生物の設計図である遺伝子を組み換えることで作られた遺伝子組み換え作物は、一部の人々から「人体にとって危険がある」などの理由で忌避されています。こうした人に遺伝子組み換え作物を受け入れさせるには、遺伝子組み換え作物の「安全性」を主張するよりも、遺伝子組み換え作物の「利点」を訴えることの方が効果的だという研究結果が発表されました。

What Influences Consumer Evaluation of Genetically Modified Foods? - Nguyen Pham, Naomi Mandel, 2019
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0743915618818168

ASU study finds that touting safety of GMOs just riles those who are opposed | ASU Now: Access, Excellence, Impact
https://asunow.asu.edu/20190531-discoveries-asu-study-finds-touting-safety-gmos-just-riles-those-who-are-opposed

アメリカでは20世紀から遺伝子組み換え作物を承認しており、科学者らが作った害虫や干ばつに抵抗力のある作物、あるいは不足しがちな栄養価を高めた作物を、農家が栽培して販売してきました。ところが、毒性やアレルギーの懸念、検査プロセスへの不信感、環境への悪影響といった要素から、遺伝子組み換え作物に対する反発が根強いのも事実。

アリゾナ州立大学でマーケティングの研究を行うナオミ・マンデル教授は、「どうすれば消費者に遺伝子組み換え作物を受け入れさせることができるのか?」という疑問から、今回の研究を始めたとしています。「アメリカ人の50%が遺伝子組み換え作物を危険だと考えています」とマンデル氏は指摘し、遺伝子組み換え作物に反対する人々に対し、最も説得力のあるメッセージは何なのかを調査したそうです。

マンデル氏によると、遺伝子組み換え作物をめぐる立場は両極にいくつかの主要な勢力が存在するとのこと。遺伝子組み換え作物賛成派にはアメリカのバイオテクノロジー企業や食品製造業者、アメリカ食品医薬品局(FDA)をはじめとする政府機関があり、反対派には欧州連合(EU)や食料品チェーンのホールフーズ・マーケット、自然保護を掲げるNGO団体のグリーンピースなどが挙げられます。


マンデル氏らの研究チームは合計約900人の被験者を、遺伝子組み換え作物に対する意見から「(遺伝子組み換え作物に)賛成」「少し賛成」「反対」「少し反対」の4グループに分けました。そして、オンラインのセッションでそれぞれの参加者に遺伝子組み換え作物に関するメッセージを与え、意見がどのように変化するかを調査したとのこと。実験では最初に、「遺伝子組み換え作物の安全性について訴える」ことから始めたそうです。参加者らには、「独立した研究者および国際機関の調査により、遺伝子組み換え作物は人体へのリスクがなく、遺伝子が操作されていない作物と同じくらい安全です」というメッセージが送られました。

マンデル氏は、「私たちがメッセージの効果を測定したところ、すでに遺伝子組み換え作物に賛成している人々は、メッセージによって意見を変えませんでした。遺伝子組み換え作物に反対する人々については、その反対レベルによって結果が左右されました」としています。遺伝子組み換え作物に対して弱い反対を示した人々は、安全性が実証されているというメッセージによって意見を変えたそうです。しかし、遺伝子組み換え作物に強く反対した人々は、安全性を訴えたメッセージによって意見を変えなかったとのこと。マンデル氏は、「遺伝子組み換え作物の安全性を提起することにより、反対派の人々はさらに遺伝子組み換え作物への反発を強くしました」と述べました。

そこで、一体どのようなメッセージが遺伝子組み換え作物の反対派に届くのかについて、研究チームは探りました。すると、「遺伝子組み換え作物は既存の作物よりもより栄養価が高く、より手ごろな価格で入手でき、栽培に失敗しにくい」といったデータを示すことが、安全性を示すよりはるかに反対派を説得できることが確認されたとのこと。


「消費者に利点を示すことで、遺伝子組み換え作物の反対派を強く説得することができます」と述べるマンデル氏は、この事実が他の二極化している問題にも応用できるかもしれないと考えています。「近年、私は多くの種類の政治的断絶に興味を持っています」とマンデル氏は述べ、どのように政治的偏見を抑えられるかは興味深いテーマだと主張。アメリカでは予防接種の反対派が台頭したり、中絶や移民問題についての意見が割れるなど、市民たちの間で大きな断絶が発生しています。

マンデル氏はワクチン賛成派と反対派の断絶について、「私が気づいたのは、ワクチン賛成派はワクチン反対派をバカで非科学的な存在だと、大きな声で訴えているということです」と述べ、これは相手を説得しようとする人々の態度ではないと指摘。本当にワクチン反対派を賛成派にしたいのであれば、「おそらくワクチン接種のメリットについて静かに議論することがいい方法です」と、マンデル氏は述べました。


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