ルノーがハイブリッドに本気だ。ハイブリッド王国ともいえる日本でこれまで輸入車がフルハイブリッドを販売してこなかったなか、2022年になると、アルカナを市場投入し、続けてルーテシア、キャプチャーと発売。提携関係にある日産の「e-POWER」とも異なる、独自のハイブリッドシステム「E-TECH(Eテック)」とはどんなシステムか、ルノーの勝算とは?

 

【今回紹介するクルマ】

ルノー/ルーテシア

※試乗グレード:E-TECH ハイブリッド

価格:266万9000円〜344万円(税込)

 

ハイブリッド王国日本への挑戦!?

ガソリン価格が高騰している。執筆時点ではピーク時よりやや下がっているが、政府は石油元売り各社に、リッターあたり40円もの補助金を出して価格を抑えている。つまり補助金がなければ、レギュラーでリッター200円を超えているのだ!

 

ここまでガソリンが高くなると、やっぱり燃費のいいクルマに乗りたくなりませんか? EVならガソリンとは無縁だけど、値段が高いし、補助金の予算が尽きそうだし、充電が心配だし、まだちょっと早い気がする。結局、大本命はハイブリッドってことになる。

 

日本はハイブリッド王国だ。国産各メーカーは、こぞってハイブリッド技術を競っている。これほどまでにハイブリッドカーが普及している国はない。実際のところ、ハイブリッドカーの燃費は感動的だ。「ヤリスハイブリッド」なんて、ヘタすりゃ40km/Lを叩き出す。ほとんどスーパーカブじゃないか!

 

対する海外メーカーは、ハイブリッドを飛ばしてEV化を進めている。ハイブリッド技術では日本車に勝てっこないと踏んでの、政治的な思惑もあるだろう。これまで登場した輸入ハイブリッドカーは、どれもこれも中途半端なマイルドハイブリッドで、値段が高いわりに、燃費の向上をほとんど実感できなかった。ハイブリッドカーを買うなら日本車に限る! それはもうクルマ業界における絶対前提。輸入車で低燃費を狙うなら、ディーゼルターボ一択だった。

 

そんななかルノーは、今頃になって、輸入車初のガソリンフルハイブリッドを開発したのだから驚くじゃないか。正直、半信半疑だった。EV化に突き進んでいる欧州のメーカーが、なぜいまさらフルハイブリッドを出したのか? 日本のハイブリッドに敵うとでも思ってるのか? ルノーは狂ったのか!?

 

乗り味では日本製ハイブリッドを上回っている部分もある

ルノーは狂ってなかった。それどころか本気だった。ルノーが「いまさら」開発した「E-TECHハイブリッド」は、燃費で日本製ハイブリッドに迫りつつ、乗り味では日本製ハイブリッドを上回っている部分もあったのだ! これには本当に驚いた。

 

ルノーのハイブリッドは、まずSUVの「アルカナ」に搭載されて登場し、続いて「ルーテシア」にも採用された。アルカナはどこか不思議なプロポーションをしたSUVで、ルックスにはあまり惹かれなかったけれど、ルーテシアはいかにもフランス車的な、スタイリッシュなコンパクトハッチバック。価格も手頃で、ガソリンモデルも十分魅力的だったけれど、ハイブリッドはもっとよかった!

 

ルーテシアのサイズは、トヨタ「アクア」や日産「ノート」とほぼ同じ。つまりルーテシアハイブリッドは、国産ハイブリッド勢の本丸とガチでぶつかるわけで、比較のし甲斐がある。では、ルーテシアハイブリッドの何がいいのか? 一言でいえば、走りのダイレクト感があるってことだ。

↑クーペのようなフォルムを実現

 

