「組織のイヌ」であることに疲れた人、違和感がある人へ。「組織のネコ」という存在を知っていますか? これは令和時代のサラリーマンに贈る、もっと自分に忠実に、ゴキゲンに働くためのヒント集。楽天創業期からのメンバーにして、同社唯一の兼業自由・勤怠自由な正社員となった仲山進也氏に学ぶ「組織のネコ」トレーニング、略して「ネコトレ」! はじまります。

 

ネコトレVol.00「組織のイヌと、組織のネコ」

 

ニャンザップとの出会い

吾輩はイヌである。

 

名はポチ川アキ男、31歳。趣味は推し活。犬山電機10年目の中堅にして、未だ営業チームの副主任どまり。会社の指示には忠実に従っているので、もっと正当に評価してもらいたいと思ってはいるものの、出世のレールは先輩社員の行列で大渋滞中……。

 

今朝の朝礼で、チームの後輩・ミケ野の営業成績トップが発表された。誰もが予想外の大口顧客を獲得したのだ。ミケ野といえば入社当時から自由すぎる若者で、会議では目上に忖度せず言いたいことを言い、直行や直帰は日常茶飯事、チームの飲み会には滅多に顔を出さない。そのわりにアイツは妙に客ウケが良くて、規律にうるさい課長からも大目に見られている気がする……。

 

一方、マジメに働く副主任のオレは、今日も課長から営業成績の進捗が遅いと詰められた。この違いはいったい何なんだ……。

 

と思っているうちに、もう定時。今日は大学時代の同級生・ネコ山と、久々に一杯ひっかける約束をしていたな。

 

↑「我が輩はイヌである」(ポチ川アキ男)

 

ポチ川「なぁネコ山、お前はいいよな、話題のスタートアップでのびのびやれて」

 

ネコ山「そう? ポチ川だって創業100年に近い会社で勤続10年目なんて大したものなんじゃないの?」

 

ネコ山は、新卒で入った大手企業を3年で辞め、社員20名ほどのスタートアップに転職、現在はロボット開発に携わっている。会社は急成長していて、最近、勢いのあるスタートアップとしてメディアで見かけることが増えている。

 

ポチ川「こちとら会社のために必死に働いてるのにさ、ミケ野みたいな後輩を見てると、なんだか自分が虚しくなってくるよ」

 

ネコ山「自分は自分、人は人でしょ」

 

ポチ川「そんな簡単に割り切れるものじゃないだろう。世の中、不公平だよ」

 

ネコ山「ポチ川は昔から真面目だもんな」

 

そう言うと、ネコ山は小さなメモをポケットから取り出した。

 

ネコ山「ポチ川、ここに行ってみたらどう?」

 

ポチ川「……?」

 

ネコ山「気が向いたらでいいけど。今のポチ川が欲しがっているヒントが見つかるんじゃないかなー」

 

ネコ山がくれたメモには、こう書かれていた。

 

NYAN-ZAP ニャンザップ
〜成果にコミットするネコトレ〜

 

……ネコトレ? 一体なんなんだこれは?

 

組織に忠実なイヌと自分に忠実なネコ

↑成果にコミットするネコトレ、とは一体……?(どこかで聞いたことあるフレーズ)

 

ニャカ山トレーナー(以下、ニャカ山T)「ニャンザップへようこそ。私は専属トレーナーのニャカ山です」

 

ポチ川「友人から紹介されて来ました。犬山電機、営業二課副主任のポチ川アキ男です」

 

ニャカ山T「ネコ山さんからお話は聞いています。そろそろお見えになると思っていました。なるほど、ずいぶんお疲れのようですね」

 

ポチ川「(ネコ山からどんな話が伝わっているんだろう……。ちょっと怪しげだけど、悪い人ではなさそうだ)実は……近ごろちょっと目障りなヤツがいるんです。職場の後輩なのですが、いつも一人で勝手に外回りへ出かけて、朝礼や夕礼にも出ない。そんな不真面目なのに、営業成績トップを獲りました。しかも、上司もアイツには甘いんです。だから真面目にやっている自分がバカバカしくなってきて……」

 

ニャカ山T「ああ、その方はきっと『組織のネコ』ですね」

 

ポチ川「組織のネコ……?! なんですかそれは?」

 

ニャカ山T「組織で働く人には、2つのタイプがあります。ひとつは『組織のイヌ』。社命を第一に考え、組織に忠実な働き方をします。上司から評価されることを重視し、失敗を避けようとしがちです。会社のためであれば、自分を犠牲にしてでも指示命令に従おうとします」

 

