数の概念は理解できても、足し算や引き算などの計算をできる能力は別の話。簡単な計算をできる動物は、ごく一部に限られていると言われていましたが、最近、魚は簡単な足し算と引き算ができることが判明しました。

↑シクリッドを過小評価するなかれ

 

今回の実験で使われたのは、アカエイと熱帯魚のシクリッド。これまでの研究で、これらの魚は、例えば「3個」と「4個」の違いを区別するなど、物の数を見分けることがわかっていました。そこでドイツのボン大学の研究チームは、これらの魚が算数の能力も持っているか実験することにしたのです。

 

ここで彼らは、ミツバチの算数の能力を確認するための実験で使われた方法を用いました。まず、実験の対象になる魚に正方形が描かれた絵を見せて、それが青色なら「1を足す」、黄色なら「1を引く」というルールをつくりました。例えば、青色の正方形が4つ描かれた絵を魚に見せます(4+1の意味)。次に正方形が5つ描かれた絵と3つ描かれた絵の2種類を用意して、魚が5つの絵の方に泳いでいったらエサをもらえて、3つの絵に泳いでいったら何ももらえないことになります。これを繰りかえし行い、青は「1を足す」、黄色は「1を引く」ということを覚えさせました。

 

その結果、アカエイもシクリッドも「1を加える足し算」と「1をマイナスする引き算」ができたのです。

 

とはいえ、魚が数の計算を行わずに、「青い絵は、最初の数より大きくなる」とだけ単純に覚えているのでは? これを確認するための実験も行いました。青色の正方形が3つ描かれた絵を見せた後に、正方形が4つ描かれた絵と5つ描かれた絵の2種類を用意するといった具合。それでも魚は、正方形4つの絵の方を選び、きちんと「3+1=4」と計算していることがわかりました。

 

しかも、絵に使われたのは正方形だけでなく、円や三角形など大きさも形も異なる幾何学模様を組み合わせたものです。そのため、魚は物の形を認識しながら、その色を見て計算ルールを把握していたということに。「魚はモノの数と色を同時に認識し、正しく計算した結果エサをもらえたら、その計算ルールを記憶しておかなければなりません。それには複雑な思考能力を必要とします」と同研究者は分析しています。

 

計算のような複雑な認知作業を行うのは、脳の「大脳皮質」と呼ばれる部分。魚にはこの大脳皮質がないため、高度な能力はないと過小評価されてきたようです。今回の実験結果は、そんな見方を覆すかもしれません。

 

【出典】Schluessel, V., Kreuter, N., Gosemann, I.M. et al. Cichlids and stingrays can add and subtract ‘one’ in the number space from one to five. Sci Rep 12, 3894 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-07552-2