Image: Brent Rose / Gizmodo US


恐るべしソニーの技術力!

プロ用のカメラというとキヤノンニコンのカメラが真っ先に思い浮かびますが、その背後にはソニーがゆっくりと、でも確実に迫っていたのです。今回は最新のソニーα9を試した、米ギズモードのBrent Rose氏のレビューです。速い被写体を捕らえる連続撮影のスピード、カメラを起動してから撮影に入るまでのスピード、と「スピード」がキーとなっており、Brent氏は大層気に入った様子。早速見てみましょう。


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劇的なキャッチの瞬間や鳥が飛び立つ一瞬など、プロのカメラマンがどうやって完璧な瞬間を収めているのだろう、と思ったことはありますか? カメラマンの腕ももちろんですが、その秘密の一つは、マシンガンのようなスピードで連続して撮影できる高額なカメラで、前後のダメな瞬間も含めてひたすら撮りまくっているということです。これらの撮影を行うスポーツや動物のカメラマンには、大きく分けて2つのポピュラーな選択肢があります: 大きなボディーにとてつもないパワーと最先端のイメージセンサーを搭載した、キヤノンかニコンのプロ用カメラです。しかし、この度Sonyは「α9」をリリースし、それらに対抗しようとしています。α9はフルサイズでミラーレスなだけでなく、ニコンやキヤノンの製品よりも軽量で小さく、なおかつ安価で、撮影スピードでは大きく上回ります。


Image: Brent Rose / Gizmodo US


まず、ハイエンドカメラの最近の動向を追っていない方のために、簡単な説明を。この分野はキヤノンとニコンに長い間支配されていましたが、最近ソニーが頭角を現してきたのです。手堅いミラーレスカメラをしばらくリリースしていましたが、数年前にα7シリーズを公開したことで、プロ達からも本格的に注目を浴び始めました。これらは、光学式ファインダーに劣らないシャープな電子ビューファインダーを持ったミラーレスのコンパクトなカメラで、感度の高いフルサイズのイメージセンサーによって美しい写真を撮ることができました。フルサイズとは、36mm x 24mmのセンサーで、かつての35mmフィルムカメラに使われていたフィルム(24mm x 36mm)に最も近いものです。簡単に言えば、センサーが大きいほど多くの光を取り込むことができるのです。

しかし、α7シリーズはプロが求めるようなクオリティを得られる一方で、多くのプロが求めるようなパワーを持っていませんでした。そこで、それを変えようとしているのがα9です。α9は4500ドル(約50万円)の値段に見合う紛れもないプロ用カメラで、言わばA7の頼れる兄貴分のような存在。

まず最初に気付くのがα9の小ささです。寸法は126.9mm x 95.6mm x 63.0mmで本体の重さは約588gと、スレンダーなα7シリーズよりわずかに大きいだけで、対照的にキヤノンのハイエンドなスポーツ用カメラ、1D X Mark IIは大きさが158.0mm x 167.6mm x 82.6mmで、本体のみで1340gとなります。もっと言えば、キヤノンのミドルレンジDSLRの5D Mark IVですらα9より大きくて重いし、それはニコンの製品も同様です。ソニーがその小さなボディーに詰め込んだパワーは驚きに値します。


Image: Brent Rose / Gizmodo US


しかし一番の特徴は、もちろんその速さです。最大解像度、24メガピクセルのJPEG画像を20fpsの速度で撮影可能です。撮影時に出す音はまるでガトリング砲ですが、電子シャッター(これについては後述)のおかげで音はオフにでき、その場合は完全に無音になります。RAW + JPEGで撮影しても、秒間13.5枚の速さで8秒間、つまり108枚撮影できました。

またα9は、フレームの90%をカバーする広範囲のオートフォーカスシステムを持っています。オートフォーカスは最高速度で撮影していても、光のような速さで非常に正確です。私はこれを走っている犬と、ジップラインでこちらに向かってくる人で試しました。例え被写界深度が浅く(f/2.8)て、秒間20枚のスピードで撮っていてもフォーカスは一枚毎に正確に調整され、ほぼ全ての写真でバッチリでした。現在販売されているカメラでこれに近いパフォーマンスの物はありません。クレイジーと言っていいでしょう。


