学生にとって夏休みは1年で最も長い休みとなりますが、「大量の宿題」という避けては通れない強敵が待ち構えている期間でもあります。そんな夏休みの宿題は70%が計画倒れに終わることが明らかになっており、夏休み後半に嫌々課題を片付けるという記憶が鮮明に残っているという大人も多いはず。しかし、学習において重要なことは学生が「自主的に学ぶこと」であることはさまざまな研究結果から明らかになっています。そんな「学生が自分から学びたくなるような宿題」を生徒に出すために教育者が知っておくべきことをThe Chronicle of Higher Educationがまとめています。

Will My Students Actually Want to Do This Assignment? - The Chronicle of Higher Education
https://www.chronicle.com/article/Will-My-Students-Actually-Want/244247

The Chronicle of Higher Educationによると、学習に対するモチベーションを構成する重要な要素は3つあり、それは以下の通りです。

◆価値
学生が学習目標をどのくらい評価しており、どのくらい追求しようとしているかを「価値」としています。学生が目標に価値を見いだせば、そのための学習のモチベーションが高まるとしています。

◆期待
「期待」は、学生が目標を達成することを期待できるかどうかという点です。具体的には、教師が生徒に与えた課題が「生徒を目標に導くことができるステップとなっているか?」そして、「学生は段階的に課題をクリアすることで、目標を達成することができるか?」という点が重要となります。与えられた課題を前にした学生が「これなら目標を達成できるかも」と思えば思うほど、与えられた課題に挑む際のモチベーションが高くなるわけです。

◆環境
学生は自身の学習「環境」がよく支援されていると感じると、目標を追求するための学習意欲が高まる傾向があるとのことです。


上記の3つの要素がすべて一緒に作用して学生の持つ「学習へのモチベーション」に影響を与えます。例えば、既に社会人として働く男性が「プロ野球選手になる」という高い目標を設定したとします。目標に高い価値を見いだしたとしても、「自分が目標を達成できる」という期待を持てていなければ、目標達成のための学習(練習)に精を出すことはできません。同じように、学習環境が支援的で優れていたとしても、自分自身が学習目標に価値を見出せなければ学習へのモチベーションが高まることはありません。

それではどのようにして学生に学習目標に価値を見い出させればよいのでしょうか。The Chronicle of Higher Educationは「学習目標を学生自身の目標に合わせることが重要」としています。特に、学期の初めは学生に「自分の目標は何か?」を把握させるのに適したタイミングであるとのこと。学生に「自分が何を学習したいのか」を考えさせるための時間を設けることが有益なものになるとThe Chronicle of Higher Educationは記しています。

アイオワ大学で修辞学の講師を務めるDavid Gooblar氏は、「私は毎学期の初め、授業を受ける学生に目標を設定してもらうため、幅広い質問に答えてもらっています」と語っています。実際、「なぜ授業を受けるのか?」や「授業を受ければ将来何の役に立つと思うか?」など、さまざまな質問を投げかけるそうです。

これらの質問がどのような役に立つのかというと、まずGooblar氏は「学生のことを知ることができる」ことを挙げています。回答の内容から自分自身が学期を通してどのようなアプローチで授業を行っていくかを調整する必要があるかどうかを判断する材料にもなるとのこと。授業内容が「あまりにも専門的すぎた」もしくは「特定のスキルや内容に集中させる必要があるか」などを、自分が受け持つことになる生徒たちの特性に合わせて調整することで、生徒も教師もより良い授業が行えるようになるとGooblar氏。


さらに重要なのは、「質問することが学生に与える影響」だそうです。学期初めの最初の授業で質問を行うことで、生徒たちが自分自身が改善したいと考えていることや、勉強したいと思っていることを見つめ直すことが可能となります。また、授業を行う教師側が生徒に向けて一生懸命に働きかける姿勢をみせることで、生徒側に大きな影響を与えることができるとGooblar氏は語っています。

実際、明確な目標を設定することが学習において強力な効果をもたらすことは、研究で示されています。2015年に公表された研究によると、大学に入学した際に「将来の目標を考え、明言するように」と求められた学生は、そうしなかった学生と比べて良好な学業成績を修めたそうです。

明確な目標を定めてから学期を始めることは、学生が「自分が誰で、何を達成しようとしているのか」を考える機会となり、授業を受ける上での基礎を築くことにつながるとのこと。また、Gooblar氏は「学期の途中に生徒に対して目標を再び思い出してもらうことも有用である」としており、授業の中で行っている学習と、授業外の生活での学習をつなげる機会にもなると語っています。また、学生が目標を途中で変更することで「学習が自分自身にとってより意味のあるもの」になるよう、可能な限り生徒自身が学習内容をコントロールできるように、柔軟な対応を行ってきたとGooblar氏は語っています。

また、教師は自分の授業が初級者向けなのか上級者向けなのかに限らず、生徒が学習にモチベーションを感じていなければ、「教育者としての目標を達成できたとは言えない」とGooblar氏。そんな事態を回避するため、教師側が学生に教える上での目標をしっかりと設定し、そのために学期を通してどのようなステップを踏んでいくかを考え、さらに各学生が個別の目標を追究できるように程よいゆとりを持ったカリキュラムを設定することが必要としています。

Photo by Ben White