コーラやスナック菓子のような加工食品に囲まれて暮らしている大人と子どもが、加工食品ゼロ、狩猟・採集・農業による食生活を送っている村に行くと腸内細菌叢(マイクロバイオーム)はどのように変化するのか?ということを、研究者が実地で調査しました。

Changes in the Gut Microbiota of Urban Subjects during an Immersion in the Traditional Diet and Lifestyle of a Rainforest Village | mSphere
https://msphere.asm.org/content/3/4/e00193-18

Switching to hunter-gatherer lifestyle may increase diversity in children's gut microbes -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/08/180829133429.htm

一般的に、腸内細菌が多様であることは健康の印だとされています。これまでの研究で、加工食品の少ない伝統的な食生活をしている人は、都市的な食生活をとっている人と比べて腸内細菌が多様であることが示されてきました。しかし、「都市で生活している人が伝統的なライフスタイルや食生活を送ることで腸内細菌を多様化できるか?」ということはわかっていませんでした。

そこで、ラトガース大学の微生物生態学者であるMaria Gloria Dominguez-Bello氏とベネズエラ科学調査機関の微生物学者であるMonica Contreras氏らの研究チームは、都市に住む大人5人と子ども2人でベネズエラのボリビア州にあるイエクアナ村に16日間滞在した際、旅を利用して調査を行いました。

イエクアナ村では人々が狩猟、採集、農業で暮らしており、キャッサバやトウモロコシのほか、ベリーやプランテン・パイナップルを含む野生の果物、そして魚や少量のジビエ肉、野生の鳥から採取した卵などが食べられています。村を訪れた7人は、「スープと魚や肉を少し」という食事を1日に2度行い、1日中を通してキャッサバと果物をつまんでいたとのこと。滞在中、7人は川でせっけんなしの入浴を行い、自然の概日リズムに合わせて暮らしました。


Dominguez-Bello氏によると、西欧の一般的な食事に比べ「現地の食生活は、動物性タンパク質が少なく、食物繊維が非常に多く、脂肪が少ないもの」だったとのこと。

未加工の食材を使った伝統的な食事は加工食品に比べて化学的に複雑であり、多様な腸内細菌を作り出すための「燃料」だと見なされています。また、伝統的な食事には抗菌薬が含まれていないことも、腸内の多様性を増加させるとされています。

16日の滞在後、研究者は滞在者の肌・口・鼻・ふん便からサンプルを集め、同時に滞在者と同じ年齢の村人からもサンプルを収集して検査結果を比較しました。

その結果、村を訪れた大人の腸内細菌叢は、誰一人として著しく変化していなかったということが判明。一方で、2人の子どもは腸内細菌の種類の合計が増加していました。2人というサンプル数は統計的には非常に少ないのですが、子どもが4歳と7歳という年齢であったことから、研究者は「興味深い」と記しています。

というのも、これまでの研究で、子どもの腸内細菌叢は3歳になるまでに「大人のように安定する」と示されていたため。「この結果は、『腸内細菌叢は3歳までに成熟するのではなく、もっと時間がかかるかもしれない』ということを示しています」とDominguez-Bello氏は語っています。今後、Dominguez-Bello氏は12人の子どもを村に連れていってさらなる研究を行う予定です。

子どもの腸内細菌叢にはこれまで考えられてきた以上に適応性があることを示す今回の研究結果は、都市で暮らす子どもでも、食物繊維が多く脂肪が少ない未加工の食事をすれば腸内細菌の多様性を増やせる可能性を示しています。一方で、大人は食生活を変えても少ない腸内細菌の種類を増やせないかもしれません。


Dominguez-Bello氏によると「村の大人をニューヨークに連れてきて抗菌剤を与えたりマクドナルドで毎日食事をさせたりすれば、多様化は失われていきます。しかし、既に腸内細菌の多様性が失われている都会に住む大人が村の食事を取っても、多様化はできないかもしれません。『存在しない』ものは増やせないのです」とのことです。
Photo by Isaiah Rustad