Image: Ninon Robin (Harvard/NJIT) via Gizmodo US

まさか、息を吹き返したりしないよね…?

科学者たちが琥珀の中から見つけ出したのは、全長わずか0.559mmしかないクマムシでした。この地球上でもっともタフと言われる生物の太古の姿から、一体どんなことが学べるんでしょうか。

あるクマムシの悲劇

Image: Holly Sullivan (Harvard/NJIT) via Gizmodo US

それは1600万年前のこと。木からしたたり落ちた天然樹脂が、花のかけらと、3匹のアリと、1匹の甲虫をからめ取りました。それだけでも十分なのに、その樹脂のしずくはさらに1匹のクマムシを捉えていたのです。

それから長い時間かけてできあがった琥珀の化石は、クマムシを内包しているものとしてはこれまで知られている中で3つめ、そして新生代(6600万年前に恐竜の絶滅と共に始まった現行時代)のクマムシを内包しているものとしては初モノだそうです。

でも琥珀が最初に発見された当初は、よもやそんな貴重な化石だとは誰も思っていませんでした。琥珀の産地として知られるドミニカ共和国のラ・クンブレ地方で見つかったこの化石を、ニュージャージー工科大学とハーバード大学の研究者たちは何ヶ月もかけて丹念に調べ上げていました。で、ふとした拍子に、琥珀の隅にちんまりと混入していたクマムシを発見して驚いたのだとか。

ニュージャージー工科大学のバーデン(Phil Barden)教授は「一世代に一度の大発見」だったとプレスリリース内で語っています。詳しいことはこちらの論文からどうぞ。

ずっと前からどこにでもいたクマムシ

クマムシは8本足の無脊椎動物で、地球上でもっとも不死身に近い脅威的な生命力を持っています。

乾眠状態となって長い間極度の乾燥や低温に耐え抜くことができますし、宇宙空間でも生き延びられるほど放射線にめっぽう強いです。銃弾につめられて発砲されても(ある程度までは)平気。歩き方だって立派なものです。英語では「water bear(直訳:水熊)」、「moss piglet(苔豚)」などと呼ばれることもあるクマムシは、およそ5億年前から地球上に存在しており、過去に5度の大量絶滅期を生き延びたと考えられています。

「クマムシは大昔から地球上のどこにでも存在していた種で、植物類が陸地に繁茂した時も、恐竜が絶滅した時も、すべてを見届けてきているんです」とバーデン教授は話しています。

ところが奇妙なことに、これまでクマムシの化石はほとんど見つかってこなかったため、古生物学者にとってクマムシの系統を調べるのは困難でした。

ですから、クマムシの化石が発見されたということだけでも非常にエキサイティングなことです。実証に基づいてクマムシの進化について学べるわけですから。

とも。

まったく新しいタイプのクマムシだった

実際クマムシの化石を調べてわかったのは、今まで知られているどのクマムシとも違う身体的特徴を持っていたことでした。

したがって、このクマムシには「Paradoryphoribius chronocaribbeus」というまったく新しい属名が与えられました。「chrono」はギリシャ語の時間、「caribbeus」は発見された地域に由来するネーミングで、現存しているクマムシの中でもっとも近いのは「Isohypsibioidea」上科だそうです。

Image: Mapalo Marc A., Robin Ninon, Boudinot Brendon E., Ortega-Hernández Javier and Barden Phillip 研究論文から。上が立体顕微鏡、中央が蛍光顕微鏡で写したもの。下はそれに基づくドローイング

ここまで調べることができたのは、このクマムシの化石の保存状態がとてもよかったから。体の内部の構造や、口の部分、また人間の髪の毛よりももっとずっと細い爪もそのまま観察することができました。

もっとも大きな発見だったのは、「クマムシの化石としては初めて前腸の内部構造が可視化されたことにより、現存している生物には見られない特徴の組み合わせを保有していたこと」だったとハーバード大学大学院生で、今回の論文の筆頭著者であるマパロ(Marc Mapalo)さんは説明しています。このことにより、

このクマムシが新しい属に分類されるとわかった以外にも、何百万年という時を経て生物にどのような進化的な変化が現れるのかを研究できる機会にもなった

と話しています。

クマムシの進化については「まだ研究が始まったばかり」だとバーデン教授は言います。なにせ化石自体が希少ですからね。琥珀のなかの不純物のように見えて、実はクマムシが封印されていただなんてすごいロマン…! 肉眼で見えるか見えないかぐらい小さな小さなクマムシが、次はどんな琥珀の中から発見されるんでしょう。

※2021/10/13 13:00追記:誤字があったため、修正しました。

Reference: New Jersey Institute of Technology, Proceedings of the Royal Society B