アシックスは9月15日、温室効果ガス(カーボンフットプリント)排出量をもっとも低く抑えたスニーカー「GEL-LYTE Ⅲ CM 1.95(ゲルライトスリーシーエム1.95)」を開発したことを東京本社で発表しました。温室効果ガス排出量はわずか1.95kg CO2eで、現時点で温室効果ガス排出量が公表されているスニーカーのなかで最少。2023年発売予定のこのスニーカーは、地球だけでなく、足にもとっても優しいスニーカーでした。

 

スポーツに及ぼす影響が大きい気候変動に対するアクション

同社は、2030年に向けた中間経営計画「VISION2030」のなかで、「デジタル」「パーソナル」と並び「サスティナブル」がテーマの一つになっています。そのなかでも力を入れているのが気候変動です。気候変動はスポーツに及ぼす影響が大きく、2040年のスポーツは気候変動により、アスリートは「熱中症による棄権」、子どもたちは「外遊びの制限」、部活動は「酷暑による試合中止」、スポーツ大会のルールは「参加国や試合時間を減らす可能性」が予想されています。

↑アシックス創業哲学の「健全な身体に健全な精神があれかし」を表すブランド・スローガン「Sound Mind, Sound Body」になってもらうためには「健やかな地球環境が必要」となっています

 

「そのために、2050年に向けて温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしていく。また、2030年に向けて私どもの事業所、サプライチェーンでのCO2削減63%を目指しています」(アシックス サスティナビリティ統括部部長 古川美奈子氏)

 

製品ライフサイクルでの削減と実現させるための16の取り組み

2010年に同社は、米マサチューセッツ工科大学との共同研究によってCO2削減の計算方法を発表しており、今回は精度を向上した内容で“材料調達&製造”、“輸送”、“使用”、“廃棄”の4つのフェーズに分けて計算されました。

↑それぞれのフェーズのCO2排出量を設定することで、スニーカー最少のCO2排出量1.95kg CO2eが実現

 

それぞれの平均的な値に対する削減率は、材料調達&製造が約80%、輸送は約75%、使用に関してはほぼ同等、廃棄は約15%増加しているとのこと。

 

「廃棄に関しましては、シューズのリサイクルが広く行われていないという現状があります。より現状を反映した条件設定を行って計算しました。これまでのスニーカーの世界最小は4.3kg、スニーカーに限らずランニングシューズを含めると2.9kgでしたが、結果として一足当たり1.95kg CO2eの排出量となるシューズを実現しました」(アシックス サスティナビリティ統括部 サスティナビリティ部 荒井孝雄氏)

↑今回の削減のキーとなるのが「カーボン・ネガティブ・フォーム」の開発が挙げられ、およそ20%の削減比率を占めているという

 

4つのフェーズのさらに具体的な内容が16の取り組みとなります。リサイクルポリエステルを採用したアッパーニットや中敷きメッシュ、ハトメ部の補強部材及びヒール部分、かかと部のライニング部分、靴ひも。カーボン・ネガティブ・フォームを採用したミッドソールと中敷き。他にも、パーツサイズの最適化とパーツ数の削減、リサイクルTPUで作られた接着剤の採用、リサイクルシューズボックスの採用と紙資材の削減、バイオ燃料を使った輸送プランなど。

 

「削減のキーになる材料がカーボン・ネガティブ・フォームの開発です。複数のバイオベースポリマーを使用しており、バイオベース原料の成長過程で吸収するCO2の量がフォームを作成する際に発生するCO2の量より大きいため、フォーム材としてカーボン・ネガティブを実現しました」(荒井氏)

↑従来の「GEL-LYTE Ⅲ」のパーツ数は65だった

 

↑今回のGEL-LYTE Ⅲ CM 1.95のパーツ数は19。製造工程をシンプルにすることでCO2の排出を削減するとともに、パーツ形状の工夫により材料ロスも削減

 

「今回の展開は第一歩。すべての商品が排出量削減を図ったものにしていくのがゴール。他のパフォーマンスシューズにもこの技術を展開して翌年以降、順次発表したい」(アシックス 代表取締役社長 CEO兼COO 廣田康人氏)

↑発表会に登壇した左から吉川氏、廣田氏、荒井氏

 

気になる価格については、「みなさんに履いていただくことが必要。コスト面での配慮も重要だと考えていますので、最終的な価格は決定していませんが、150ドル程度の価格を予定しています」(廣田氏)

 

サスティナビリティとアシックスの求める品質との両立

今回の開発でもっとも苦労した点は「サスティナビリティとアシックスの求める品質の両立が最大のチャレンジでした」と語る荒井氏。数々のイノベーションのなかで、特に力を入れたのがミッドソール(甲被と靴底の間の中間クッション材)と中敷きに使用しているカーボン・ネガティブ・フォームの開発。排出量をマイナスに保ちながら、履き心地、品質を損なわないフォーム材を完成させたといいます。

↑アシックス スポーツスタイルの人気スニーカー、GEL-LYTE ⅢのデザインをベースにしたGEL-LYTE Ⅲ CM 1.95。つま先外側の2つのボックスデザインも刺繍で再現

 

アッパー(甲被)と中敷きには、環境負荷の低いソリューションダイという技法で染色したリサイクルポリエステルを使用。また、アッパーの補強パーツには、廃棄ロスの少ないテープ形状パーツを必要量のみカットし、ハトメ部の補強部材、およびヒール部分に至るまで、折り返すなどして一つのパーツで効果的に配置されています。これにより、材料の廃棄を最小限に抑えつつ、フィット感やサポート性を確保しました。

↑一本化したテープ形状のパーツがサイドからハトメ、そしてヒール部分までを効果的に補強。そのデザインもGEL-LYTE Ⅲを想起させる

 

またGEL-LYTE Ⅲといえば、シュータンがなく、ベロ部分と足首部を一体化させ、縦に大きく2分割させた「スプリットタン」がもっとも大きな特徴。足入れ感がよく、履いているときもベロがズレる違和感も解消。アイコニックになっている機能がさりげなく採用されています。

↑GEL-LYTE Ⅲのアイコニックでもあるスプリットタンを採用。日本人に多い甲高でも圧迫しないのがうれしい

 

発表会の最後には試し履きの時間もあり、実際に履いてみると、地球に優しいだけでなく足にも優しいことを実感。スプリットタンによる足入れ感の優しさ、アッパーニットも優しく足を包み込んでくれます。ソールもクッション性が高く、反発力も十分でした。

 

温室効果ガス排出量を削減するために機能性やデザイン性を犠牲にすることなく、どちらも両立しているGEL-LYTE Ⅲ CM 1.95。2023年の発売まで少し時間がありますが、どのような演出でデビューを飾るのか、そしてユーザーの反応が今から楽しみです。

 

 

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