資源エネルギー庁によると、日本のエネルギー自給率は12.1%(2019年)で、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも下から2番目と高くありません。この課題解決のため、政府も太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーへの転換を推進しています。

 

今回紹介するのは、民間レベルで再生可能エネルギーの普及を目指す、株式会社チェンジ・ザ・ワールドの取り組みです。わずか約300円で再生可能エネルギー発電所のオーナーになれることが話題となり、現在の登録ユーザー数は2万名を突破するという人気ぶり。新たに発売したサービスに関しては、即日完売が続出するという、ユニークかつ注目のサービスとは!?

 

福島原発事故がきっかけで再生可能エネルギー事業をスタート

山形県酒田市に本社がある同社。「創業のきっかけは2011年の東日本大震災でした」と話すのは、代表取締役の池田友喜さんです。

 

「福島の原発事故をテレビで観て、現実に起こっていることに衝撃を受けました。当時は東京でITソフトウエアの会社を経営していましたが、地球の環境やエネルギーについて深く考えるようになり、次の世代の子どもたちのためにITを活用して何かできないかと思ったのです。そこで2014年に会社を設立し、再生可能エネルギーの事業を始めました」

↑「子どもや孫たちに誇れる仕事がしたい」と話す代表取締役の池田友喜さん

 

核となる事業の1つが、スマホで買える再生可能エネルギー発電所「ワットストア」というサービス。太陽光発電所をはじめとする、再生可能エネルギー発電所の個人向け小口販売です。

 

社会貢献参加への敷居を下げるサービス

「ワットストア」は、いつでもどこでも、スマホやパソコンで簡単に好きな場所の再生可能エネルギー発電所を1ワット単位で購入できます。1ワットの価格は発電所によって異なりますが、1ワット約300円から。購入後は月に1度、売電収入が分配されます。ざっくり言うと“再エネ投資”ですが、単なる金融商品ではないと池田さん。

 

「売電した収益はお金で戻すのではなく、投資したワット数に応じて新たに発電所を付与していきます。購入後はそのまま放置していても、所有する発電所が少しずつ増えていきます。苗木を植えたら木が自然に育っていくようなイメージです。もちろん、好きなタイミングで発電所を売却することも可能です。

↑「ワットストア」のアプリトップ画面。スマホがあれば簡単に再生可能エネルギー発電所が買える

 

本サービスは「社会貢献」が目的ではありますが、一般の人々に訴求するには、まず経済的なリターンが必要だと考えました。参加する動機はどんな形であろうと、環境に対する貢献の仕組みが提供できれば、結果的には再生可能エネルギー発電所が増えていくことに変わりはないと考えています。大きな資金を用意できなくても約300円ぐらいから購入できますし、スマホやパソコンがあれば24時間、どこにいても取引ができ、発電所の発電状況なども簡単に確認できます。災害用の保険も加入しているのでリスクも少ない。できるだけ敷居を下げて、多くの人が参加できるようにしているのです。

↑アプリ上から、発電所の購入や発電量の確認などが簡単に行える

 

購入すると自分が買った発電所の発電量が気になりますよね。それがきっかけで、環境に対する意識がより高まるのではないかと期待しています。当初の目的は経済的リターンだったとしても、知らずしらずのうちに環境課題が気になり始める……。それが大切だと考えました」

 

「耕作放棄地」問題にも貢献

要となる太陽光発電所は毎月5〜6基ずつ増えています。2021年1月からは、新たに風力発電所の販売もスタートしました。現在、「ワットストア」での発電所販売数は111基(2022年5月末現在)。これにより、約1870世帯分の電力をまかなえるそうです。

 

「太陽光発電所のうち、約6割がソーラーシェアリングです。これは、農地の上に太陽光パネルを設置して、農業と太陽光発電事業を同時に行う仕組みのこと。営農型太陽光発電ともいいますが、2013年に農林水産省が農地の一時転用を許可したことで可能になりました。日本には、農業が放棄された耕作放棄地が約42万ヘクタールもあります(2015年調査)。放置された土地は害虫の住処になるほか、農地として再利用できなくなる可能性も。ソーラーシェアリングは、日本が抱えるこれらの問題にも効果的です。

↑ソーラーシェアリング。太陽光パネルの下では農作物を育てている

 

農作業は、弊社の子会社である株式会社ララキノコが実施。これまで100種類ほどの農作物を試験的に栽培してきました。現在は、さつまいも、みょうがなどを主に栽培。収穫した作物は道の駅で販売したり、『ワットストア』のユーザーにプレゼントしたりしています。また最近では、CO2吸収能力の高い新品種のあしたばに注目し、東京大学と共同研究を行っています」

↑ソーラーシェアリングによって栽培された野菜

 

ただ、ソーラーシェアリングには課題も多いと池田さん。最大の課題は土地の確保だそうで、ソーラーシェアリングに対する世の中の認知・理解がまだまだ進まないのが実情だそう。

 

「ただ、近年は国や自治体がソーラーシェアリングを推奨していますし、農地法など法的な部分が今後是正されれば、この課題は改善されていくと思います」

 

経済的リターンゼロの「グリーンワット」も大反響

同社は「ワットストア」内で「グリーンワット」という商品の販売を昨年から開始。これが予想以上の結果になっているそうです。

 

「『グリーンワット』は1口500円で太陽光発電所を購入できますが、経済的リターンはゼロ。自分の持っている発電所がどのくらいCO2削減しているかなど、環境に対しての貢献度を『リーフ』という名称のポイントで可視化します。昨年7月に約2000口限定販売したところ、約14時間で完売。その後、不定期で計4回限定販売していますが、現在は全て完売しています。予想を上回る反響でした。

 

このサービスはさまざまな可能性があると考えています。例えば、製造や輸送時のCO2排出が課題と言われているアパレル業界なら、服を『グリーンワット』込みの料金で販売すれば、お客さんは自動的に『環境に配慮したお客さん』になります。一方、アパレルメーカーは、客が購入したグリーンワットにより、『環境価値(CO2削減量)』を活用してカーボンオフセットが実現できるというわけです。

 

実際、サッカーJ2のモンテディオ山形の試合で、法人(サッカーチーム)のカーボンオフセットを実現しました。“カーボンオフセットマッチ”という企画を掲げ、グリーンワット付きのチケットや選手の限定ポストカードを販売したのです。結果、1000人以上のサポーターの方が購入。選手を応援したいという気持ちと環境保護を結びつけることができたこの取り組みは、とても意義があったと感じています」

↑2022年5月8日に開催された「カーボンオフセットマッチ」。サポーターはさまざまな環境アクションに参加できた。年内にあと3試合開催予定。画像提供:モンテディオ山形

 

「カーボンオフセットマッチを通して、発電所を購入するという行為にハードルの高さを感じる人でも、もっと身近な部分であれば、気軽に環境アクションに参加してもらえることが分かりました。今後、さらに多くの人が環境アクションに参加できるように、さまざまな企業とコラボレーションをするなど面白い企画を展開していきたい。私たち一人ひとりの力は小さいかもしれませんが、多くの人たちが集まることで世界をも変えることができます。それを可能にするビジネスモデルを創り出し、美しい地球を子どもたちに残していきたいです」

 

“グリーンエネルギーの発展にみんなが参加できる社会を創る”その目的を達成するために、同社のチャレンジは続きます。