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女性が差別されるのは男性と「生物学的に違う」からと。

先週金曜日、Googleの社内メーリングリストで同社の男女平等を目指す活動を批判する文書が公開され、議論を巻き起こしています。この文書を書いたのはGoogleの上級ソフトウェアエンジニアとされていて、Motherboardが最初に伝えた時点ではGoogleの内部でしか共有されていませんでしたが、後に米Gizmodoが10ページに及ぶ問題の文書全文を入手、公開しました。


女性が不利なのは「生物学的に違うから」


ものすごく長いので簡単にまとめると、このエンジニアいわくGoogleは左翼的に凝り固まった「エコー・チェンバー」になっていて、多様性を重視するあまり反対意見に耳を貸さず、「右寄り」な自分は肩身の狭い思いをしているそうです。彼が思うに、女性が男性より職場で悪い待遇を受けているのは、女性と男性が生物学的に違うからなので、女性比率を高めるために会社がいろんなサポートをしているのはかえって差別的であり、不公平なのです。

エンジニアは文書の冒頭で「私は多様性や包含性に価値があると思うし、性差別があることを否定するわけではないし、ステレオタイプを奨励するつもりもない」と断っていて、一見それなりに根拠のある合理的な主張が展開されるようにも見えます。でも彼が言う「女性と男性の生物学的な違い」は、基本的に全部彼の主観的な感想です。

たとえば彼は、男性がモノに興味を持つのに対し、女性は人間とか美に対する興味の方が強く、そのため男性がシステム化を要するコーディングを好むに対し、女性は開発の中でもフロントエンドを好むのだと言っています。また女性は社交的で、感じよく振る舞おうとするため、給与や昇格の交渉や意見の表明、リーダーシップの発揮といったことが苦手になるのだと主張しています。さらに女性は神経質で不安感になりやすくストレス耐性が低いとも言っていますが、どれも明確な根拠を示してはいません。

彼は単に不平を言っているわけではなくて、「多様性を道徳の問題にしないこと」「多様性実現のためのプログラム利用者を特定の性や人種に限定しないこと」「多様性プログラムのコストやメリットについてオープンな議論をすること」などいくつかの提案もしています。ただその提案のベースになっているのがあくまで彼の感想なので、あまり説得力がありません。


社内からは賛同の声も


それでもこのエンジニアの主張は社内メディアにとどまらずネット全体に拡散し、全体的には強い批判を呼び起こしています。が、The Vergeによれば必ずしも反対意見だけではなく、Google社員の中でも「よくぞ言ってくれた」という声があるそうです。Google社員のSarah Adamsは以下のようにツイートしています。

The article is publicly supported by many people internally.
Begs the question, how many privately support/agreee/subscribe.

— Sarah Adams (@sadams007) August 5, 2017


この記事、社内ではたくさんの人が公に支持してる。内心だけで支持/賛成/サブスクライブしてる人がどれだけいることか。


多様性担当役員までいるものの、まだまだ


折しもGoogleでは6月末に「多様性、規範、管理」担当バイスプレジデントとしてDanielle Brownが新たに就任したばかりで、週末に上の文書に反論する文書を社員向けに発信しました。以下に抜粋します。


あなたたちの多くが、エンジニアリング部門のある人物が共有した社内文書をすでに読んだことと思います。そこでは性別による能力や性格の違いについて、またこれらについてGoogleで自由に話ができるかどうかについて、意見が書かれていました。そしてあなたたちの多くと同じように、私はこの文書がジェンダーに関する間違った考えを促進していると思います。(略)

Googleはこの問題について強い姿勢を取り、デモグラフィックデータを公開し、多様性や包含性に関する目標・成果(OKR)を設定しています。強い姿勢を取れば、強い反応が返ってきます。文化を変えるのは難しく、不快なこともしばしば起こります。ですが私はGoogleは正しいことをしていると信じており、だからこの仕事を引き受けたのです。


GoogleはBrownの着任前から多様性向上のための活動に力を入れてはいて、たとえば社内研修でも「Unconscious bias(無意識のバイアス)」を取り払うためのプログラムを実施し、新入社員や管理職には必修になっているそうです。また大学生向けインターンシッププログラムのBOLDやEngineering Practicum、高校生向けキャンプのCSSIなどなど、教育の段階から性や人種の偏りをなくそうとしています。それでも公表データによると、同社のテクノロジー部門の男女比率は8:2(2017年1月時点)にとどまっています。また米国労働省は、Googleでは全社的に女性の待遇を低くしていると指摘しています。

表向きは多様性実現に向けて努力しているGoogleですが、そんな努力がテック部門の多数派である白人男性にはうっとうしがられている内情が噴出してしまいました。でも、これが単に「やっぱ男女平等とか無理なんだよ」で終わるのではなくて、多様性ってどうして大事なのかとか、どういう実現方法がいいのかとか、前向きな議論のきっかけになるといいですね…。


Image: Asif Islam / Shutterstock.com
Source: Motherboard、The Verge、LATimes
Reference: Google, Twitter

Kate Conger - Gizmodo US[原文]
(福田ミホ)