6月8日、アイロボットジャパンは、STEM教育(後述)に基づくプログラミングを基本から学べる小・中学生対象のカリキュラム「ルンバ エンジニアリングコース」を発表。同日に無料公開しました。アイロボットと言えばロボット掃除機の「ルンバ」という印象が強いですよね。今や家庭でもおなじみの「ルンバ」の動きをプログラミングで再現しながら楽しく学ぼうというのが、この「ルンバ エンジニアリングコース」です。

↑プログラミングの教育カリキュラム「ルンバ エンジニアリングコース」を発表する新規事業開発室の竹迫大佑さん

 

STEM教育に注力してきたアイロボット

STEM教育とは、Science(科学)/Technology(技術)/Engineering(工学)/Mathematics(数学)の頭文字から取った言葉で、これら4つの学問を学ぶ教育プランのこと。ロボット掃除機「ルンバ」シリーズで知られるアイロボットは、2009年からSTEMプログラムを社内に導入。日本でも、2018年からボランティア社員によりプログラミングを楽しく学べる小学生対象のワークショップを展開しています。

↑発表会では、アイロボットジャパンの山田 毅執行役員が登壇。同社のSTEM教育への取り組みについて説明した

 

そして2021年2月には、ルンバをモチーフとしたSTEM教育用のプログラミングロボット「Root(ルート) rt1」(実売価格2万9800円・税込 以下同)を、同年6月にはその廉価版の「Root rt0」(2万4800円)をリリースしています。

↑30種以上の機能とセンサーを搭載したプログラミングロボット「Root rt1」

 

↑Rootシリーズは、既に38都道府県の学校で導入され、多機能性や柔軟にレベル変更できる点などを評価する声が上がっている

 

今回無料公開された「ルンバ エンジニアリングコース」は、このRootを使って、基本からプログラミングを学ぶための学習カリキュラムです。同コースは、「Rootを動かそう」や「バンパーセンサーを学ぼう」「Rootでお絵描き」「侵入禁止エリア」「クリーンマップを設計しよう」など、ルンバの動きをRootで学ぶ45個のアクティビティが用意されています。

↑「ルンバ エンジニアリングコース」公式サイト。ジュニアコースのテキストがダウンロードできたり、今後追加予定のレッスン動画を試聴できたりします

 

プログラミングを学ぶ、または教える上で課題となるのが、プログラミングが実生活にどのような形で結びついているのかをイメージしにくいところ。その点、「ルンバ エンジニアリングコース」は、身近で役立っているルンバの動きをイメージしながら、それをRootで再現することで、プログラミングの仕組みを学べます。そのため、子どもたちが「なんでプログラミングを学ぶのか?」をイメージしやすいのです。

 

「もう1回やりたい」小学4年生が楽しく学ぶ様子を公開

オンライン発表会では、Rootで子どもが実際に学ぶ様子が公開されました。大阪府摂津市の別府小学校では、小学4年生が「ルンバ エンジニアリングコース」をベースに授業を行っています。授業では、いきなりプログラミングを教えるのではなく、まずはロボット掃除機「ルンバ」が、どんな動きをしているのかを観察します。

↑Rootを使った授業風景。大阪府摂津市別府小学校での授業風景

 

↑まずはロボット掃除機「ルンバ」が、どんな動きをしているかを観察

 

ルンバの動きを観察した後に、プログラミングロボットのRootで、ルンバの動きを再現していきます。Rootへの指令は、タブレットのアプリを介して行います。Rootの本体前面には、ルンバと同様に、バンパーセンサーが搭載されています。そのため、壁などにぶつかると「後退」して「向きを変えて」また「動き出す」といった、ルンバのような動きをプログラミングができるのです。

↑授業では、4人1組のグループに分かれて、色々と試行錯誤しながらプログラミングを行う

 

↑障害物として積み木を置いて、実際に積み木にぶつかった時に、どのような動きをするのか観察

 

