネ車両で、旧型車の置き換え用に最近も増備された。

 

現在では当たり前のように導入される環境にやさしい車両づくりを一足先に進めていたわけで、先見の明があったということなのかもしれない。

 

設備投資計画:グループの北大阪急行の延伸工事も完了へ

阪急阪神ホールディングスグループは大阪メトロ御堂筋線へ乗り入れる北大阪急行線という鉄道会社の運営も行っている。同グループの計画書には「強固な交通ネットワークの構築を目指して」として「北大阪急行線の延伸」が記されている。北大阪急行線は千里中央駅〜箕面萱野駅(みのおかやのえき)間が工事中で、2023年度中には開業する予定としている。

↑北大阪急行線の終点駅・千里中央駅。北大阪急行線(右下)沿線は新大阪や梅田へのアクセスも便利で沿線人口も増えている

 

今年発表された計画では、2023(令和5)年3月開業予定の東海道支線の大阪駅から阪急電鉄の大阪梅田駅にかけて再開発を検討しており、「芝田1丁目計画」と名付けられたプランでは、大阪梅田駅に隣接した大阪新阪急ホテル・阪急ターミナルビルの建替え、阪急三番街の全面改修が計画されている。大阪駅、梅田駅の周辺がさらに大きく変わっていきそうだ。

↑進む東海道支線の大阪駅工事。右手に建つグランフロント大阪の複数のビル群も、阪急が開発事業者として加わり開発された

 

2031(令和13)年春に開業予定の「なにわ筋線」の新線計画にも阪急阪神ホールディングスが参画している。同新線は大阪市内に南北に延びる予定で、JR西日本、南海電気鉄道と共に将来は「阪急十三方面に分岐する路線(なにわ筋連絡線)について、国と連携しながら整備に向けた調査・検討を進めます」(大阪府ほか5社発表「なにわ筋線の整備に向けて」より)としている。線路幅はJR西日本や南海電気鉄道と異なることもあり、乗り入れは難しいが、どのような路線計画となるのか気になるところだ。

 

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【南海電気鉄道】高野線向け8300系の導入も始まる

南海電気鉄道(以下「南海」と略)からは3月31日に「新中期経営計画『共創140計画』について」と題する、今年から2024(令和6)年度にかけての3年間にわたる計画が提案された。今の時代に対応していくには「1社単独では難しく、他者との『共創』がより一層重要になってくる」としている。

 

新車増備計画:8300系の増備さらに新線向け電車の計画も

具体的な車両計画は、同プランに記されていないが、最近の車両の導入を見ると、南海本線で8300系を増備し、さらに高野線へも2019(令和元)年11月からこの8300系6次車の導入を始めた。南海本線に導入された8300系の5次車と比べると15%の省エネ効果があるとされる。この導入により高野線の車歴60年と古強者だった6000系の引退が進められている。

 

共創140計画には、新車のイメージイラストが掲載されていたが、こちらは「なにわ筋線対応を含めた車両戦略の策定(「乗りたい電車づくり」の実現)」と解説されている。まだ車両イメージの段階で、具体的には明らかにされていないが、なんば筋線への乗り入れを考えた電車と推測されている。

↑南海本線を走る8300系。2015(平成27)年に導入以来、増備が進む。高野線用の8300系6次車もすでに登場している

 

設備投資計画:なんば筋線開通を柱に据えて未来を描く

南海が〝共創〟を掲げたのは、やはりなんば筋線の開業が将来に控えていることが大きいのであろう。なにわ筋線は、新大阪駅から大阪駅(新駅)を経て、中之島駅、西本町駅(いずれも仮称)、この先でJR線と南海線が分かれ、南海の新今宮駅に至る路線として計画されている。開業目標は2031(令和13)年で、共創140計画には「なにわ筋線開業に向けて沿線を磨く10年間」と記されている。具体的な戦略として、前述した新車両に加えて「新今宮駅、中百舌鳥駅(なかもずえき)、およびこれらに続く拠点駅の整備」をあげている。JR西日本と阪急阪神ホールディングスとの共同事業だけに、将来を見据えて、他社との調整が欠かせないものとなっている。

↑南海の大阪なんば駅。プランでは「シン・なんばターミナル共創エリア」とし、次世代型集客機能が融合した街区を目指すとする

 

さらに、南海本線・高野線の起点となる南海なんば駅周辺では「エンターテイメントシティ2050Namba」(仮称)という提案がなされている。現在の南海なんば駅の最寄りには、なにわ筋線の南海新難波駅も開業の予定で、この新駅まで含めての「共創エリア」とすることを目指している。

 

なんばは大阪南の繁華街だけに、今後どのように街の発展を目指していくか、調整役としての南海の存在が重要になるのかもしれない。

 

【京阪電気鉄道】プレミアムカーの連結が完了でより快適に

大阪と京都を結ぶ京阪本線などの路線を運営する京阪電気鉄道。同社からは2026年度を目標年次とする長期経営戦略「京阪グループにおける今後の方向性について」が2020(令和2)年11月5日に発表されている。2年前に発表されたものなので、すでに達成された計画もあり、簡単に触れておきたい。