Image: Brent Rose / Gizmodo US


このカメラで撮影する気分を説明すると、大げさに言うつもりはないのですが、シャッターチャンスを逃すことがほぼ無理だと感じます。例えば、電源をオフにしたα9を首から下げて小川沿いを歩いていた時、水から上がってきたゴールデンレトリバーが身震いし始めました。私が電源ボタンを押す前から犬は体を震わせていたのですが、それでも終わるまでに14枚をバーストで撮影し、全ての写真で犬の毛一本一本や弾ける水しぶきまでハッキリと写っていました。私のA7Sも決して遅いわけではありませんが、その短い時間では一枚も撮れなかったでしょう。α9を使うというのは、ずるをしているような気分です。

長時間露光の撮影も楽しかったです。天の川を撮影するには月が明るすぎる上にヘイズが濃かったのですが、α9ならば撮れる自信がありました。ネバダ州の国道50号線(「アメリカで最も孤独な道」として知られる)を走りながら撮った何枚かは非常に気に入っています。下の写真は一度の露光で深夜に電子シャッターで撮影しました。私は月に照らされ、後ろのトラックのヘッドライトが逆光になっていました(ご心配なく。かなり後ろで距離がありました)。20秒の露光で設定はISO 800、f/2.8です。勿論、Lightroomでかなり調整しましたが、RAW画像にどれだけダイナミックレンジの幅があるかをお見せすることが出来ると思います。


Image: Brent Rose/Gizmodo USこれはネバダ州、国道50号線で撮った写真。実に荒涼とした場所で、天の川が撮れるかと期待していたのですが、月が明るすぎました。そこで三脚を道の真ん中に立てて20秒露光しましたが、驚くほどの成功でした


暗い場所での撮影に関しては、驚くことに(僕のメインカメラとして過去2年活躍している)ソニー α7Sと肩を並べました。暗い環境に特化したα7Sの方が若干明るく見えますが、ノイズレベルはほぼ同じだし、α9の方が倍の画素(24MPと12MP)がある分余裕があります。


Image: Brent Rose / Gizmodo US最初はα7Sがα9を圧倒すると思っていました。同じサイズのセンサーに対してα7Sはピクセル数がおよそ半分なので、より大きくて光に敏感なのです。しかしα9も負けていません


ソニーのセンサーは、通常であれば荒くて使い物にならなくなる程に画素の感度を上げても、可能な限りの光を集めてくれます。ISO 6400ではほぼノイズはありません。ISO 25,600でもLightroomでノイズ除去を少し加えればまだまだ使えますし、ピンチの時には、そこそこ荒くはなりますがISO 51,200でもいけるでしょう。ISO 102,400も他に比べればマシな方ですが、ビッグフットか何かにでも出くわしたのでない限りは使わない方がいいでしょう。


Image: Brent Rose / Gizmodo USネバダ州オースティン。Trump/Penceの看板が眩しい、伝説的に怪しいバーに入ろうと思ったのですが、お休みでした。露光4秒、ISO 1600


α9には電子シャッターとメカニカルシャッターの2つがあり、マニュアルでどちらかを選択可能ですが、オートにしておく事をオススメします。シングルショットや低速バースト(最大5fps)の場合はデフォルトでメカニカルになり、RAWイメージによりカラー深度を与えてくれる(電子は12bitでメカニカルは14bit)ので後で調整する際に役立ちます。また、外付けのフラッシュ(内蔵されていないので)を使う場合にもメカニカルがいいでしょう。ミディアム、またはハイスピードのバースト撮影を行う場合は電子にスイッチします。また、速く動く被写体にも電子が向いています。また、電子シャッターの場合は無音で撮影できます。ちょっと不気味だけどクールです。


Image: Brent Rose / Gizmodo USモアブに沈む夕日。カメラの連続ブラケット撮影で、異なる露光時間の3枚の写真を立て続けに撮影し、Lightroomで1枚のHDR写真にしました。見事な色ですね!


