アメリカのカリフォルニア州・サンフランシスコの消防署では木製のはしごが使われています。木製のはしごは消防署所属の職人による手作業で作られていて、古いものでは100年にわたって使われているそうです。一見すると火事の現場で木製のはしごを使うと燃えてしまうのではないかと不安になりますが、長く使われているのには、それだけの理由がありました。

Inside San Franciso's Fire Department, Where Ladders Are Made by Hand
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サンフランシスコの消防署で使われる木のはしごは全てサンフランシスコの消防署内の職人が作り上げたもの。組み立てや修理もすべて自分たちで行います。消防用のはしごに使われる木材は高級品で、アメリカ西海岸のベイマツが使われています。木がゆっくりと生長し、年輪の密度が高くなるように、山の東斜面に生えていたものを使うとのこと。ブラウン氏によると1インチ(約2.5cm)あたり9層の年輪がなければならないそうです。また、年輪の傾きやその形もはしごを作る上で重要になるとのこと。

これらの厳しい条件をクリアした木材はまず、倉庫の中で湿度約13%というサンフランシスコの気候に慣れさせられます。職人は木材の両端に電極を打ち込み、電流を流すことで木材がはしごの素材として気候に十分順応したかどうかを測定します。

木材が十分気候に順応したら、さっそく加工してはしごを作ります。加工した木材は機械で測定しながら、はしごのどのパーツになるかがすべて決定され、亜麻仁油を2回塗った後、レジャーボートに使うような強力なニスを2〜3回塗ります。一見すると単純な作業であるように思われますが、厳しい条件の中ですぐに傷んでしまわないよう、木の構造を踏まえた上でゆがみなく加工して組み立て、均等にニスを塗る仕事はまさに職人技。

消防用のはしごは、分解しても再度組み立てられるように設計されています。ブラウン氏は「私たちはサンフランシスコでもずいぶん環境に優しい団体です。私たちは木材を無駄にしたくないのです」と語っています。木製のはしごは全部で13種類作られ、高いもので50フィート(約15メートル)もあるとのことですが、万が一壊れてしまった場合は、組み立て直すことで、異なる高さのはしごに加工しなおすことも可能となっています。

サンフランシスコの消防署がアルミ合金のはしごではなく木製のはしごを使う理由は、木製のはしごが、一般的に使われているアルミ合金製のはしごよりも弾力性と耐久性に優れているからです。サンフランシスコ市の消防隊の管理責任者であるマイク・ブラウン氏によると、アルミ合金のはしごの寿命はせいぜい7〜8年ほどとのことですが、木製のはしごは手直しをしながらずっと長く使い続けることが可能です。


以下の画像で左に写っているのが比較的新しいはしごで、1〜2回ほど修理されているとのこと。右にあるものはおよそ60年ほど使われているはしごで、5〜6回手直ししているとのこと。右のはしごはニスの中に焦げた跡も残っています。ニスを何度も塗り重ねているため、新しいはしごよりも古いはしごの方が深い色合いになっています。

また、サンフランシスコにはトロリーバスが走っているため、町中に電線がたくさん張り巡らされています。そのため、導電性の高い金属製のはしごよりも木製のはしごを好んで使っているとのことです。

ただし、木製の消防用はしごはアルミ合金製のものに比べて非常に高価であるため、他の町の消防署ではなかなか使われることがないそうです。ブラウン氏は「サンフランシスコがあるカリフォルニア州には、はしごを作っているところがたった2つしかありません。サンフランシスコの消防署はそのうちの1つです。私たちは自分たちが使うはしごは自分たちで作っているだけで、自分たちが持っているはしごをメンテナンスしていくだけで精いっぱいです」と語っています。

28年間サンフランシスコの消防署で整備職人として働き、2017年に引退したジェリー・リー氏は「引退した後で、自分の作ったはしごが『美しい』と言われて本当に驚きました。私にとってはしごとは単に機能的なものなのです」とコメントしています。なお、ジェリー・リー氏は消防用はしご以外にも、消防車についている鐘の上に鎮座しているワシの彫刻も手がけていて、「はしごに限らず、サンフランシスコの消防署で使うもののほとんど全てを自分たちで作ったり修理したりしていました」と語っています。

Photo by Thomas Hawk