顔認識技術は近年急速に発達している研究分野であり、スマートフォンの認証にも顔認証技術が採用されるなど、実生活にも顔認識技術の恩恵が反映されつつあります。そんな顔認識技術を動物に対して使用し、モニタリングすることの理由について、New York Magazineが報じています。

Why Humans Monitor a Lot of Animals Using Facial Recognition
http://nymag.com/developing/2018/10/what-creatures-may-we-place-in-the-panopticon.html

個人の顔を識別して認証に使用したり、犯行現場の監視カメラに映った顔から犯人を特定したりすることができる顔認識技術ですが、実用に際しては多くの問題が指摘されています。例えば本人以外の人間がiPhoneの顔認証を突破してしまったり、Amazonの顔認識技術が28人のアメリカ上院・下院議員を「犯罪者である」と誤認してしまったり、必ずしも顔認識技術は完璧なものとはいえません。

どのような目的で使用されるかに関わらず、顔認識技術のアルゴリズムを構築するためのデータベースに偏りがあった場合、完成した顔認識技術は特定の人種や性別に対してバイアスを持っている可能性があります。また、中国のように国家権力の強い国では、大衆を監視する目的で大量の顔認識技術搭載デバイスが投入されているという指摘もされています。

一般市民を国家や警察権力が監視することに対しては、「倫理的な問題はないのか」という非難が寄せられがちなもの。一方で、「動物を監視する」ということになれば、いったいどのような反応が寄せられるのかは未知数です。


人間を顔認識で識別できるようになった現在、動物の顔を認識して識別することも人間の場合と同じように可能です。そして、国家が民衆を監視するのと同じように、動物に対しても顔認識技術を用いたモニタリングを行うことで、動物の健康状態や個体数を把握するために役立てることができるとのこと。

Bloombergの報道によると、ノルウェーのサケやマスの養殖を行っている「Cermaq」という企業はIT企業と共同し、サケの顔認識技術を開発したそうです。この顔認識システムでは養殖場の水面近くに監視用のカメラを配備し、一定の周期で養殖されているサケの顔を認識します。もしシラミなどの寄生虫や感染症の兆候を発見した場合は即座に他のサケから隔離し、被害の拡大を食い止めるシステムになっているそうです。

この方法を導入することでサケの健康状態を監視するだけでなく、健康な個体数の把握も可能になります。同様の技術はノルウェーだけでなく多くの国々の養殖業者に恩恵を与えるとみられており、動物の顔認識技術は動物に関わる産業分野で大きな利益をもたらす可能性があるとのこと。


産業的な分野だけでなく、動物の顔認識技術は野生動物の保護にも役立てることができます。自然の中に定点カメラを設置して映り込む動物の個体を特定することで、希少な野生動物の生息域を調査したり個体数を測定したりすることが可能。また、密猟者から動物を救うためにも、動物の顔認識技術が活用できると考えられています。

Photo by alex lang