年間100本映画が観たい! これは、私が毎年お正月に掲げる今年の目標です。2014年には192本観ていましたが、2020年は40本、2021年は37本と年々減ってしまっています。ちなみに2022年は、現時点で20本。う〜ん、もっと観たいのに〜!

 

そんなことを思っていたら『映画を早送りで観る人たち』(稲田豊史・著/光文社・刊)なんて一冊を発見。読み始めると、早送りだけじゃなく、結論を先に観ちゃうとか、作業しながら動画を流しているとか、1対1で映画を観ない人がたくさんいることに驚いてしまいました。いやいや映画を楽しんでいるあの時間が最高なんじゃん! って思った私は時代遅れなのかな……(笑)。

 

早送りで観るようになった3つの背景

『映画を早送りで観る人たち』を読み終わると、人生で一番くらい大きなため息が出てしまいました。微力ながらも作る側の人間として、精魂込めて作ったものをこんなふうに消費されていくのって……と思ったのが正直な感想です。

 

映画やドラマも、ちゃちゃっと作れるわけもなく、企画があり、脚本があり、配役が決められ、衣装やメイク、舞台セットなども整えて、たくさんの時間が使われています。たくさんの人の力が関わってできた2時間を「早送りするなんて!」というのが率直な感想でした。一体どうして、早送りできてしまうのでしょうか?

 

本書を読んでいくと、3つの背景があるそうです。

 

ひとつ目が「作品が多すぎる」こと。サブスクが当たり前になり、映画だけでなくアニメやドラマと観たい作品で溢れているため、話題についていくためにも少しでも多くの作品を見るために早送りしているそうです。

 

2つ目が「コスパあるいはタイパ(タイムパフォーマンス)を求める人が増えた」こと。回り道せず、無駄を省き必要なところだけ知りたい、そんな思いを持っている人が増えているそうです。一時期ファスト映画なんかも話題になりましたが、要点だけ知りたいという人が多いのかもしれませんね。

 

最後が「セリフですべてを説明する映像作品が増えた」こと。これはアニメやドラマでもよく見かけますが、バラエティ番組でもテロップ(字幕)が増えているのにも通じるかもしれません。結論を視聴者に委ねるとか余白を想像するとかそういうシーンがどんどん減っているような気がしました。

 

実際に早送りしている人への聞き取りが興味深い

この本では、実際に早送りして観ている人にヒアリングも実施しています。何名か登場するのですが、個人的にはこの発言が一番衝撃でした。

 

「結果的に1時間もかかんないくらいで観られたんですけど、もし2時間近くもかけちゃってたら、おもしろさよりも『ああ、こんなに時間使っちゃったんだ』みたいな後悔のほうが大きくなると思う」

(『映画を早送りで観る人たち』より引用)

 

じゃあ観なきゃいいじゃん!(笑)

 

と、突っ込んでしまったのですが、この方曰く、話題になったときに「観たよ」って言えるからいいのだとか。私がその場にいたら「そんなの観たって言えないよ」って突っ込んでしまいそう……。

 

一方で、彼らの話を読んでいくと「早送りが悪い」というわけではないと思うようにもなりました。コミュニケーションの仕方、ネットが当たり前の時代で致し方ない部分もたくさんあるように感じたのです。

 

この影響はスポーツにも……好きなチームが負けるのは観たくない

また映画やアニメ、ドラマだけでなくエンタメ業界全体に「早送り」の現象は起こっているのだとか。例えばスポーツ観戦も、近年は若者が減っており、その背景には「応援しているチームが勝つ場面しか見たくない」という心理があるのだとか。

 

「ストレス解消が目的なので、応援しているチームが勝つ場面しか見たくない。でも、スポーツは応援したからといって必ず勝つわけではありませんよね。言ってみれば、“リターンの博打度が高い”。だから、勝った試合のダイジェスト映像だけを見る。もしくは、特定のチームを応援せず、ファインプレーや点が入った“かっこよくて気持ちいい”シーンだけを見る」

(『映画を早送りで観る人たち』より引用)

 

映画だけでなく、スポーツまで……。勝っても、負けても感動するというのは結果だけじゃ心動かないでしょ? と思ったのですが、どうなんでしょうか。この気持ちを理解できる人、ぜひ教えてください!(笑)

 

完全にこれは私の解釈ですが、若者のギャンブル離れとも繋がってくるかもしれませんね。個人的には、予想する楽しさや当たった時の脳汁がたまらないのですが、もうそういう遠回りや無駄を省いて、脳汁だけ出したい人が増えているだと感じました。

 

また、子どものころは「次回予告」を楽しみにアニメやドラマを待つのが当たり前でした。最近では、一気に全話配信されてしまうし「待つ」ことができなくなった時代なのかも? と感じました。

 

今回、少しでもこの本が気になるなぁと思ったら、最初から最後までじっくり時間をかけて読んでみてほしいです。そこから得られる感想は、自分だけのものです。誰かのために読むのではない、自分のためにエンタメを楽しんでみてもらいたいと、おばさん心に感じてしまいました。

 

【書籍紹介】

 

映画を早送りで観る人たち

著者:稲田豊史
発行:光文社

なぜ映画や映像を早送り再生しながら観る人がいるのかー。なんのために? それで作品を味わったといえるのか? 著者の大きな違和感と疑問から始まった取材は、やがてそうせざるを得ない切実さがこの社会を覆っているという事実に突き当たる。一体何がそうした視聴スタイルを生んだのか?いま映像や出版コンテンツはどのように受容されているのか? あまりに巨大すぎる消費社会の実態をあぶり出す意欲作。

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