世界的なウイスキートレンドのなかでも人気の高い、スコッチウイスキーのシングルモルト。シングルモルトは単一の蒸留所のモルト原酒のみでつくるため、産地の風土的個性をダイレクトに感じられることが魅力。

 

スコッチウイスキーは、イギリスのスコットランドで製造されるウイスキー。モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキーがあり、ウイスキー全消費量の約6割を占めるといわれる王様的存在です。冷涼かつ清流に恵まれたスペイサイド、ピート(泥炭)の聖地アイラなど6大産地があり、各個性を楽しめるシングルモルトが近年特に人気。有名な銘柄には「ザ・グレンリベット」や「シーバスリーガル」などがあります。

 

そのシングルモルトブランドのひとつ「アベラワー」から、ひと際個性的な銘柄が日本での販売を開始しました。その名も「アベラワー アブーナ アルバ」。メディア向けのテイスティングセッションから、特徴と味わいをレポートします。

↑4月24日より販売開始された「アベラワー アブーナ アルバ」。希望小売価格は1万2100円(税込)

 

 

ノンピートモルトを清流の軟水で仕込み厳選した樽で熟成

「アベラワー アブーナ アルバ」は、シングルモルトスコッチウイスキー「アベラワー」の新商品で、本国以外では米国では2019年から展開されており、満を持しての日本上陸となりました。

↑テイスティングセッションの会場は、自由が丘のバー「Annual Rings」。写真右のバーテンダーがオーナーの森田英介さん

 

「アベラワー」は、スコッチウイスキーの聖地と評されるスコットランド・スペイサイド地方のほぼ中心に位置し、1879年にジェームス・フレミングが創業したアベラワー蒸留所で生み出されています。

↑スコットランドのスペイ湖を水源とし、ハイランド地方を通りマレー湾に注ぐスペイ川流域がスペイサイドです(テイスティングセッションにおける資料より)

 

ネーミングは、ゲール語で“せせらぐ小川の河口”という意味。スペイ川の清流に恵まれた、ウイスキーづくりに理想的な環境であり、さらに原材料の大麦は蒸留所から24km以内の範囲で栽培されたものを使用。地元の自然を最大限に生かして、良質なシングルモルトをつくり続けています。

↑140年以上の歴史をもつ蒸留所。水質も独自の特徴があり、スコットランドは基本的に硬水でありながら、アベラワー蒸留所のマザーウォーターは軟水なのだとか

 

また、シェリーとバーボン2種類の熟成樽で熟成したウイスキー原酒を、バランスよく合わせる「ダブルカスクマチュレーション」という独自の製法によって、エレガントさと複雑さが調和した味わいを生み出しています。

↑ブランドの基本方針として、2種類の樽で熟成させたウイスキーを好バランスで合わせる製法を採用しています

 

スコッチといえばモルトをピート(泥炭)で焚いたスモーキーフレーバーをイメージする人が多いと思いますが、「アベラワー」ではあえてピーテッドモルトを使いません。それにより、味わいは甘み豊かでフルーティーかつフローラルに仕上がるのです。

↑日本唯一の「アベラワー」アンバサダーである森田さんの「Annual Rings」には、16年や18年など様々なボトルが置かれています

 

濃密なボディとクリーミーな甘みに驚かされた!

今回日本上陸となった「アベラワー アブーナ アルバ」は、熟成樽にフォーカスした「アブーナ」シリーズの第2弾。「A’BUNADHA(アブーナ)」はゲール語で“起源”を意味し、「ALBA(アルバ)」はゲール語で“スコットランド”、ラテン語で“ホワイトオーク(Quercus Alba)”と2つの意味をもちます。

↑「アベラワー アブーナ」(右)はシェリー樽のみで熟成

 

アブーナ=起源とは、創業者のジェームス・フレミングをはじめ、ウイスキーづくりの先人たちの功績を称え、19世紀の創業当時と同じハンドメイド製法でつくることを表現。そして、アルバ=ホワイトオークということで、厳選したファーストフィルのアメリカンホワイトオーク樽のみで熟成しています。

 

ファーストフィルとは、バーボンやシェリーの熟成樽を初めてスコッチウイスキーの熟成に使用する樽のことですが、スコッチではセカンドフィルやサードフィルを用いることもあり、ファーストフィルの樽のみで熟成させることもかなり贅沢といえます。

 

ということで、いよいよ「アベラワー アブーナ アルバ」をテイスティング。なるほど! 確かにバニラやハチミツのようなバーボン樽由来の甘みが印象的。キャラメルを思わせるクリーミーなタッチの奥にはドライアップルのような果実味もあり、シナモンなどほんのりスパイシーなニュアンスも。

↑クリーミーさをまとった甘みがどっしり。濃密でリッチなおいしさです

 

そして、ストレートで飲むとかなりボディが豊かなのも特徴。これはカスクストレングス(加水をせず樽出しそのままの度数)でボトリングし、冷却濾過をしないノン・チルフィルタリングにしているから。アルコール度数はバッチナンバー毎に異なるとのことですが、60%前後あるのでストレートよりは少々加水して味わったほうがいいかもしれません。

↑この日のものは58.9%。一般的なウイスキーは40〜43%が主流なので、なかなかパワフルです

 

続いて、違いを明確に感じるためにシェリー樽熟成の「アベラワー アブーナ」も試飲させてもらいました。こちらはより妖艶なスパイス感がはっきりしていて、オランジェット(いわゆるオレンジチョコレート菓子)のようなコク深く爽やかな甘みも。

 

↑「アベラワー アブーナ アルバ」がアメリカンデザートなら、こちらはヨーロピアンスイーツ

 

テイスティングセッションのラストは、森田さんのコーディネートによる洋菓子とのペアリングを体験。森田さんによると、甘みが豊かでアルコール度数の高い「アベラワー アブーナ」シリーズには甘いものがよく合うとのこと。

↑「アベラワー」の12年を使ったカヌレのほか、バナナのソテー、チョコレートテリーヌ、生姜のキャロットケーキが用意された。なかには「ミライオヤツ」主宰のパティシエール、井手藍子さん特製のスイーツも

 

洋菓子とのペアリングも秀逸で、甘くボディのしっかりしたウイスキーを少量ずつちびちび楽しむことも好きな筆者にとって、至福の時間となりました。バーボンのような要素をまとった、個性的なシングルモルトスコッチ「アベラワー アブーナ アルバ」。晩酌やパーティー用、またはプレゼントにもいかがでしょうか。