ポチ川「それは会社に属している人間として、当然のことなのでは……?」

 

ニャカ山T「もうひとつのタイプが『組織のネコ』です。価値を第一に考え、自分に忠実な働き方をします。顧客から評価されることを重視し、失敗を怖がりません。顧客のためであれば、会社の指示命令をスルーしてでもやろうとします」

 

ポチ川「それはまさにミケ野! あ、その後輩の名前です。アイツは上司にもまったく忖度しないのです! でもそんな彼が評価されるってことは……つまりあなたは『組織のイヌ』よりも『組織のネコ』のほうが優秀だとおっしゃりたいのですか?!」

 

ニャカ山T「まあ落ち着いてください。そういうことではないのです。『イヌがダメで、ネコがよい』のではありません。よいのは『すこやかなイヌ』と『すこやかなネコ』で、ダメなのは『こじらせたイヌ』と『こじらせたネコ』です」

 

ポチ川「『こじらせたイヌ』と『こじらせたネコ』? どういうことですか?!」

 

こじらせたイヌとこじらせたネコ

ニャカ山T「『こじらせたイヌ』は、上からの指示命令であれば何でもそのまま実行します。“指示されたからやる”だけになっていて、やっていることの意味を考えない“思考停止状態”に陥っているパターンです。最悪の場合だと、不正を指示されても、そのとおりにやってしまいかねません。

一方の『こじらせたネコ』は、正当な理由もなく『そういう仕事はやりたくありません』と言います。会社のルールも守りません。しかも、お客さんに価値を提供するという軸がぶれてしまっていて、単なる“わがまま放題好き勝手”にふるまっているパターンです。いわば、ただの不良社員ですね。

というわけで、組織で働く人には次のような4タイプがあります」

ニャカ山T「イヌとネコは、それぞれ得意なことや苦手なことが違います。すこやかなイヌとネコが相互理解をもって、それぞれの強みを活かし合えているのが“よい組織”です」

 

ポチ川「まぁ、おっしゃりたいことはわかります。でも僕はやっぱり、自分勝手なミケ野とはうまくやれる気がしないなぁ……」

 

ニャカ山T「それは、あなたが『こじらせたイヌ』だからでしょうね」

 

ポチ川「えぇ? この僕が『こじらせたイヌ』!? いやいや、ちょっと待ってくださいよ。10年も真面目に働いてきたこの僕がこじらせているだって? あなた、初対面なのに僕の何がわかるっていうんですか?」

 

ニャカ山T「まあ落ち着いてください。イヌがこじらせてしまう原因は、本人よりも組織の側にあることが多くなってきているのです。あなたの会社は創業何年ですか?」

 

ポチ川「昭和元年の創業なので、もうすぐ100年です。それがどうしたと?」

 

ニャカ山T「いま、日本の会社には2種類あります。『令和4年型企業』と『昭和97年型企業』です」

 

ポチ川「昭和97年型……?」

 

ニャカ山T「令和4年を昭和で換算すると、昭和97年になります。つまり『昭和97年型企業』とは、高度経済成長期のやり方を令和の時代になっても変えられていない企業のこと。事業や組織の賞味期限が切れている、または切れかけているのに、なんとか引き延ばそうと騙し騙しの施策を打っているが、明らかに衰退しているので社員が疲弊しているような会社ですね」

 

ポチ川(ゴクリ……まさにうちのことじゃないか……)

 

ニャカ山T「一方の『令和4年型企業』は、いわゆるスタートアップ企業のようなところ。いまの時代背景に合った体制を柔軟に取り入れ、変化を恐れず、世の中に新たな価値を生み出して成長を続けている会社のことです」

 

ポチ川「あの……、昭和97年型の企業で働いていると、どうなりますか?」

 

ニャカ山T「高度経済成長期には、大きな工場をつくって、みんなできちんと役割分担をして、自分の持ち場で言われたとおりにちゃんとやると、事業がどんどん伸びていきました。『組織のネコ』だと、『この作業は何のためにやるんですか?』などと聞いちゃうわけですが、当時は『いいから手を止めないでくれるかな』という世界なわけです。ですので、ネコの人であっても『組織のイヌ』としてふるまうほうが、会社全体のパフォーマンスも上がりやすく、給料も上がっていくので、全員が『組織のイヌ』としてすこやかに働けていた時代だったと言っていいでしょう。

その状態が長く続くうちに、『組織で働くとは、イヌとしてふるまうことである』という考え方が常識化していったのです。すなわち、本来の性質がネコの人でも『イヌの皮をかぶったネコ』として働くほうが幸せになりやすかったと言えます」

