今では世界的な大企業となったAmazonですが、その初期に創業者のジェフ・ベゾス氏はあるルールを制定しました。そのルールというのは、「社内のすべてのチームは2枚のピザを食べるのにピッタリなサイズでなければいけない」というものです。この「ピザ2枚ルール」が無限に成長していくAmazonの躍進を支えたとして、The Guardianが紹介しています。

The two-pizza rule and the secret of Amazon's success | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2018/apr/24/the-two-pizza-rule-and-the-secret-of-amazons-success

「ピザ2枚ルール」は、効率性とスケーラビリティを重視する中で生まれたルールです。効率性という面では、小規模なチームは「タイムマネジメントのしやすさ」から無駄な時間を短縮し、チーム内のメンバーが常に最新の情報を得られるようにすることができます。しかし、Amazonにとって本当に重要な要素は後者の「スケーラビリティ」にこそあるそうです。

ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツで働くアナリストのベネディクト・エバンズさんは、小規模チームによって進められるAmazonの「ピザ2枚ルール」の恩恵ついて、「あなたは新しい製品ラインを追加する際、新しい内部構造を構築したり直接レポートを提出したりする必要はありません。ましてや、各部署とミーティングを行ったり、(新製品ラインの)プロジェクトを起こしたり、複雑な事業計画を立案したり、新しい電子商取引プラットフォームを準備したりする必要もありません」「また、イタリアで新しい製品ラインを作る場合、わざわざシアトル(Amazonの本拠地)へ飛ぶ必要も、何度もミーティングを行い社内で協力者を募る必要もないし、誰かを説得するためにロードマップを作成する必要すらありません」と語っています。


Amazonがモノを売る電子商取引企業であることは明らかですが、同時に「新しいモノを売る電子商取引企業を作り出すこと」にも長けています。Amazonは「新しいモノを売る電子商取引企業を作り出す」アプローチを「フライホイール」と呼んでいます。

このフライホイールの例として最も適しているのが「AWS」の誕生と成長です。AWSはAmazonや他の企業にクラウドコンピューティングサービスを提供する企業およびサービスです。AWSではAmazonと同じように、ベゾスCEOが指定した全てのチームは、構造化された体系的な方法だけを用いて互いに協力し合わなければいけません。例えば広告チームが靴の販売に関するデータを必要としている場合、分析部門にメールを送信して「リソースの最適な利用方法」を尋ねることはできません。代わりに、データ分析用のダッシュボードから自分でデータを入手することが可能となっており、そのダッシュボードが存在しない場合は、ダッシュボードを作成する必要があります。ピザ2枚ルールによる恩恵の1つと言えるこのアプローチにより、さまざまなサービスが成長し、巨大化していったのがAmazonという企業なわけです。

Amazonが組織内でのリソースを共有するために生み出した技術は、そのまま他の企業向けに提供されることもあります。そんなサービスのひとつがAWSであり、今ではAmazonの総収入の10%を占めるほどに成長しています。Amazonが過去最高の最終利益・売上高を記録した2017年第4四半期決算では、AWSは前年比44.6%増の51億1000万ドル(約5590億円)という収益を記録しています。なお、Amazonは財政的にトップレベルの部門として、「アメリカとカナダ」「インターナショナル」「AWS」の3つを挙げており、いかにAWSがAmazon全体を支える巨大なサービスに成長したかがよくわかります。

Amazonが過去最高の最終利益・売上高を記録、2017年第4四半期決算発表 - GIGAZINE

世界中のAmazonの売上と並べられるほど収益が拡大しているAWSは、北米のインターネットトラフィックの約3分の1を占めるNetflixがいち顧客にすぎないほど多くの顧客を抱えています。大容量のデータを効率良くAWSのクラウドサービスに移動させるため、Amazonは専用トラックの「Snowmobile(スノーモービル)」まで開発しており、AWSに大量のデータをアップロードしたいという企業には、このスノーモービルを派遣することもあるそうです。

エクサバイト級のデータをAWSに効率よく転送させる「AWS Snowmobile」 - GIGAZINE

AWSとは異なる特徴を持つ2つ目のフライホイールが「Amazonマーケットプレイス」です。これは2000年にスタートしたサービスで、サードパーティーの売り手が自分の商品をAmazon上で販売できるというもの。このサービスは何年も前から拡張されており、「存在するもの全てを買うために行くインターネット上の目的地」を目指すAmazonにとって、大きな力となっているのは明らか。また、Amazonマーケットプレイスの利点は、「従業員をひとりも増やすことなくAmazonを拡張できる点」であるとThe Guardianは記しており、ある意味では「ピザ2枚ルールよりも優れている」と述べています。

Amazonは、マーケットプレイスから得る収入は会社の総収入の約20%と報告しています。これは、サードパーティーの売り手からAmazonに支払われた手数料を元に単純計算した値であり、「いまやマーケットプレイスで売れる商品の数は、Amazon全体で売れる商品数の半数を占めるまでになっています」とエバンズさんは指摘しています。

AIが商品の価格を上下動させているAmazonマーケットの世界では株式市場のように価格が変動している - GIGAZINE

そしてAmazonが2014年以来力を入れている第3のフライホイールが、人工知能(AI)を事業に組み込むことです。Amazonはそれ以前もAI業界の最先端を取り入れており、ニューラルネットワークを用いた推奨アルゴリズムなどを自社サービスに採用していました。しかし、AmazonがスマートスピーカーのAmazon EchoおよびAI音声認識アシスタントのAlexaを開発するようになってから、AIとAmazonの交わりはより深くなっていきます。

AIにとっての規模の経済は独特です。データには価値があり、Amazon Echoを使用する人が増えるほどAI学習用の音声サンプルが増え、AlexaおよびAmazon Echoの品質は向上します。また、Alexaを支える機械学習技術は非常に汎用性が高いため、Amazon Echoの利用者が増えるにつれて、Amazonのあらゆるビジネスが進歩し、それに伴い効率も上がり、新しい分野の開拓や、さらなる研究手段の提案が行えるようにもなる、とThe Guardian。

Amazonの音声認識「Alexa」は世界のIoTを席巻し「スマートフォンの次」のプラットフォームの覇者となりつつある - GIGAZINE

もちろん永遠に続くものなどなく、Amazonにも弱点は存在します。例えばピザ2枚ルールは無限に拡張可能な企業を構築するには優れた戦略ですが、ストレスのない快適な環境を構築するには不向きな戦略で、これを象徴するかのようにAmazonは長い間倉庫労働者の扱いで批判を受けています。

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Photo by Alexandra Gorn