たとえばトヨタのハイブリッドシステムは、究極の効率を目指した結果、エンジンとモーターが混然一体となり、無段変速でヌエ的に加減速するので、ダイレクト感が全然ない。ところがルノーのEテックハイブリッドは、エンジン側に4段のギア、モーター側に2段のギアを持ち、それらを組み合わせて変速しつつ走る。ギアチェンジは、100%ダイレクトな「ドッグクラッチ」を使っているので、アクセルと車輪は常に直結されており、トヨタのハイブリッドのような「モワ〜」と滑るフィーリングがない。

↑シフトをBモードに入れると強力な回生ブレーキが発生し、クリーピング速度まで事実上のワンペダルドライブが可能となる

 

効率では、さすがにトヨタのハイブリッドシステムには及ばない。アクアが30km/L近く走るところを、ルーテシアハイブリッドは20km/L強というところだ。加えてルーテシアハイブリッドは、輸入車なのでハイオク指定。純粋にガソリン代を比べれば、アクア対ルーテシアハイブリッドの勝負は、アクアの完勝である。

 

ただ、高速道路の巡航に関しては、この勝負、きわめて僅差になる。高速道路を一定速度で走る場合、通常のガソリンエンジンやディーゼルエンジンでもかなりの低燃費で走れるので、ハイブリッドのアドバンテージは小さくなり、逆にダイレクト感のなさが「運転していてつまらない」と思わせる。

 

ところがE-TECH ハイブリッドは、常に直結なので、普通のガソリン車のようにダイレクトに走ってくれる。そこからアクセルを踏み込むと、パワフルなモーターが加速を強力にアシスト。結果、ガソリン車よりも燃費がいいのはもちろん、アクアにも肉薄。ノートを上回るのだ!

↑メインモーターであるE-モーターとHSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)という2基のエレクトリックモーターと、1.6L 4気筒自然吸気エンジンで構成

 

ノートに積まれる日産のハイブリッドシステム「e-POWER」は、エンジンを発電機役に専念させ、モーターの加速のみで走るから、ダイレクト感は100%。つまり一般道での加減速に関しては、「E-TECH ハイブリッド」よりもさらにダイレクトで楽しいのだが、これまた高速巡行を苦手としている。モーターにギアがないため、高速域ではモーターが過回転気味になり、摩擦抵抗が増大。徐々に元気がなくなり、燃費も悪化してしまう。

 

つまりE-TECH ハイブリッドは、ハイスピードでの高速巡行が多いヨーロッパ向けに開発された、地消地産型ハイブリッドシステムだったのだ!

 

ルーテシアハイブリッドは、一般道では国産ハイブリッドとそれほど遜色ない低燃費で走りつつ、ダイレクト感はトヨタ製ハイブリッドより上。高速巡行では完全にリードする。日本でも、ロングドライブの多いユーザーにはうってつけだ。

 

加えて、見た目もインテリアも、さすがおフランス車。サイズがデカくなる一方の輸入車ながら、ルーテシアの全幅は1725mmで、アクアよりは広いけどノートオーラよりちょっと狭く、取り回しがラクチン。室内の広さもごく普通に実用的だ。これで329万円からというお値段は、国産車よりは高いけど、輸入車としてはかなりお安いのではないだろうか!

↑フランス人が日常使いの心地良さを大切にして作ったという室内空間。いたってシンプルだ

 

↑前席には寒い冬に体を温めてくれるシートヒーター機能付き。ヘッドレストは、後方からの視界に配慮した薄型のデザインを採用

 

SPEC【E-TECH ハイブリッド】●全長×全幅×全高:4075×1725×1470㎜●車両重量:1310㎏●パワーユニット:1597㏄直列4気筒エンジン+電気モーター●エンジン最高出力:91PS/5600rpm●エンジン最大トルク:144Nm/3200rpm●メインモーター最高出力:49PS/1677-6000rpm●メインモーター最大トルク:205N・m/200-1677rpm●サブモーター最高出力:20PS/2865-1万rpm●サブモーター最大トルク:50N・m/200-2865rpm●WLTCモード燃費:25.2㎞/L

 

撮影/茂呂幸正

 

 

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