Photo: 大野恭希

学校にエアコンがついていたことにびっくりです。

お子さんをお持ちの方は度々耳にしているであろうGIGAスクール構想。子供ひとりひとりに個別最適化を図りながら、創造性を育む教育のICT環境整備の名称です。 ギズモードでは、iPadを授業に活用する様子をお届けしてきました。

毎回学校を取材すると子供たちがiPadを使って勉強する様子をうらやましく思っちゃうんですけど、今回は、GIGAスクール構想のiPad事例として語られることが多い熊本県の熊本市立楡木(にれのき)小学校、熊本市立藤園中学校へ取材してきました。

理科の授業はARを使うのが当たり前?

最初にお邪魔したのは藤園中学校、理科の授業です。 理科室へ入る前に学校で見つけたのは、学校から生徒へのメッセージのようなものが看板でありました。

Photo: 大野恭希

「スマホには 光もあるが 影もある」

深い。深すぎる.......。

Photo: 大野恭希

今日の理科の授業は、かすかに記憶が残っていた「植物の光合成と呼吸」。二酸化炭素や水が光合成によってデンプンとかを生み出すあれです。

黒板には授業のねらい、授業の流れが黒板に書かれています。最近の授業ってしっかりしているのですね。僕の中学校理科の先生は、学校泊まり込みでFF7(PS1)やっていて授業中は生徒とFFの話題で盛り上がっていたのを思い出します。

Photo: 大野恭希

理科室独特な機材がいたるところにあり、スライドガラス・顕微鏡を見るだけでワクワクしてしまったのはつかの間で、平成時代の学校とは違い、教室には大きめの電子黒板が配置され、生徒はひとりひとりドコモシールが貼られたiPad・教科書・ノートを持ち歩いています。

SIM対応iPadは利便性高いからいいですね。

池田 優平先生 Photo: 大野恭希

先生が見せてくれた図鑑アプリ「Plantale」を使った植物ARの画面です。 植物の断面や水が吸収される様子が動くため、非常にわかりやすい教材になっていました。

教科書の図だけでイメージするのとは違い、植物の生態を動きをつけて見ることができるため、頭に入りやすいし、何より楽しく授業を受けられそうです。生徒に話を聞くと「授業楽しいっすよ!」とのこと。こういう授業いいな。

Photo: 大野恭希

先生の説明のあと、生徒は植物の物質の働きに注目してKeynoteでまとめていきます。

紙とペンで書く時代とは違い、プレゼンする前提でKeynoteへまとめていくため、仕事の資料作っている感覚と似ているといいますか、しっかり理解した上でまとめることができるため、学習効率良さそうですよね。

教育ICTが学校現場で浸透していることを実感する一幕です。素直にうらやましい。

これからは生徒を主体とした創造的な学びが重要になる

理科の授業を拝見したあと、学校の目と鼻の先にある熊本市教育センターで、熊本大学特任教授 前田先生にお話を伺うことができました。

熊本大学特任教授 前田 康裕先生(左)と熊本市教育センター長 小田 浩之さん(右) Photo: 大野恭希

熊本市では、モデルカリキュラム開発と研修を熊本大学と連携して行っています。前田先生は「今までの学校は教科に力を入れていたが、それで不安定な未来社会を生きていけるのか?」と問いかけます。

Image: 熊本市教育センター

「教科を超えて、いろんな知識を持った人たちと課題を解決していく能力が求められています。新しい教育は横軸の矢印をどれだけ作っていけるのかが重要になっている」

縦軸にある教科があり、それを強化していくことが今までの考えでしたが、これからは横軸の「言語能力・情報活用能力・問題発見 / 解決能力・現代的な課題に対応できる資質 / 能力」が大事になってきており、特に桃色の矢印が重要であるといいます。

