情報の安全圏から逸脱した記事の読み方や議論の方法を試みる人が、何の記事をどう読んでいるか、知りたい。そんな疑問からこの企画が生まれた。

自らの価値観で情報を掘り下げ記事と向き合ってきた編集やライティングのプロたちに、"改めて読みたい"ウェブの記事を聞くという連載企画だ。基準は、PVでもシェア数でも"バズ"でもない。ただ自分の基準で面白いと思い、記事を読む行為を有意義な時間と感じるかどうか、それだけをお願いして選んで頂いた。

世間の評価やメディアの構造よりも、読み手の"テイスト"だ。お気に入りやブックマーク、クリック、プッシュで消費される情報消費社会において、記事と自ら向き合おうとする彼らの行為は、改めてウェブ可能性を提示しているようだ。

・Kanye West: Free Form|SPENCER BAILEY|SURFACE

アメリカのデザイン/ファッションマガジンである〈サーフェス〉によるカニエ・ウェストのインタビュー。こうした世界の最前線にいるビッグアーティストの一次情報を知るためには、海外のメディアをチェックするしかないのが現在のリアルです。そしてそのほとんどは有志の翻訳すら作られません。「日本で海外のポップミュージックやカルチャーを扱ったメディアを作る/論評を書くには、英語を読めないとスタートラインにすら立てない」というのが自分の現状認識です。

・"If You're Here"|Pitchfolk

アメリカの音楽メディア〈ピッチフォーク〉に掲載された、東京在住のアメリカ人ライター、パトリック・セントミッシェルによるコーネリアス「あなたがいるなら」のレビュー。日本の音楽が海外のライターにどのように解釈され、どのように紹介されているか。それをダイレクトに知ることができるのがWebメディアの面白いところでもあると思いますし、それを知ることが国際感覚(というと大げさですが)を身につけるための一つの手っ取り早い方法だと思います。歌詞の解釈が面白かったです。

corneliusofficial/YouTube『Cornelius - 『あなたがいるなら』"If You're Here"』

・Richard D. James speaks to Tatsuya Takahashi|RICHARD D. JAMES|WARP

エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムスによる、元コルグの高橋達也へのインタビュー。それだけですごいのですが、内容もすごい。話題はシンセサイザーに留まらず、A=440Hzという現代の音楽の基準となっているコンサートピッチに対する二人の意見が交わされ、音楽論としてもエイフェックス・ツイン自身の濃厚なインタビューとしても楽しめます。そしてこの記事が掲載されているのが英レーベル〈ワープ〉のサイトだということ。もはやメディアに頼らずともレーベルやアーティスト自身がこうした情報発信ができる。レーベルの存在意義が問われている昨今ですが、それはメディアも同様です。


KORGINC/YouTubeKORG volca sample OK GO edition - Basics of Sequencing

・Everything That Went Down at the Raf Simons SS18 Men's Show|Jian DeLeon|HIGHSNOBIETY

といった具合に、リニューアルしたばかりの〈FUZE〉に寄せる文章としては不穏なことを言ってしまいましたが、メディアの存在意義というものは今改めて問われていると思います。
自分が編集長を務めていた音楽メディア〈AMP〉は、運営元との契約最終日だった2016年12月31日をもって終了いたしました(完成が間に合わなかった記事を後から2つほど載せましたが)。あらかじめ決められていた期限による契約満了だったのですが、仕事の忙しさにかまけているうちに、読者のみなさまや関係各社へのご挨拶のタイミングを逃してしまいました。大変申し訳ございません。そしてご愛読ありがとうございました。2016年末で終了とは言いましたが、そうした「メディアの存在意義」への疑念や、サブスクリプションの台頭による音楽の変化に戸惑い、実質的には最後の1年半くらいはほぼ逃避状態。周りのスタッフに運営を任せてしまっておりました。各位には申し訳なさと感謝しかありません。その時期にぼんやりと考えていたことが「ファッションを軸とした音楽メディアの方がいいのではないか」ということでした。

・徹頭徹尾ヘヴィ&マッチョなサウンドに乗せて、自分を捨てた女に執着し続ける惨めな男を描いたアルバム、その意味するもの|天井潤之介|The Sign Magazine

そして次に考えていたことが、この〈FUZE〉のような月刊Webメディア、そしてファッション雑誌〈STUDY〉のようなインディペンデントな紙媒体が良いのではないかということでした。音楽の消費の形やライフスタイルの変化に伴い、メディアはこれまで以上にその形式自体を問われているように感じているのは事実。アイキャッチ画像とタイトル、見出しだけを読まれて、なんとなく拡散され忘れ去られる。そういう風潮は、作り手がそれに甘んじてそういう記事を作り続けたことで拡大させた「自業自得」でもあると思います。ええ。「失われた週末」期のジョン・レノンを思わせる、愛する女性に見限られ、消えない後悔と執着心に苛まれる、惨めで自堕落ですっかり荒んだ孤独の風景にいるかのような2年間ほどの迷走状態に僕は今もいます。そんな僕をよそに〈FUZE〉は形式を変えることを颯爽と選んだのだと今感じています。


Official Arctic Monkeys/YouTubeArctic Monkeys - Do I Wanna Know? (Official Video)

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