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「えー、がっかり」という人も多かったんじゃないでしょうか。

ここ数年、新しいiPhoneが発表されるたびに期待の声があがるUSB Type-C端子の搭載。iPhone 13でも待望論は叶わず、引き続きLightningケーブルが採用されました。一方で、同時に発表されたiPad miniはしっかりUSB Type-Cに対応。さらに、先週23日には、EUでスマホやタブレットの充電機器の端子をType-Cに統一する法案が発表されて「Lightningはどうなるんだ」問題が突如ホットな話題になりました。

どうしてiPhone 13シリーズはLightningケーブルのままなんでしょう?

AppleとType-Cの関係

Image : Gizmodo US

今や他社のスマホの多くがType-Cを採用しているのに、Appleは今回もLightningを採用。頑なだなぁとか、AppleはType-Cが嫌いなのかなと思っちゃいそうですが、Type-CはAppleの要望で生まれたとも言われています。

というのも、複数の企業からなるType-Cの策定メンバーにはAppleのエンジニアが多く参加していたから。

The Vergeは「Appleは18人のエンジニアを割り当て、Type-Cの仕様策定に協力している。この数は24人が参加したIntelの次に多く、Microsoftの16人、Googleの10人、Dellの5人、HPの6人と比べると大所帯だ」と書いています。さらに、Type-CはLightningと同じリバーシブル仕様でサイズ感も似ているし、Thunderboltとも似た機能を持っているため「これってAppleの意見がかなり反映されている?」という見方が広まったようです。

無駄なものをどんどん排除していくAppleのプロダクト動向には、汎用性の高いType-Cはぴったり。実際、2015年に発表されたMacBookの接続端子はイヤフォンジャックのほか、USB-Cポートが1つしか搭載されておらず、話題になりました。

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この発表会でApple上級副社長(当時)のフィル・シラーは「ノートブックの未来について唯一のインテリジェントなビジョンは、ケーブルを必要としないこと」と高らかに宣言していました。もちろん大胆なアップデートには賛否両論集まったわけですが、Appleのワイヤレスへの熱い眼差しからは、決してType-Cを毛嫌いしているわけではないことが伝わってきます。

iPadに搭載されたのはなぜ?

Image: Apple

iPadがType-Cに対応したのは、MacBookの登場から3年後の2018年のiPad Proからでした。それから3年が経ち、Proで判明した需要がminiユーザーにも見込めると判断して今回のアップデートになったのではないでしょうか。

思えば、2012年に初めてiPad miniが登場したときに掲げられた使いみちは、ウェブブラウジングや電子書籍を楽しむ、映画などの動画コンテンツを見るといったもので、基本的にはビューワーの側面が強く押し出されていました。それが2019年には第1世代のApple Pencilに対応するようになり、だんだんとクリエイティブツールへと進化していきました。コンテンツを消費する存在から、作る側のツールへと本格的に転換したのです。

Image : Apple

進化とともに、接続端末のバリエーションも増えました。カメラやディスプレイがその代表例ですが、医療の現場でも活躍しています。Appleはプレスリリースで「(iPad miniは)写真家がロケーション撮影中にカメラを接続したり、医師がリモートで超音波検査を行うのに最適」と言ってるぐらいなので、ヘビーなタスク処理を想定しているようです。

Image: Apple 超音波検査の場面でも活用できるiPad mini

複雑な処理をするようになるとバッテリー消費は大きくなるし、第2世代のApple Pencilはピタッとくっつき常時充電できる仕様。高速充電の必要性を感じるポイントです。

高いレベルの仕事をするために対応する周辺機器は多いほうがいい。同時に負荷の高い作業をするため、高速充電にも対応させたい。この2つのニーズを満たすにはType-Cがベストだったのではないでしょうか。

Image: Apple

一方で、今回発表された無印のiPadは、クリエイティブツールではなく、学習ツールとしての側面を重視しているため、従来通りのLightningが選ばれたのだと思います。

iPhoneとiPadシリーズの明確なちがい

Image: Apple マクロ撮影もできるようになったiPhone 13 Pro

iPadはカメラとつないで写真や映像の編集をしたり、モニター的な使い方をしたりと「データの伝送」が多いデバイスですが、iPhoneは写真やビデオを撮るほうであって、取り込むことってあんまりない気がします。写真を本気で編集するには、画面が小さいですし。さらにiPhoneで撮った写真って、Airdropで送っちゃうことがほとんどで、ケーブルを使う必要性はあまり感じません。

では充電のほうはどうでしょうか。もちろん高速充電に対応したほうがいいに決まってますが、iPhoneのバッテリー容量は、iPadに比べるとそれほど大きくありません。iFixitによると、iPhone 13 Pro のバッテリー容量は11.97 Whで、前機種iPhone 12 Proの10.78Whと比べると、少しのアップグレードにとどまっています。17.8 WhのXiaomi Mi 11や19.40 WhのGalaxy S21 Ultraと比べると、高速充電が必要なほどの容量でもない気もします。

といいつつ、実はiPhoneに同梱されているのはApple USB-C - Lightning ケーブルなので、電源アダプタがType-Cに統一されてもiPhoneは充電できますし、対応アダプタを使えば高速充電もできます。

Image: Apple

そしてご存知の通り、Lightningケーブルはサードパーティ含め、アクセサリ類としてそれなりの市場を持っています。Appleとしては、その市場をゴソッと捨ててまで、iPhone 13をType-Cにする必要性を感じなかったのかもしれません。

Appleが追い求め続けるワイヤレス

Image: Apple 開発中止になってしまった「AirPower」

ここからはおまけなんですが、個人的に思うのが、Apple的に本当に力を入れたいのはワイヤレスの方向なんじゃないかな、ということです。iPhone 8以降はQiに対応するようになっていますし、先述のフィル・シラーの発言からもワイヤレスへのアツい想いを感じます。残念ながら開発中止になってしまったようですが、かつてAppleはワイヤレス充電器を開発してましたし。

もう本当にすごく昔の話になりますが、無線LANの一般への普及には、Appleが1999年に出した「AirMac」の存在が大きかったと言われています。当時、Appleと提携していたLucent Technologiesの担当者は、スティーブ・ジョブズのことを「無線LAN普及の父」として讃えるほどで、AirMacが登場したことによって、各メーカーから声がかかったとEE Times Japanへの寄稿文で明かしています。さらに2008年にはiPhone 3Gが登場し、通信量が急激に増えたことにより、公共無線LANのスポットが一気に増えたという歴史もあります。今やiPhoneにとって欠かせないデータ転送手段のAirDropも、Wi-FiとBluetoothを使ったワイヤレス技術です。

まだ時間は掛かりそうですが、Appleは、大きな市場を残して安定性を保ちつつ、水面下で準備をしているのかも……? だとしたら夢があるなぁ。

Source : Apple, Gizmodo US, The Verge, YouTube, iFixit, EE Times Japan