授業後、「ルンバ エンジニアリングコース」をもとにした授業を受けた子どもたちからは、「ロボットの仕組みがちょっとわかったみたいで、楽しかったです」や「ルンバみたいに跳ね返したりするのを、次は成功させるっていう思いで、もう1回やりたい」などの声が挙がっていました。

↑授業後の子どもたちからは、楽しそうな声が聞こえてきた

 

子どもたちに教える側の先生は、「アプリで作ったプログラムをもとに、実物(Root)が動いてくれる。そのなかで思っていたのと違う動きをすることもありますが、それも含めて、子どもたちの学びになっていると感じます」と、語っています。

 

「ルンバ エンジニアリングコース」の3つのポイント

「ルンバ エンジニアリングコース」のポイントは、大きく3つ。1つは「ルンバの動きをRootで再現する」ということ。例えばルンバは「壁にぶつかるとちょっと後ろに下がって向きを変える」という動きをします。これをRootで再現するために、複数の(プログラミングの)ブロックを、組み合わせる必要があります。これにより、ルンバの動きをイメージしながら、プログラミング的思考が学べるのです。

↑Rootを動かすプログラミング画面。動きなどを指示する様々なブロックを組み合わせることで、プログラムを作っていく

 

「ルンバ エンジニアリングコース」の2つ目のポイントは、「アクティビティ(授業)の多さ」。最初は基本的な(プログラミングの)ブロックを学ぶところから始まり、ルンバ搭載のバンパーセンサーの仕組みを理解する、侵入禁止エリアを設定するなど、ルンバの動きを再現しながら、最後はルンバと同じように清掃するミッションまであります。

 

今回公開されたのは、「ルンバ エンジニアリングコース」の初級カリキュラムですが、今後は、より上位のカリキュラムも開設していくそうです。

↑公開された初級カリキュラムだけでも45個のアクティビティが用意されている。今後、上位カリキュラムも公開予定

 

「ルンバ エンジニアリングコース」の3つ目のポイントは、「視覚的にカリキュラムの内容を理解できる動画コンテンツ」だといいます。動画は今後、サイトにアップデートされ、アイロボットの社員が登場して、アクティビティを説明していく内容になる予定です。

 

デモを見ながらプログラミングを体験

「ルンバ エンジニアリングコース」の3つ目のポイントに挙げられた動画コンテンツは、発表された6月8日の段階ではまだ準備段階でした。そこで発表会では、どんな動画コンテンツがアップデートされていくのか、その雰囲気を味わうためのデモを実施。アイロボットジャパンの渡邊 峻さんのデモを見つつ、オンライン発表会に参加した報道関係者がRootのアプリを使いながら、プログラミングを体験しました。

↑オンライン発表会でデモを行った、アイロボットジャパン トレーニングチームの渡邊 峻さん

 

本コースでは、プログラミングアプリ「アイロボットコーディング」を使用。ブラウザ上のアプリを使う方法と、スマートフォン用のアプリを使う方法があり、実際にRootの実機を持っている人は、同アプリで作成したプログラムをBluetoothで送るとプログラム通りにRootが動きます。

↑Rootの本体。障害物に当たった時に反応する本体前面のバンパーセンサーのほか、天面のタッチセンサー、裏面の色を認識するセンサーなど、様々なセンサーが搭載されている

 

↑Rootを動かすためのアプリ「アイロボットコーディング」は、スマートフォン用アプリ版とPC用のブラウザ版が用意されている

 

Rootの実機を持っていなくても、アプリ上にシミュレーターがあるので、プログラミングに応じてRootがどう動くのかがわかります。デモでは、このシミュレーターを使って、Rootがルンバのように「前進→障害物にぶつかる→後退→90度回転→前進」というプログラムを作っていきました。

 

実際に試してみたい人は、こちらのサイトを開いてください。Webアプリが起動して、Rootを動かすことができます。

↑アイロボットの「Education」サイトが開いたら、1番上にある「今すぐプログラミングする」をクリックする

 

↑「アイロボットコーディング」サイトが開くので、右上の横3本線のメニューボタンをクリックし、「Language」を「にほんご」に設定。「New Project」をクリックする

