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プラスチックと自然素材のいいとこ取り、かと思いきや。

ペットボトルやガジェット、家具や車や建材まで生活のあらゆる場面に浸透してるプラスチック。便利で快適な日々を支えてくれてるけど、普通のプラスチックは石油が原料で、作るときも捨てるときも二酸化炭素ダダ漏れだし、ポイ捨てされてもいつまでも分解されず残っていくし、マイクロプラスチックが環境や人体に及ぼす影響も心配です。それでも今人類はますます多くのプラスチックを生み出し、リサイクルの仕組みもろくに機能していません。

そんなとき、たまたまテイクアウトしたドリンクのカップに「植物由来原料」とか「100%生分解可能」とかの表示があると、なんか環境に優しいことをしたような気がします。植物製プラスチックなら、生ゴミと一緒に捨てれば自然に還ってくれる…そんなイメージがありますよね。

その手の環境に良さそうな素材「バイオプラスチック」は、従来型プラスチック=環境に悪い、というイメージを後押しにどんどん伸びています。大手企業もこの流れに乗り、コカ・コーラは「100%植物由来」をウリにしたニュータイプのペットボトルを使い始めました。でも、そんなエコっぽいマーケティングの裏には、大問題が隠れてます。

そもそもバイオプラスチックとは?

堆肥化可能プラスチックの食器。(Image: MikeDotta (Shutterstock))

「残念ながら、『バイオプラスチック』という言葉には標準化された定義がありません」Beyond Plasticsのデジタルディレクター、Eve Fox氏はメールで説明しています。Fox氏によると、バイオプラスチックとは非石油の自然素材、たとえばトウモロコシやサトウキビ、小麦などでできたプラスチックだったり、生分解または堆肥化が可能なものだったりしています。

植物由来プラスチックの中には、完全にまたは部分的に生分解できるものもありますが、すべての植物由来や非石油系プラスチックが生分解できるわけじゃありません。バイオプラスチックと呼ばれるものの中には、堆肥化や生分解ができないものや、従来型プラスチックとの違いは原料だけ、というものもあるのです。

いわゆるバイオプラスチックの中には「主に化石燃料由来でありながら、ほんの少し生物由来プラスチックが入っているだけのものも含まれている」とFox氏は言います。「曖昧な言葉なんです」たとえば米コカ・コーラは、30%植物由来プラスチックが入っただけのボトルを「PlantBottle」と称して10年近く売っています。

リサイクルできるんでしょ?

Image: MikeDotta (Shutterstock)

ほとんどのバイオプラスチックは他のプラスチックと同じリサイクルの流れでは処理できず、混ざってしまうと全体が使えなくなることさえあります。でも多くの消費者向けバイオプラスチックは、条件がそろえば堆肥化はできます。堆肥化可能なバイオプラスチックは必要なときだけ使えて、要らなくなったら微生物が分解して堆肥として使える、Win-Winな気がしてきます。

でもその「条件がそろえば」が曲者です。たとえば、筆者の家の近くにあるコーヒーショップが使っているバイオプラスチックカップはGreenwareというブランドですが、それを運営するFabri-Kalという会社のWebサイトには「あなたたちが正しいことをしていることを顧客に示しましょう、Greenwareで」とあります。そこではGreenwareの原料が植物で、石油ではないことが誇らしげに語られ、それが「消費者との共鳴」だとされています。でも細かい説明をよく読むと、Greenwareのカップは「家庭での堆肥化には不適切」とあり、普通の生ゴミと一緒にしても堆肥にできないことが発覚します。Eco Productsというオフィス用品でも使われているブランドでも、家庭での堆肥化をしないようにと言ってます。

家庭で堆肥化できないってことは、たまたま住んでる自治体で堆肥化施設を運営してるとか、民間の堆肥化施設が近くにあるとかじゃなければ、まったく堆肥化できないのと事実上同じです。ちなみにそういった専用の堆肥化施設を使える条件にある人は、米国でも27%しかいません。つまり残りの73%の人は、「堆肥化可能」なはずのバイオプラスチックを入手しても、結局埋め立てゴミにしかできないんです。

環境に良いはずじゃないの?

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バイオプラスチックと非バイオプラスチックで、1対1の比較をするのは難しいです。従来型プラスチックは原料に石油を使うので、温室効果ガスを発生します。生産時の二酸化炭素排出という意味では、バイオプラスチックのほうが少なそうです。ある研究では、米国内のプラスチックの原料をすべてトウモロコシなどにすることで、温室効果ガス排出を25%削減できるとしています。

でも、バイオプラスチックがそれ自身の課題を生み出しているのもまた事実です。従来型プラスチックとバイオプラスチックを比較した40本以上の論文を調査した研究が2021年に発表されたんですが、その結果多くの論文でバイオプラスチック生産における重要な要素、たとえば土地や水の利用が考慮されてないことがわかりました。つまりバイオプラスチックが環境に与える影響は、まだまだ全体を見て評価されてないんです。