ビデオ撮影でもα9は手堅い仕事をします。最大30fpsで4K撮影でき、1080Pなら120fpsまで行けるので美しいスローモーション撮影が可能です。

α9のデザインで挙げられる最大の欠点というと、ビデオのスタート/ストップボタンがビューファインダーの真横にあることでしょうか。(私が教わったように)左目でファインダーを覗こうとすると、鼻の高さに関わらずほぼ100%鼻がボタンを覆ってしまいます。こんな重要なボタンがあっていい場所ではないと思います。


Image: Brent Rose/Gizmodo USこのショットの為に足が傷だらけになりましたが、価値はあったと思います。カメラの10秒タイマーを使ったのですがタイミングを合わせるのが困難でした。10回程トライしましたが、終わった時には足の裏が血だらけだったので、糊で閉じて、清潔に保つためにガムテープでテーピングしました。


他にもわずらわしい点はあります。SDカードスロットが2つあるのですが、UHS-II SDカード(プロのカメラには必須の高速カード)に対応しているのは一つだけで、もう片方はUHS-Iです。さらに、外付けの充電器が付属していません。Micro USBで充電するのは確かに便利(小さいソーラーパネルやポータブルUSBバッテリーパックを使える)ですが、これだけの値段するカメラで充電器がついてこないというのはかなりビックリです。どうせカメラにこれだけ投資するのだから、ついでに90ドルの外付け充電器と80ドルのスペアバッテリーも買っておくべきでしょう。残念ですが。


Image: Brent Rose / Gizmodo USユタ州モアブ、デッドホースポイント州立公園


他の不満というと、ソニーのメニューシステムが、控えめに言っても複雑なことでしょうか。メニューには36(36!! )のタブがあり、一つのタブに最大6つの項目がある上、項目の名前は分かりづらく、グループの分け方も不鮮明です。また、45分間かけて、18分の4Kビデオを24fpsで撮影したところ、オーバーヒートの警告が現れました。これはマズイ兆候です。写真はそれでも撮れましたが、ビデオを取り続けていたらどうなっていたか分かりません。他のユーザーもこの問題の苦情を出していたので、間違いなくソニーが解決せねばならない問題です。一応、ファームウェアアップデートでこの問題は解決したそうなのですが、レビュー後だったのでテストすることが出来ませんでした。


Image: Brent Rose / Gizmodo USネバダ州ファロン。暑くて、疲れて、空腹だったので、ファロンの町にあるバーガーを売っている怪しいバーに向かいました。興味深い地元の人達に出会い、町の痛みを見た気になりました。町の建物の1/3が廃墟だったのです。それはさておき、この写真はバーの反対側で、丁度日没の瞬間に撮れました。まるでもっと昔の時代のようですね


さて、良いところ、悪いところを出し尽くした上で結論を出しましょう。アナタは買うべきかどうか? もしスピードが命なら、これ以上のスピードを得られるカメラはありません。α9は本体のみで4,500ドルです。キャノン 1DXやニコン D5よりは確かに安いのですが、どうしても速い被写体を撮りたいわけではないなら、ソニーのα7シリーズ(α7 IIがオススメです)がいいでしょう。こちらもフルサイズのミラーレスカメラで、撮れる写真の質は高く、ただスピードで劣るだけです。しかし、駆け出しのスポーツ写真家で他のメーカーのレンズに投資していないなら、α9はあらゆる面で最適です。

このカメラを持って歩き回るのは実に楽しかった(Gレンズも最高!)のですが、全てひっくるめて1万ドル近い写真機材は、私にはとても手が出せません。レビュー以降、私のα7Sが遅く感じるようになってしまいました。はぁ…。


備考
・撮影、フォーカスともに信じられないスピード
・ブラックアウトフリーで常に被写体を追い続けられる
・ノンプロにはちょっと高すぎるしオーバースペックかも
・暗い場所、速い被写体の撮影に最適
・いくつかのデザイン的な煩わしさ

Image: Brent Rose / Gizmodo US
Reference: PetaPixel 1, 2
Brent Rose - Gizmodo US[原文]
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