自身の筋肉を鍛え上げて美しい肉体を作り上げるボディビルダーは、適切なウエイトトレーニングや栄養摂取などの計画を綿密に立てて筋肉を成長させる必要があります。ボディビルダーたちは常に効果的なトレーニング手法や栄養理論の情報を求めており、インターネット上のフォーラムでアマチュアやプロが情報交換をする文化が古くから存在していましたが、過去には荒らしや差別的発言の温床となったこともあったそうです。弁護士でありウエイトリフティングの選手でもあるOliver Lee Bateman氏が、ボディビルダーたちが集うフォーラムの変遷についてまとめています。

The Unheard History of Bodybuilding Forums, as Told by the Trolls and Counter-Trolls Who Made Them Huge - MEL Magazine
https://melmagazine.com/en-us/story/the-unheard-history-of-bodybuilding-forums-as-told-by-the-trolls-and-counter-trolls-who-made-them-huge

かつてMuscular DevelopmentやBodybuilding.comといったボディビルダーたちが集うインターネットフォーラムでは、気軽にプロやアマチュアのボディビルダーたちとやり取りすることが可能でした。フォーラム上では適切なウエイトトレーニングの方法、筋肉増強剤としてアナボリックステロイドを安全に使用する方法などの情報が得られましたが、ほかのユーザーに対する侮辱やあおりなどが多かったとのこと。

ボディビルダーのフォーラムが整備される以前の1990年代から、筋肉や栄養学に詳しい個人のネットユーザーらは、インターネット上にステロイドなどに関する記事を公開していました。「これらのニュースが公開されていた1990年代は、研究者と近しい人々が独自にステロイドに関する研究や栄養についての探求を深めており、確かに黄金時代だったといえます」と、アメリカのサプリメント企業Redcon1のCEO、Aaron Singerman氏は述べています。

当時、ボディビルダー向けの記事を公開していたAnthony Roberts氏は、「ステロイドユーザーは専門店の店員やボディビル仲間とステロイドについて語りたがっていましたが、現実にそんなナンセンスなことは不可能でした」と語っています。しかし、実際のところステロイドユーザーたちは、誰かとステロイドについて語りたくてウズウズしていたそうです。


インターネットの発達に従い、個人のウェブページの情報を見るだけでなく、ボディビルダーたちが集うフォーラムが整備されるようになりました。これによってボディビルダーたちが互いに語り合う場が生まれたわけですが、同時に中傷や悪口のやり取りも飛躍的に増加してしまったそうです。

フォーラムでは人種差別的な発言や単純な誹謗中傷、さらには口論相手の個人情報をさらし上げるといった行為が横行していたとのこと。アフリカ系アメリカ人のボディビルダーであり、現在はサプリメント販売企業に勤めるBrandon Edwards氏は、「人種差別的な書き込みは珍しくもありませんでした。興味深かった点は、最も多くの書き込みをしているユーザーは、特にボディビルに関心を持っていなかったという点です」と述べており、実はボディビルに興味のない人による汚い書き込みが多かったと述べています。

また、Singerman氏はそういったボディビルフォーラムの中で早くから実名を使い始めた数少ない人物の一人でした。Singerman氏はあえて実名を公開することにより、サプリメント業界とのコネクションを得ることを期待していたそうですが、ラストネームの「Singerman」がユダヤ系であることから、すぐにフォーラムのユーザーらによる人種差別発言の対象となってしまったとのこと。

しかし、当時のフォーラムはプロのボディビルダーやコーチと実際にやり取り可能な数少ない場であり、「トップ層との会話と誹謗中傷が隣り合った環境でした」とSingerman氏は述べています。現在のようにSNSが発達する以前の2000年代半ばまでは、野球やアメリカンフットボールなどではトッププロと一般人が直接やり取りできるような場はなく、ボディビル界は非常に特殊な状況だったそうです。なお、Edwards氏やSingerman氏は当時の環境をくぐり抜けてきたおかげか、中傷や悪口に対する免疫が付いたと述べています。

これらの証言からすると、当時のフォーラムは保守的な政治的傾向が強かったようにも思われます。しかし、Singerman氏はフォーラムの団結はあくまでもステロイドに対する愛情によって保たれており、そこに政治的な一致はなかったと考えています。当時のフォーラムに参加していた人の中には、2016年の大統領選挙で民主党を支持した人もいれば共和党を支持した人もいただろうとのこと。


Roberts氏はボディビルフォーラムでの活動を続けている間に、よりジャーナリズム的な活動に移るチャンスを手にしました。このステップアップもフォーラム住民の中傷の的になったそうですが、Roberts氏の記事が有用であることが広く知られるようになるにつれ、誹謗中傷は減っていったとのこと。

今ではボディビル界のプロやトップアマチュアはSNSに活動の場を移しつつあり、すでにSNSを活用するボディビルダーを広告塔に利用したビジネスが盛んになっています。ビジネスのためにSNSを利用するボディビルダーたちは、フォロワーに向かって暴言を吐くこともありません。「Instagramはフォーラムとは全く違うものです。フォロワーはフィットネスのプロによる投稿を全て読むことができ、投稿の中には商品の宣伝も含まれています。その一方で、インタラクティブなやり取りは失われています」と、Singerman氏は述べました。


Photo by Cesar Galeão