 

新車増備計画:3000系全編成にプレミアムカーの連結が完了した

「各事業の施策(安全安心)」内で示されたのが「『プレミアムカー』サービスの拡大」で、2021(令和3)1月から3000系車両全編成の6号車に「プレミアムカー」を導入するとある。

↑京阪本線を走る3000系。コンフォート・サルーンの愛称を持つ。車体の色が異なる後ろから3両目がプレミアムカー

 

8000系と3000系編成に組み込まれた「プレミアムカー」。料金は乗車した距離で異なるが運賃+400円か500円で乗ることができる。プレミアムカーが目指す〝密集を避けて安心して移動できるサービスの拡充〟はちょうど時代に合ったこともあり好評なようだ。

 

逆に大量輸送時代の申し子だった5扉車の5000系は2021(令和3)年9月に最終運転を迎えた。初代3000系の2階建て車両など、時代を先取りした車両を導入することが多い鉄道会社だけに、次はどのような車両を登場させるか、気になるところだ。

 

設備投資計画:枚方市駅周辺の再開発など注目したいポイントも多い

設備投資計画としては枚方市駅周辺の再開発(2023年度完了予定)や、京橋駅周辺再開発、三条駅周辺再開発(いずれも完了時期は未定)といった駅周辺の再開発に関して触れている。

 

同計画で興味深いのは「デジタル技術を活用した業務効率化」として、橋梁などの鉄道設備の点検にドローンを活用して作業効率を上げるとしていることだ。今年発表された投資計画では、複数の鉄道会社でドローンの活用を検討とあったが、それを2年前に計画していたとはなかなかである。

 

【西日本鉄道】週末、大牟田線への自転車持ち込みが可能に

最後に西日本鉄道(以下「西鉄」と略)が3月25日に発表した「西鉄グループ〝修正〟第15次中期経営計画 2022年度計画」を見ていこう。巻頭に「聖域なき構造改革」を掲げていて、かなり大胆な取組が見て取れる。西鉄グループの計画の中の鉄道事業に限って見ていきたい。

 

新車増備計画:9000形などの増備で大きく変わった西鉄電車の〝顔〟

新車両の増備に関して具体的な記載はないが、「省エネ車両への代替による消費電力の削減」をうたっている。

↑2016年度から走る9000形。全照明にLEDを使用する省エネ電車で、編成を組みやすいように3両編成と2両編成が用意される

 

西鉄の車両の入れ替えのタイミングは早い。特急形車両に8000形という人気車両があったが、導入して30年たつ前に全車が引退、すでに低コストながら高品位な車体を売りにした3000形に置き換えている。

 

通勤形電車の主力となりつつある9000形は2016年度の導入ながら、前照灯や車内照明など照明装置はすべてLED化され、また車体はステンレス車体ながら組立にレーザー溶接を利用、正面のみ普通鋼製を利用している。正面を鋼製としたのはもしもの事故を考慮したもので、また日ごろの保守が容易ということが念頭に置かれている。列車の車両編成数を増減しやすいように、3両編成と2両編成を用意したところも興味深い。

↑地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」。行程によりカフェ、ランチ、ディナーそれぞれが楽しめる

 

車両・列車に関係する取り組みとしては「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」を活用した地域連携活動の推進が提案されている。地域のお祭り、沿線イベント・自治体と連携した企画列車の運行や体験イベントの実施を、この列車を通して行いたいとしている。

 

さらに西鉄では面白い試みも取り入れている。「ポストコロナの観光復活に向けた取り組み」として「サイクルトレインの実施」を進めているのだ。

 

サイクルトレインは、他社でもローカル線などでの取り組みが見られるが、同社は本線にあたる天神大牟田線で導入を図る。繁忙期を除く土曜・日祝日に自転車とともに乗車でき、持ち込み料1回につき300円がかかるが、自転車を折り畳んで輪行袋に入れる必要がなく、そのままの形で乗車できるのがポイントだ。自転車をのせることができる対象駅は、特急列車停車駅のみ、また乗車時には事前予約や、乗車できる扉が限られ、また車内ではベルトで固定するといった制限があるものの、新たな試みとして注目したい。

 

設備投資計画:進む天神大牟田線の立体交差化、さらに新駅も開業予定

天神大牟田線の福岡市内の連続立体交差事業も進められている。天神大牟田線の雑餉隈駅(ざっしょのくまえき)〜下大利駅(しもおおりえき)間で、2022年中には立体交差化が完了の予定。雑餉隈駅と春日原駅(かすがばるえき)の間には2023年度後半には新駅・雑餉隈新駅(仮称)が設けられることになる。

 

鉄道会社の事業計画・設備投資計画を見ると、次の時代へ向けた新たな取り組みが多く見られた。今後、どのような新型車両が登場してくるのか、一方で、旧型車両が消えていくのか、さらに立体交差事業も各地で進む。駅を含めどのような街造りが鉄道事業を通して行われていくのか多彩なプランが網羅される。そこには新しい時代の鉄道と日本の姿もおぼろげながら見えてくるようで、興味深い。