 

ポチ川「はぁ、『イヌの皮をかぶったネコ』ですか……」

 

ニャカ山T「しかし、S字曲線を描く成長カーブが『成熟期』、つまり伸びなくなる時期を迎えると、『今までどおりやっているのに結果が出ない』という現象が起こり始め、組織の空気が健やかではなくなっていくわけです」

 

ポチ川「ああ、めちゃめちゃ思い当たるのですが……。ここしばらく、仕事がキツイと感じるようになってきたのはそういうことだったのか……」

 

ニャカ山T「昭和97年型企業では、“会社のため”にがんばったところで事業や組織の賞味期限が切れているわけなので、いわば“腐った食べ物をがんばって配っている”ことになりかねません。組織に忠実であればあるほど、いつしか意欲を失って思考停止し、指示されたことしかやらない『こじらせた社員』になっていきます。

こうして生まれた『こじらせたイヌ』社員は、令和の時代に入社してきた『すこやかなネコ』社員に対して、多大なモヤモヤを感じることになるのです」

 

「自由」ですこやかに働くか、「他由」で悶々と働くか

ポチ川「お先真っ暗な昭和97年型企業で結果が出せない『こじらせたイヌ』……。それってなんだか、絶望的な話ではないですか?」

 

ニャカ山T「いえいえ、そんなことはないですよ、ポチ川さん。同じ組織の中で、『すこやかなイヌ』『すこやかなネコ』として働いている人だって、実はたくさんいます」

 

ポチ川「その『すこやかなネコ』が、うちのような昭和97年型企業で営業トップを獲る、ミケ野だということなのですか?!」

 

ニャカ山T「そうかもしれません」

 

ポチ川「ミケ野が『すこやかなネコ』……。では、どうすれば昭和97年型企業で『こじらせたイヌ』は“すこやか”になれるのでしょうか!?」

 

ニャカ山T「自由に働くことですね。『自由』の意味は、おわかりですか?」

 

ポチ川「それこそ“わがまま放題好き勝手”ではないのですか?」

 

ニャカ山T「違います。ニャンザップでは、自由を『自らに由(よ)る』、すなわち『自分に理由がある』ことと定義しています。『やりたいと思える』とか『やる意味があると感じる』というのが『自由』です。

対義語は『他由(たゆう)』になります。造語ですね。他人から言われたからやっているという『他人に理由がある』状態です」

 

ポチ川「でも、組織に属していると、ほぼすべての仕事は上司から『これやって』と言われて始まりますよね。ということは、仕事はすべて『他由』ではないですか!?」

 

ニャカ山T「そう思いますよね。ただ、上司から言われたあとに自分でいろいろ解釈してみて、『こう考えれば自分でもやりたいと思えるな』とか、『自分でやる意味があると思えるな』と思い至ることができれば、それは『他由』スタートの仕事を『自由』に転換ができた、と言ってよいのです」

 

ポチ川「うーん、なんだかまだしっくりこない……。もし僕が『こじらせたイヌ』だったとして、『すこやかなイヌ』になったら価値観の合わない『ネコ』の後輩とも気持ちよく働けるようになるのでしょうか?」

 

ニャカ山T「その通りです。“こじらせ”が“すこやか”な状態になるとは、言い方を変えれば本来の自分に戻るということ。それを実現するのが『ネコトレ』です」

 

ポチ川「イヌなのに、ネコトレ……? それで本当に効果あるのかな?」

 

ニャカ山T「ふふふ。今日はこの辺にしておきましょう。またのお越しをお待ちしていますよ」

 

今日のネコトレ

Vol.00
【「すこやかなイヌとネコ=本来の自分」を取り戻して、ゴキゲンに働こう!】

・「組織のイヌ」以外に「組織のネコ」という道がある
・「こじらせたイヌ」と「こじらせたネコ」は仕事に問題を抱えやすい
・「他由」ではなく「自由」に働くと、すこやかになれる

 

仲山進也

仲山考材株式会社 代表取締役、楽天グループ株式会社 楽天大学学長。
北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。創業期の楽天に入社後、楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。人にフォーカスした本質的・普遍的な商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。「仕事を遊ぼう」がモットー。

 


『組織のネコという働き方
〜「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント〜』

1760円(翔泳社)
仲山進也氏による、組織の中で自由に働くためのヒント。組織で働く人をイヌ、ネコ、トラ、ライオンの4種類の動物にたとえながら、ネコと、その進化形としてのトラとして、幸せに働きながら成果を上げる方法を説く。

 

取材・構成/小堀真子 イラスト/PAPAO