「リーカーの身元はあらゆる手を尽くして特定する」と全社メールで警告したティム・クックCEO Stephen Lam (Getty Images)

「ここにリーカーの居場所はない」って、温厚そうなティム・クックCEOの風貌からは想像もつかない言葉だわ…。

Apple(アップル)社内の有志が「#AppleToo」というグループを立ち上げて職場の不平不満をネットで匿名で受け付けたところ、現社員と元社員、総勢500人以上から投書が殺到し、New York TimesやThe Vergeに報じられる事態に発展しています。

投書の内容はセクハラ、パワハラ、賃金不平等、秘密主義、訴訟への不満などなど。上司に言っても取り合ってもらえなかったり、握りつぶされたり、給与査定を下げたりの報復にあう、といったものです。

先週の全社ミーティングでクックCEOはコロナワクチン接種に関するポリシー(未接種者は検査が必須)と、Epic対Apple訴訟に関する所見を述べたのですが、その内容もすぐマスコミに漏れてしまいました。

それで週明けの火曜、CEO直々にメールで警告を発したというわけです。しかし、それもThe Vergeにリークしてしまったので、以下に訳しておきますね。

社員各位

金曜は世界社員ミーティングにご出席ありがとうございます。すばらしい新製品のラインナップから、 Appleのコアバリューに根ざした気象変動、人種的公平、プライバシーへの取り組みまで話題は尽きず、多くの成果をともに振り返り、日頃の意見を出し合ういい機会となりました。

ただ会議の内容が報道記者に漏れたことがわかり、かなり不満をつのらせているといった声もたくさん寄せられていますので、本日はその件でメールを書いている次第です。先日の新製品発表イベントでも発表内容が粗方マスコミにリークしたばかりですし。

みなさまの不満は私も心を一にするものです。全社員が一堂に会する場はとても重要ですが、忌憚のない意見交換は、そこで話し合われた内容がApple社内にとどまるという信頼感があって初めて成り立ちます。それがないところでは機能しません。先にも申し上げたように、現在われわれの権限がおよぶ範囲であらゆる手を尽くしてリーカーの特定に全力を挙げています。製品特許であれ部外秘ミーティングの内容であれ、部外秘の情報を漏えいすることは固く禁じられています。リークに従事するのはごく少数の人です。機密をリークするような人にはここで働く資格はありません。以上の認識を共有していきたいと考えます。(後略)

製品リークとは違う

Appleのリークというとすぐ未発表の製品をイメージしてしまいますよね。初夏にも転売のiPhone試作機の情報がSNSにリークした件で、Appleは広めた人に警告を送って、工場から試作機を持ち出した人物(おそらくは中国のApple社員かFoxconn社員)の名前を教えるよう要求、「リーク提供者は絶対に許さん」と気炎を挙げたばかりですし。

製品情報のリークを厳しく取り締まるのは、周辺機器メーカーさんのためでもあるというのがApple公式の説明(試作段階の情報をもとに周辺機器つくったら最終版に合わなくなることもあるため)。得意の「発表サプライズ」が消える懸念も理解できます。

ただそれとは別に、社内で不満が溜まっているのに、それを声に出せない現実が表沙汰になるのは極めてレアケース。それとこれとを混ぜて語ると苛立ちの本質が見えなくなってしまいます。

Epicのこと

たとえば17日の全世界社内ミーティングのリークでは、クックCEOが今月判決の出たEpic対Appleの反トラスト法裁判のことに言及し、「Epicは特別扱いを求めてきましたが、われわれは全員平等のポリシーです。訴えられた10項目中9項目はAppleの勝訴となりました。敗訴した1項目についても影響は規約から1文〜2文削除する程度にとどまっています。もう前に進みたいです」と語ったことが明らかになっています。でもこの前日の16日にはEpic Games(エピックゲームズ)のティム・スウィー二ーCEOがAppleにメールを送って、他社と同じ条件でいいからApp Storeに戻してくれとお願いしたのに「裁判が終わるまで永久BAN」だと冷たくあしらわれているんですよね…。

Apple lied. Apple spent a year telling the world, the court, and the press they’d "welcome Epic’s return to the App Store if they agree to play by the same rules as everyone else". Epic agreed, and now Apple has reneged in another abuse of its monopoly power over a billion users.

— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) September 22, 2021

賃金格差のこと

さらにAppleは女性・人種的マイノリティの賃金格差是正を訴えて活動していた女性上級エンジニアリングプログラムマネジャーを9月上旬に解雇していたりします。理由は「製品IP漏えいが社員規定に違反したから」。ただ、IPの具体的内容が一切明らかにされていないことから不当な報復人事ではないかということで、全米労働関係委員会 (NLRB) から調査が入っています。

賃金格差是正を意見交換するSlackのチャンネルもつぶされましたし。賃金のデータ集計のためのアンケートも再三つぶされていて、労使関係は一触即発です。声をあげる人をトラックダウンして解雇するより、公正な待遇にするほうがみんなハッピーな気がするんですけどね…。