核反応の制御に細心の注意が必要となる原子炉は最先端技術の結晶であり、既に実用化されている第2〜第3世代原子炉の先を行く「第4世代原子炉」に関連する技術となればなおさらです。そんな中、「使用済み核燃料を消費して、従来の原子炉の75倍の発電効率を誇る」として注目を集めた原子力ベンチャーが、その原子炉の設計資料をオープンソース化しています。

Open Source - Transatomic
http://www.transatomicpower.com/open-source/

Xconomy: Transatomic Power Leader Talks Startup's Demise, Political Headwinds
https://xconomy.com/boston/2018/10/12/transatomic-power-leader-talks-startups-demise-political-headwinds/

Transatomic Powerはマサチューセッツ工科大学を卒業した若き2人技術者レスリー・デワン氏とマーク・マッシー氏が2011年4月に設立したベンチャー企業です。当初、同社がコンセプトとして打ち出していた「廃棄物消滅型溶融塩原子炉(WAMSR)」は、使用済み核燃料を消費して発電することが可能で、従来の軽水炉に比べ75倍もの発電効率を誇るとされており、大きな注目と多額の資金を集めていました。

以下のムービーは、2014年にデワン氏がWAMSRのプレゼンテーションを行っているところ。

Solve for X - Leslie Dewan - Power from Nuclear Waste - YouTube

しかし、その後設計を見直した結果、Transatomic Powerは「使用済み核燃料で発電できる」との触れ込みを撤回し、発電効率も「75倍ではなく2倍の誤り」だったことを(PDFファイル)発表。これを契機に資金調達や実証炉の開発が困難になったため、2018年9月には「合理的な期間内に原子炉を建設することができるほど会社を拡大する見込みがなくなった」ことを明らかにしました。

ただし、効率性の面で大幅な下方修正があったにせよ、Transatomic Powerが改めて設計した熔融塩炉(MSR)には従来の原子力発電の2倍の発電効率と、既に燃料が液体である以上メルトダウンが起きないという特徴があり、同社は依然としてさまざまな特許を保有しています。

そこで、設立から7年かけてTransatomic Powerが培った技術や研究を後進に活用してもらうべく、知的財産を公開することに踏み切ったというのがオープンソース化の理由だとのこと。

設立者のデワン氏は自社ブログへの投稿の中で、「我々の業績が原子力分野、ひいては地球を守るクリーンエネルギーの開発全体に資することを願ってやみません」と語り、後進の技術者が自分たちの仕事を引き継いでくれることに対する期待を表していました。
Photo by geralt