ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、商用車登録でありながら乗用車のような快適性を誇る、スペーシアの派生モデル「ベース」を紹介!

※こちらは「GetNavi」 2023年02・03合併特大号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。

 

【今月のGODカー】スズキ/スペーシア ベース

SPEC(XF・2WD)●全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm●車両重量:870kg●パワーユニット:658cc直列3気筒エンジン●最高出力:52PS(38kW)/6500rpm●最大トルク:6.1kg-m(60Nm)/4000rpm●WLTCモード燃費:21.2km/L

139万4800〜166万7600円(税込)

 

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走行性能も申し分ない“大人の秘密基地”

安ド「殿! スズキからスペーシア ベースが発売されました!」

 

永福「軽自動車のバリエーションがどんどん増えておるな」

 

安ド「ですね! これは人気の車中泊需要に応えたモデルです!」

 

永福「たしかに、サイド後方の窓がなくなっておる」

 

安ド「その部分の内側の壁に棚やコンセントが付いています!」

 

永福「さすが車中泊仕様だな」

 

安ド「僕が良いなと思ったのは、黒いホイールです。今回借りた上位グレードのアルミホイールも、下位グレードの鉄チンホイールも、どちらも真っ黒に塗ってあってシブいんです!」

 

永福「同感だ。ホイールが黒いだけでたくましく、クロウトっぽく見える」

 

安ド「スズキの方にレクチャーしてもらったんですが、ラゲッジ&リアシートのアレンジが、覚え切れないくらいたくさんあってオドロキました。それらを全部使うことはないと思いますが、自分の使いやすい形を見つけ出せるのは良いですね!」

 

永福「子どものころ、隣の空き地に基地を作って遊んだが、このクルマにはその感覚があるぞ」

 

安ド「通常の軽とは逆で、電動スライドドアが右側だけなんですが、これは、ドライバーのためのクルマだからということでした。自分だけの遊びグルマとして軽を一台所有できる趣味人には、ピッタリではないでしょうか!」

 

永福「うらやましいな」

 

安ド「スペーシア ベースは商用軽自動車なんですが、乗用軽自動車のスペーシアがベースということで、エブリィより快適性が高いそうです。僕はエブリィに乗ったことないので違いがわかりませんが、そんなに違いましたか?」

 

永福「確実に違う。エブリィやアトレーはキャブオーバータイプゆえ、前輪の真上に座る感覚だが、スペーシア ベースは通常の軽と同じなので、快適性や操縦性は大幅に上回っている。最近、スペース性に優れるキャブオーバー軽をアウトドア仕様に仕立てるのも流行っているが、走行性能は確実にスペーシア ベースが勝っている」

 

安ド「直接のライバルはホンダのN-VANだと思いますが、それと比べてはどうですか?」

 

永福「乗り心地に関しては、スペーシア ベースがだいぶリードしている。N-VANには、純粋な商用モデルもあって、貨物を満載した状態を想定し、サスペンションを固めてあるからだ。しかしスペーシア ベースは、商用車であっても実際にはアウトドア専用に開発された乗用モデル。足まわりは断然しなやかなのだ」

 

安ド「殿はダイハツのタントを所有されていますが、それと比べるとどうでしょう?」

 

永福「タントより100kg近く軽いので、ターボなしでも走りが軽快で驚いた。さすがスズキの軽は軽いな。このクルマ、大人の秘密基地として実に魅力的だぞ」

 

安ド「同感です!」

 

【GOD PARTS 1】フロントフェイス

カスタム風デザインもカラー違いで異なる趣き

通常のスペーシアではなく、スペーシア カスタム系のデザインが採用されています。ただ、「カスタム」はギラギラしていてアクが強い感じですが、この「ベース」は大部分が艶消しブラックで落ち着いた雰囲気です。

 

【GOD PARTS 2】ホイール

純正ブラック塗装で映えるカスタム質感!

クルマのホイールといえばシルバーの印象が強いですが、このスペーシア ベースのホイールは真っ黒。カスタマイズの基本とも言えるホイール塗装が最初からされているので、いきなり玄人っぽい雰囲気を醸し出せます。

 

【GOD PARTS 3】片側パワースライドドア

あえて右側を電動化した理由はドライバーのため?

軽自動車では片側のみ電動スライドドアということが多いですが、ほとんどが左側。日本は歩道が左にあるので当然といえば当然ですが、このクルマは運転席を降りてすぐ開ける右側が電動。“すべてはドライバーのために”というわけです。

 

【GOD PARTS 4】フロントシート

室内を有意義に使うため前後移動を可能に!

スペーシアやスペーシア カスタムのオーナーならすぐに気付くと思いますが、このべースではフロントシートがベンチタイプではなく、左右セパレートタイプになっています。車内を前後方向に移動できる、“秘密基地”らしいつくりです。

 

【GOD PARTS 5】リアシート

小さくて補助的で最低限使えるレベル

非常に小さなリアシートがついています。このクルマは商用車(4ナンバー貨物)なので、貨物スペース優先で設計されているため、リアシートは取って付けたような必要最低限のものになっています。かわいいですが快適性は期待できません。

 

【GOD PARTS 6】リアサイドウインドウ

埋められた窓の内側には便利な収納が!

スペーシアとの外観上の大きな違いが、リア(荷室部分)のサイドウインドウがなくなっていること。ベースではこの内側にポケットやフックが付いていて、荷室活用時には便利な棚や小物を置くスペースとして使うことができます。

 

【GOD PARTS 7】エンブレム

工事現場の足場風模様がイカしてる!

リアの「BASE(ベース)」と車名が書かれたエンブレムをよく見ると、文字周囲のシルバーの部分に、まるで工事現場の足場に使う鉄板のような滑り止めっぽい加工が施されています。まさに仕事場! 細かいところにまでこだわっていますね。

 

【GOD PARTS 8】オーバーヘッドシェルフ

高い天井を最大限生かせる収納スペース

商用バンなどで時々見かける装備ですが、スペーシア ベースにも天井に物入れスペースが設置されています。上位グレードのみの設定ですが、天井のデッドスペースを活用するという、軽自動車のなかでも車高が高いモデルに許された特権ですね。

 

【GOD PARTS 9】助手席

ただ前に倒れるだけじゃないシートの工夫

当然のごとく、助手席も道具として使えます。背もたれを前方に倒せばテーブルに(下)。キズが目立ちにくい加工が施されているのもポイントが高いです。座面を外せば、買い物カゴのように持ち運べるアンダーボックスが出現します(上)。

 

【これぞ感動の細部だ!】マルチボード

使い方に合わせて荷室スペースを変化!

クルマの最大の特徴がボード(板)というのは長い自動車史のなかでも初めてかもしれません(笑)。搭載された1枚のボードを荷室内にある様々な凹みや突起に組み合わせて設置することで、荷室がデスクスペースになったり、フラットスペースを生み出せたりします。荷室の上下・前後の分割なんてこともできて、秘密基地気分で愛車を自由に使い倒せます。

 

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撮影/我妻慶一