Googleが推し進めていた「検閲機能を搭載した中国向け検索サービス」の開発は社内外から強い批判と反発を受けていましたが、2018年末にサンダー・ピチャイCEOが「現時点では中国向けの検索サービスをリリースする予定はない」と公聴会で証言し、「Googleはプロジェクトを中止した」と報じられていました。しかし、引き続き取材を行っていたThe Interceptが「プロジェクトが進行可能な状態になっている」と報じています。

Google Is Still Working on China Search Engine, Employees Claim
https://theintercept.com/2019/03/04/google-ongoing-project-dragonfly/

インターネットを含めて政府による強い情報検閲が行われている中国で検索サービスを展開するため、Googleは検閲機能付きの検索エンジンを開発するプロジェクト「Dragonfly」を推し進めていたことが、2018年に判明しました。

Googleが中国向けに検閲機能付きの検索エンジンを開発していたことが判明 - GIGAZINE

Android向けの検索アプリは既に中国政府へ提出されたと報じられましたが、200人以上のGoogleの従業員が「Dragonflyを中止するべきだ」とこれに猛反発。また、世界中の人権団体やマイク・ペンス副大統領からも開発中止を求める声を挙げています。

200人以上のGoogle従業員が中国向け検閲付き検索エンジンの開発をやめるべきとの声明を発表 - GIGAZINE

その結果、サンダー・ピチャイCEOが公聴会で「現時点では中国で検索事業に乗り出す予定はない」と述べ、2019年1月から4月にかけて展開される予定だった検閲機能付きの検索エンジンもリリースされなかったことから、Dragonflyは中止になったと考えられていました。

Googleによる中国向けの検閲機能付き検索エンジン開発は抗議の声を受け中止へ - GIGAZINE

事実、プロジェクトに携わるソフトウェアエンジニアの中には新しい別の仕事が割り当てられ、インド・インドネシア・ロシア・中東・ブラジルでのGoogleの検索サービスに関連するプロジェクトに異動した人も多くいるとのこと。

しかし、Dragonflyに通じる情報提供者によると、プロジェクトに取り組んでいたエンジニアたちは明確な中止命令を受けておらず、ピチャイCEOを含むGoogleの幹部は、将来的な中国向け検索サービスの立ち上げを完全にやめることはないと述べているとのこと。このことから、Google幹部の意向をくんだDragonflyのエンジニアグループは、メーリングリストを介して、プロジェクトに対する社内の動きを逐一メンバー内で共有している状態にあるそうです。


Googleのプロダクトマネジメント部門ヴァイス・プレジデントを務めるCaesar Sengupta氏は、Dragonflyを率いる幹部の1人で、2018年12月中旬に開発に携わるエンジニアなどに「機密−転送しない」という件名のメッセージを送信したそうです。

このメッセージの中で、「過去数四半期にわたって、私たちは中国では検索がどのように見えるのかについてさまざまな側面に取り組んできました。市場とユーザーのニーズについて理解を深めることはできましたが、まだ多くの未知数が残されていて、現時点では検索サービスが開始する予定はありません」「2019年の事業計画を完成させるにあたり、生産性が高く明確な目的を持つことを優先します。そのため、コストセンターを調整して、実際に取り組んでいることをよりよく反映するようにしました」とSengupta氏は述べ、プロジェクトへの予算の割り当てが変更されたことを明らかにしています。

Dragonflyでは「Maotai」と「Longfei」という2つのスマートフォン向け検索アプリが開発されていましたが、2018年12月に500カ所、2019年1月から2月の間には400カ所以上のソースコードが修正されていると情報提供者は証言しています。つまり、一部人員整理や予算割り当ての変更を行いながらも、チームとプロジェクトは完全に解散されず、水面下でが進められているというわけです。


Googleに9年間ソフトウェアエンジニアとして勤務したColin McMillen氏は、中国の検閲を受け入れる検索エンジンの開発を推し進めたり、セクハラ問題で退社する幹部に100億円の退職金を出したりという、近年のGoogleの「倫理的に疑わしい」判断を懸念して会社への抗議活動を行ってきましたが、2019年2月上旬に退職したそうです。McMillen氏は、辞める直前にはDragonflyに何か動きがあるようなそぶりはあったものの、現状については社内でも混乱したままだったと述べています。

McMillen氏は「誰がリーダーシップをとっているのか私にはわかりません。プロジェクトに関わる人たちはコミュニケーションを遮断しているため、透明性が著しく低下しました」と語り、「現時点ではDragonflyの再起動は不可能だと思っていますが、GoogleがDragonflyを完全に中止したとは思いません。おそらくコード名やアプローチを変えて1〜2年後に再度チャレンジするつもりだと思います」とコメントしています。


なお、The InterceptはGoogleにコメントを求めましたが、Googleは応じなかったそうです。
Photo by Maurizio Pesce