現在開催中の「東京2020オリンピック・パラリンピック」。2020年から一年、未曽有の危機に遭いながら世界中の人々と選手たちが様々な思いを抱えつつ、この日へとたどり着きました。

 

世界各国の選手たちがここ日本の地で熱い競技に挑んでいます。GetNavi webでは、2019年11月から群馬県・前橋市でトレーニングを積んできた南スーダン代表選手「グエム・アブラハム」選手の半生を追ったマンガ連載「Running for peace and love」を掲載しています。

 

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少年時代のアブラハム、そして南スーダン共和国に訪れた新たな転機−−「ナショナル・ユニティ・デイ」。今回は、初めてのスポーツ交流とアスリートとしての自分の才能に向き合う、アブラハム選手の様子を描いていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民族の壁を越えて「平和と結束」を体感したアブラハム選手。ここからは、よりマンガを楽しむための情報をご紹介します。

 

アブラハム選手とナショナル・ユニティ・デイ

JICAウェブサイト『南スーダン・アブラハム選手が自己ベスト更新で新記録達成!:「前橋市、横田真人コーチ…スポーツを通じた絆、互いを思いやる心を記録と共に母国へ」』より転載

 

作中で描かれた通り、アブラハム選手にとってナショナル・ユニティ・デイは大きな意味を持つ出来事です。第1回ナショナル・ユニティ・デイでアブラハム選手は、1500mで4分8秒33という記録で2位、800mにも出場して2分1秒49で1位と好成績を獲得。その成績をもって自身の才能を実感できたことはもちろんですが、それ以上にナショナル・ユニティ・デイ本来の目的である「民族間の交流」をアブラハム選手もその身で体感したことが、彼がアスリートへの道を進む大きな要因となっていくのです。

 

第1回ナショナル・ユニティ・デイ開催に至るまで

写真提供:久野真一/JICA

 

第1回ナショナル・ユニティ・デイ(以下、NUD)は、日本のJICA協力のもと2016年1月に開催に至りましたが、その道は決して楽なものではありませんでした。当時の南スーダンは、IGAD(政府間開発機構)による和平交渉の結果、2015年8月に和平合意が締結されることになりますが、この合意はキール大統領側が一度署名を拒否するなど、まだまだ本当の意味での和平には遠い状況でした。このような混迷が深まる中で、第1回NUDが開催されることになったのです。

 

スーダン共和国時代に、NUDのモデルとなる全国スポーツ大会が存在していましたがそれも数十年前の話。あらためて、ほぼ一から南スーダンの「文化・青年・スポーツ省(現青年・スポーツ省)」とJICAで全国規模の国体開催を目指すことになります。しかし、各地で戦闘が繰り返されている中で、全国から選手団を派遣できるのか、各州は選手たちの渡航費をねん出できるのかなどの様々な課題がありました。

 

作中でも描かれている通り、会期中の競技場の整備など環境を整えるのにも尽力しています。選手の宿泊所として使われた「ロンブール教員養成校訓練所」も、当初は水回りや電気の修理が必要であったり、隣接するグラウンドが雑草に覆われており整備が必要であったりという状況だったようです。会期中、宿泊所では州や民族に関係なく、人と人とのつながりが持てるように、部屋割りや食事場所なども、否応なく話せる空間としています。その取り組みは、現在でも継続しているそうです。

写真提供:久野真一/JICA

 

アブラハム選手がアスリートを自覚する大きな一歩となったNUDは、南スーダンにとっても多くの課題をクリアして現在も続く大事なステップなのです。次回、アスリートとしての才能とも向き合った彼のもとにまた一つ大きなチャンスが舞い降ります。そう、オリンピックです。南スーダンから世界へ、アブラハム選手がどのように羽ばたいていくのかお楽しみに。