「教師が教え、生徒は教えてもらうという形式がこれまで授業の主流だった。できる子供たちが率先し手を上げて、他の子は黙っている授業があるのではないか?」

いやぁ、まさにその通りですね。得意な授業ではバンバン手を上げる子供がいれば、興味がない授業はぼーっとしてますからね。

前田先生は続けます。

Image: 熊本市教育センター

「今の授業は、子供たちが教えてもらう授業ではなく、子供たちが学び取り、自分たちが考えて、力を合わせて課題解決していく授業が求められていると考えている。

そして、現在の教育現場の多くの自治体では、問題集や教科書を代替する段階が一番多く、デジタルだから生徒同士で情報を共有しあったり、意見を議論し合っていくような、クラウド技術を使いはじめている。

次の段階は、子供たちが自分でアイディアを作り出したり、プログラミングを用いて協働で課題を解決していくようになると考えている。子供たちの持っている考え・才能を増幅する段階がくると見越してカリキュラムを作っている。創造的な学びが重視されてくると思います」

日本の教育環境は詰め込み型であると多くの人が警鐘を鳴らしてきましたが、それが大きく変化してきていると感じますね。今の子供たちが社会へ出る10年先には様変わりしそうです。

小学生の軽快なキーボードさばきを目のあたりにした

Photo: 大野恭希

教育センターのあと、熊本市立楡木小学校で国語の授業を見てきました。

この授業では、「敬語の使い方」を、子供たちでシナリオを作成。作ったシナリオをもとに自分たちで動画撮影し、みんなの前で発表するというものです。

20年以上前に敬語の使い方の授業なかったし(忘れているだけかも)、楽しそう!

Photo: 大野恭希

なにより驚いたのは、生徒が使っていたキーボード捌きです。

よどみなくキータッチする姿を見て「本当に小学生か!?」と思っちゃうほど。

子供ってなんでも飲み込み早くて大人がびっくりしちゃいますよね。年取ってキーの打ち間違いが日常茶飯事の自分は目を疑う光景でした。

Photo: 大野恭希

シナリオができあがったグループから、教室の近くに点々とあるグリーンバックを背に動画を撮影していきます。

撮影中にはセリフを間違えて何度も撮り直す様子や、動画チェックを共同で行う姿などがあり、熊本大学特任教授 前田先生が仰っていた、子供たちの創造的な活動を見ました。

Photo: 大野恭希

動画を撮影し終わったら、動画編集を行って、みんなの前で発表の時間。残念ながら授業時間が押してしまったため、編集作業が間に合わなかった様子です。

ここでデジタルの力だなぁと思ったのは、作った動画データを先生のもとへ一カ所へまとめられることです。 社会人になったら当たり前のことなんですけど、小学校の授業で生徒が迷うことなくデータの送受信ができることに驚きです。

左から楡木小学校 中西 英隆校長・倉崎 恵未先生(小学5年生)・熊本市教育センター指導主事 山下 若菜さん・熊本市教育センター指導主事 真金 竜樹さん Photo: 大野恭希

授業が終わった後、小学校関係者の方々へ話を聞きました。

Image: 熊本県熊本市立楡木(にれのき)小学校

中西校長が目指す小学校の姿は、個別最適な学びと協同的な学びを両立することといいます。

この日見た、教室の外に出られる授業ばかりではないと思いますが、教科書とにらめっこする授業ではなく、子供たちがイキイキしていたのは印象的です。

iPadが学校へ導入されたことで、先生にはどのような変化があったか?という質問が投げかけられると、「子供たちの新しい可能性に気づけたこと」だと熊本市教育センター指導主事の山下さん。

先生が教える立場の授業では、子供は静かに授業を受ける様子が思い浮かびますが、iPadを利用した子供主体の授業になることで、子供の表情が全く違うといいます。

GIGAスクール構想でICTが教育現場へ入ったことにより、端末レベルではChromeやWindowsが各自治体によって学校へ導入されています。もちろん各自治体によって予算配分は違いますし、教育目的によってどんな端末が導入されていくのかが決まっていきますけど、熊本市は「創造的な学び」という目的を実現するためにiPadを導入したんだなということがハッキリわかる取材でした。

Source : Apple