クマムシといえば極度の乾燥状態や絶対零度に近い低温環境、高い放射線量や真空状態にも耐える脅威的な生命力を持つ、非常に小さな動物として知られています。そんなクマムシが月面に衝突した月探査機に乗っていたことが判明し、「もしかすると月面でクマムシが繁殖するかもしれない」と話題になっています。

Tiny tardigrades crash-landed on the Moon and probably survived | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/08/tiny-tardigrades-crash-landed-on-the-moon-and-probably-survived/

イスラエルの民間宇宙開発団体・SpaceILは2019年2月、民間初の月面着陸を目指して月探査機「Beresheet lander」を打ち上げました。月周回軌道の突入までは成功して後は着陸という段階でしたが、2019年4月11日、Beresheet landerはエンジントラブルによって着陸に失敗。月面に衝突してしまいました。

Beresheet Landerは墜落直前まで地球との通信を行っており、月面と暗い宇宙を映した「最期の写真」は以下の記事から見ることができます。

「民間初の月面着陸」に惜しくも失敗し墜落した探査機から送られた最期の写真 - GIGAZINE

そんなBeresheet Landerには「Arch Mission Foundation」という地球の文明や動植物のデータをバックアップして、ライブラリとして宇宙に送ることを試みている団体により、「Lunar Library」というアーカイブが搭載されていました。

Arch Mission Foundationは太陽系の星に地球文明の記録を送り込むことで、地球が滅んで太陽系の星がいくつか消滅したとしても、どこかの星に残ったArch Mission Foundationのデータを宇宙人が発見する可能性があると説明しています。アーカイブには英語版Wikipediaのページや人間のDNAサンプル、多くの本などが含まれていたとのこと。さらにLunar Libraryにはデータだけでなく、「数千匹のクマムシ」が乾燥状態で格納されていたそうです。


地球上の多くの場所のみならず、宇宙空間でさえ耐えることができるクマムシは、乾燥状態になると組織が縮んで代謝を止めることで休眠状態に入ります。水や食物なしでも数十年以上生きられるといわれるクマムシは、極度の乾燥状態でも最低5年は生き残ることができるとのことで、月面にBeresheet Landerが衝突した後でもクマムシが蘇生可能な状態で生存している可能性は非常に高いといわれています。

Arch Mission Foundationの共同設立者であるNova Spivack氏は、「最良のシナリオとしては、Beresheet Landerから衝突時にLunar Libraryが飛び出し、衝突地点の周囲にあるというものです」と述べています。乾燥状態のクマムシが蘇生するには水が必要であり、月面の氷が溶け出してクマムシを蘇生させ、その後も生存できる環境を維持する可能性は決して高くはありません。それでも、クマムシの生存力を考えれば、月面でクマムシのコロニーが繁殖する可能性はゼロではないといえます。


Photo by Juhasz Imre