Microsoftの「ペイント」だけを使ってイラストを完成させるアーティストがPat Hinesさん。Hinesさんは10年にわたってペイントだけを使い続けており、自身の描いた絵をまとめたイラスト集「Camp Redblood and The Essential Revenge」も発表しています。そんなHinesさんがゼロからイラストを完成させる様子を映し出しつつ、「なぜペイントにこだわるのか?」を語るムービーが公開されています。

How an MS Paint artist made this picture - YouTube

これが今回描画されるイラストの完成図。ムービーでは、以下のイラストがどのように完成していくのかという全行程が公開されていきます。

ということで画面は白紙の状態からスタート。写真の男性がHinesさん。Hinesさんはボストン生まれのボストン育ちで、現在もボストンで活躍しています。

画面サイズを指定して、作業開始。

Hinesさんはボストンの中でもウェスト・ロックスベリーという地域の出身。出身について語られつつも、下書きがスタートしました。

大学生の時に老人ホームで夜遅くまで働いていたというHinesさん。当時はYouTubeもFacebookもなく、マインスイーパーやソリティアといったゲームも好きでなかったというHinesさんは、ペイントでの落書きを開始。そして「ゆっくりと狂っていった」とのこと。

最初はただの落書きだったそうですが、月日と共に徐々に技術を身につけていき、数年後には「作品」と呼べるまでのイラストを完成できるまでになりました。

モノクロイラストや……

カラーイラストなど。紙とペンでは常に誰かのスタイルを模倣してしまっていたHinesさんですが、ペイントを使うことで独特のスタイルがいつしか身についていることに気づいたそうです。

そうこう語られているうちにざっくりとした構図ができてきました。この後、Photoshopであればレイヤーを重ねていくところですが、もちろんペイントにレイヤー機能はないので、下書きを消さず、いったん保存した上で、直接清書を重ねていくことになります。

ペンツールで書くとどうしても線がガタガタしてしまうため、清書ではラインツールを使用。

直線のラインツールだけでなく、曲線ツールや……


自由選択なども使われています。

スタイラスペンを使って他のお絵かきソフトで描画しようともしたそうですが、結局マウスでの描画を行っている、とのこと。マウス&ラインツールでイラストを描くことでしか、パリッとした独特の味がでなかったそうです。

一方で、ブロック感をなくすべく、ピクセルをできるだけ消そうともしているそうです。また、「ピクセル感をなくしたい」という思いから、イラストを描き出した当初はスプレーツールを多用していたとのこと。スプレーツールだと大量のピクセルがランダムに吹き出るためです。

のちのちスプレーツールではなくラインツールによってイラストを描くという方法に移行したHinesさんですが、今でも壁にスプレーアートが書かれているイラストを描く時には、スプレーツールが活躍していると語りました。

作業画面では、ざっくりと人物の輪郭がとられ……

下書きを消しゴムで消しつつ、清書が行われていくという方法が取られています。

自身のイラストは20世紀の画家イヴァン・ビリビンのイラストと似通っていると語るHinesさん。ビリビンの絵もべた塗りで、かつディテールが細かく仕上げられています。

また、ノーマン・ロックウェルや……

マックスフィールド・パリッシュ

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のポスターを描いたドリュー・ストラザンなどが好きなアーティストとして挙げられています。

かなりイラストが進んできました。

「ペイント」を使ったイラスト描画に最も強い影響を与えたというのが、「タンタンの冒険」シリーズの作者であるエルジェ。無意識のうちに、Hinesさんは自身のイラストをエルジェ作品のように仕上げようとしていたとのこと。

くっきりした線で、影を使わずに描画するエルジェのような手法は「Ligne claire」と呼ばれます。

ペイントツールは、このような描画スタイルに非常に向いていたわけです。

線画が完成。

着色作業にうつります。

基本的に着色は、塗りつぶしツールで行われます。

余分な線は消しゴムツールで消し……

階調なども消しゴムツールで表現していきます。

階調の境目をクローズアップすると、しっかりドットが残っていました。これが「ペイントで描いた」という証拠になるとHinesさんは語っています。

着色作業の際にはたくさんの色を用いますが、常に「光源はどこか?」ということに意識を払っているとも語られていました。

「影」を表現するためには、同じ色合いの少し暗いカラーを重ねていく、という作業を繰り返します。単純な作業をひたすら繰り返していくために、ペイントでの描画はHinesさんにとって「瞑想のような」作業でもあるそうです。

オンライン上で人々に「Photoshopでも同じことができるよ」と勧められることもあるそうですが、Hinesさんはペイントでの描画を愛していて、他のソフトウェアを使用することはないだろうと語られました。