有害物質はバイオプラスチックにも含まれる

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自然の原料からできているとはいえ、それを加工するために、バイオプラスチックには有害になりうる化学物質が含まれています。プラスチックが分解されれば、その物質も自然環境に放出されてしまいます。そうした物質の多くは、従来型プラスチックに含まれるのと同じものです。最近の研究では、バイオプラスチックに含まれる化学物質は従来型プラスチックと「同じように有害」だとしています。

受け入れない堆肥メーカーも

堆肥化可能な素材だからといって、堆肥メーカーがバイオプラスチックを歓迎するとは限りません。

2019年、米国オレゴン州の堆肥製造業団体が、堆肥化可能な食品包装や食器を受け入れないことを発表しました。団体側の挙げる理由はいくつかありますが、まず「堆肥化可能」といっていても必ずしも堆肥化できないこと、堆肥化可能なものとそうでないものが混合しやすいこと、そして堆肥化できるプラスチックだけを使っていても、それが入った堆肥は販売しにくくなってしまうこと、バイオプラスチックから出る化学物質が土壌に放出されるかもしれないこと、などなどです。

「堆肥化可能な製品は価格が高いだけでなく、我々の施設の運営コストも高め、堆肥の販売力を弱めるのです」と上の団体は言っています。「堆肥化可能な包装は『排出ゼロ』のゴールを達成する手段としてプロモーションされています。でも実際は、堆肥製造業者(およびリサイクル業者)による再生素材の効率処理を妨げています。リユースできる食器こそ、環境にとっては必ずといっていいほどベターな選択です。」

埋め立てても問題は消えない

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バイオプラスチックの埋め立ては、堆肥化できない場合の最終手段ですが、それもまた新たな問題を生み出します。埋め立て地の環境条件は多くの生分解可能・堆肥化可能プラスチックの分解を起こすようなものではないので、結局それらは分解しないままになってしまいます。またもし分解しても、さらなる温室効果ガスの発生を招きます。

「堆肥化可能な製品が埋立地に行き着くのは、米国には商用堆肥化施設が少ないのでよくあることですが、その環境負荷は大きくなります。なぜならバイオプラスチックは、二酸化炭素の30倍有害な温室効果ガスであるメタンを放出するからです」とFox氏は言っています。

バイオプラスチックも野生生物に有害

「生分解可能プラスチック」と言われると、プラスチックが土の中でひっそりと溶けていく図が想像されるかもしれません。でもバイオプラスチックも、海や川に入れば野生生物にとって大きな脅威になりえます。とくに生分解しないタイプのバイオプラスチックの場合はなおさらです。

「ウミガメはサトウキビでできたビニール袋でもクラゲと見間違え、従来型ビニール袋と同じくらい命を脅かします」とFox氏。

従来型プラスチックでよく言われる、マイクロプラスチック問題も同様です。地球全体に広がり、人間の血の中にまで入り込んでいるマイクロプラスチックを、バイオプラスチックが生み出す可能性もあります。最近の論文では、バイオなマイクロプラスチックでも従来型と同様、人体や生態系に悪影響を与えることを示すものもあります。

じゃあどうすればいい?

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バイオプラスチックを堆肥化しやすくする研究も進んではいます。でもFox氏は、バイオプラスチックに依存するのは生傷にバンドエイドを貼る行為に過ぎないと言います。

バイオプラスチックとは「より大きな問題、つまりエスカレートする、からまりあったプラスチック汚染と気候変動危機への対処からの目くらまし」だとFox氏は言います。「プラスチックの原料がトウモロコシでもサトウキビでも原油でもエタンでも、大した意味はありません。どれも化学物質が詰まっていて、どれも埋立地や焼却場や海に行き着いて、その過程でたくさんの温室効果ガスを排出するんです。」

もしプラスチックの何かを選ばなきゃいけなくて、なおかつもしバイオプラスチックを受け入れるような堆肥化施設を使える環境にあるなら、堆肥化可能なバイオプラスチックを選ぶのは悪くありません。でも本当にすべきなのは、バイオプラスチックにすべての解を求めることじゃなく、もっと長い目で見て持続可能な方法を考えていくことです。

「バイオプラスチックにかけている時間やお金を、リユースできるものの改善、拡大や、リフィルシステムへの切り替えに投じていくべきです」とFox氏は言います。

「かつて牛乳は、リユースできるガラス瓶で配達されていました。コカ・コーラなどのソーダも同じでした。我々はその時代に、より大きな規模で、今の消費者環境に適応した形で戻るべきなんです。コカ・コーラは最近、2030年までに製品の25%をリフィル・リターン可能な容器で販売すると発表しました。コカ・コーラは数年来、他の大手飲料メーカーと共同で100%生物由来プラスチックの飲料ボトルを開発していますが、私としてはこのリフィル・リターン可能容器のほうがずっと有望で革新的だと考えています。」