 

プログラミングで障害物を避ける動きを再現

いよいよプログラミング(コーディング)画面へ。サイトの下部に並ぶ青や黄、緑のブロックのひとつひとつがRootへの指示です。これらをドラッグして画面上部に並べていくことでプログラミングを行います。「再生」ボタンをクリックすると、右側のシミュレーターでRootがプログラム通りの動きを始めます。

↑プログラミング画面。下部のブロックをドラッグして画面左に配置していきます

 

少しブロックを並べたら(プログラミングしたら)、「再生」ボタンを押し、画面右側に表示されているRootがどのように動くかをチェック。また少しブロックを並べたらまた再生……というトライ&エラーを繰り返しながらプログラミングしていくと、10分程度でRootが「前進」→「障害物にぶつかる」→「後退」→「回転」→「前進」という一連の動きを再現できました! なるほど、ルンバはこんな風にプログラミングされているのか……と目からウロコが落ちる思い。より多くのブロックを把握して使いこなせば、さらにできることが増えるはず。自分のRootが成長していくさまが想像できて、大人の目から見てもワクワクしますね。

↑「前進」→「障害物にぶつかる」→「後退」→「回転」→「前進」のプログラムが完成。画面右のシミュレーターでは、障害物を配置して動きを確かめた

 

なお、「アイロボットコーディング」アプリは、プログラミングのレベルを3段階で切り替えられます。デモで使ったプログラミングは「レベル1」。「レベル2」では、言葉が書かれたより細かく動きを設定できるブロックを並べていきます。そして「レベル3」では、プログラミングのコードの入力ができるようになっています。

 

より複雑な動きをプログラミングするようになると、解説書を読むよりも、今回のデモのような解説動画を見ながら進めたほうがわかりやすいはず。今後、動画が充実していけば、プログラミングでつまづく子どもも減っていくだろう、とデモを体験しながら感じました。

↑画面左下のタブを「レベル2」に切り替えると、さらに細かい動きをプログラミングできる画面へと即座に切り替わる

 

↑「レベル3」に設定すると、プログラミングのコードを入力する画面に切り替わる

 

アイロボット=STEM教育と呼ばれる日も近い

アイロボットのプログラミングロボットには、「Root」シリーズのほかに、よりルンバに近い「Create 3」(クリエイトスリー)がラインナップされています。Rootが対応しているプログラミング言語「パイソン」だけでなく、「ROS2」にも対応します。また、Rootに内蔵されるバンパーセンサーなどのほか、車輪部分のエンコーダー、加速度センサーやジャイロスコープも内蔵し、充電用のホームベースも付属しています。

↑アメリカで発売されているプログラミングロボット「Create 3」。Rootよりサイズが大きく、多彩なセンサーを内蔵。プログラミング言語の「パイソン」だけでなく、「ROS2」にも対応する

 

↑Create 3も、ブロックを組み合わせることでプログラミングして動かせるため、特に専門的な知識を持たなくても誰でも動かせる

 

同社によれば、「ルンバ エンジニアリングコース」を通じてプログラミングへの理解を深めてもらい、最終的にCreate 3を使った本格的なプログラミングができるような仕組み作りを、開発し続けていきたいとのこと。そこで今回は、「ルンバ エンジニアリングコース」の発表とともに、「Create 3」1台と「Root」6台のセットを無償で貸し出す教育機関向けのパッケージが発表されました。

↑「Create 3」1台と「Root」6台の無償貸し出しパッケージ

 

今回、「ルンバ エンジニアリングコース」をリリースし、プログラミングロボットを充実させたことで、アイロボットはSTEM教育のシステムを提供できる環境を十分に整えてきたと言えるでしょう。これまでは「ロボット掃除機といえばルンバ」だったのが、「STEM教育といえばアイロボット」と呼ばれる日も近いかもしれませんね。一方、教育を通して子どもにアプローチすることで、ルンバに親しみを覚える子どもたちが成長し、購入に至ることも多いはず。「本業」の持続的な成長も狙った面白い取り組みなのは間違いありません。