NASAスペース・ローンチ・システム(SLS、イメージ図) Illustration: NASA

次世代ロケットはパワー、安さ、信頼性が鍵。

3つを兼ね備えたロケットの開発レースが激化しています。いまを代表する世界のロケットのなかから、特に楽しみなものを12選んでみました!

1.NASA宇宙発射システム(SLS)

SLS 打ち上げのイメージ図 NASA

打ち上げコストは41億ドル(約5608億円)。

膨大な予算を注ぎ込んでNASAが開発中の宇宙発射システム(スペース・ローンチ・システム:SLS)。2016年に予定された打ち上げが遅れに遅れ、しびれを切らせている人も多いんじゃないでしょうか。

高さなんと98mのモンスターで、NASAがつけたニックネームは「メガ・ムーン・ロケット」。SpaceXのスターシップと異なるのは、1回限りの使い切りなことです。再利用はできません。

NASA

6月には4度目のリハーサルを終え、8月下旬のアルテミス1号の打ち上げでいよいよ初飛行を飾ります。

ロケットはミッションごとに調整が可能。アルテミス1号ではSLSブロック1で27トンの重量物を弾道起動に飛ばし、ブロック2バージョンでは130トンもの重量物を低軌道上に飛ばす予定です。昔のスペースシャトルみたいな外観ですけど、それもそのはずで、開発にあたってはかなり参考にしています。

1972年に月面から帰還して50年。2020年代の月面着陸と駐留、2030年代後半の火星有人飛行を視野に見据えたアルテミス計画の主力を担うシステムです。

2.SpaceXの超巨大宇宙船スターシップ

スーパーヘビー第1段ブースターにスターシップ(第2段ロケット兼宇宙船)を設営(2021年8月8日) SpaceX

NASAのSLSよりさらにデカいのがSpaceXの宇宙船スターシップです。

スターシップは「乗組員と貨物の両方を地球軌道、月、火星、その彼方まで運ぶ100%再利用可能な輸送システム」であり、「100トン超を低軌道上に運ぶ世界で最も強力なロケット」(SpaceXの解説より)。フルに積むと高さは120mにおよび、「史上最も高いロケット」でもあります。

これだけ大きいと環境への影響も心配です。 しょっちゅう爆発していることもあって、政府の環境アセスメントへの対応に延々1年も手間取っていました。6月にはやっと打ち上げ許可が出て、SpaceXイーロン・マスク創業者兼CEOは第1段と第2段完全装備の打ち上げは早ければ7月内!と意気揚々だったのですが、7月11日の打ち上げではまた派手に爆発して意気消沈中です。

アルテミス計画の有人月面着陸システムを開発することでSpaceXはNASAと契約を結んでいますし、イーロンには今世紀半ばには火星に地球人100万人を送る無謀な計画もあります。大事にいたらなければいいのですが。

3.ESAのヴェガC

Vega-C初の打ち上げは無事成功! ESA

こちらは大成功! 

欧州宇宙機関(ESA)の新型ロケット「ヴェガC(Vega-C)」。イタリアの調査衛星を積んで13日、仏領ギアナのギアナ宇宙センターから宇宙に旅立ちました!!!

ブースターのないシングルボディ。第1段から3段までは固体燃料ロケットモーター、第4段は液体燃料ロケットエンジン。 高さ35m。低コストで小型衛星を軌道に運ぶロケットです。ESA、Arianespace、イタリア宇宙機関の共同開発。

4.Arianespaceのアリアン6

アリアン6の打ち上げイメージ Illustration: ESA - D. Ducros

ESAとArianespaceは「アリアン6(Ariane 6)」というロケットも2014年から開発中です。狙いはズバリ、「政府資金に頼らなくても安く宇宙にいく足を欧州に確保すること」(ESA)。

完成の暁には800kmの太陽同期軌道(SSO)に4.5トン、静止トランスファ軌道(GTO)に最大10.5トン投入できます。初飛行は2020年を予定していましたが、今は「早くても2023年」と言われてます。

5.Blue Originのニューグレン

ニューグレンの打ち上げイメージ BlueOrigin

イーロン・マスクのスターシップとよく比べられるのがニューグレン(New Glenn)。Amazon創業者兼CEOのジェフ・ベゾス率いるBlueOrigin社が開発している超重量級打ち上げロケットです。

最近は有人宇宙船ニューシェパードによる有人飛行が話題のBlueOriginですが、ニューグレンのほうはもう少し時間がかかりそう。当初予定の2020年は見送りとなり、打ち上げは早くて来年にもつれこむ見通しです。

NASA宇宙飛行士ジョン・グレンの名を冠したロケットは、 第1段ロケットが25回のミッションに耐える再利用型。7つのBE-4エンジン搭載で、低軌道(LEO)に45トン、静止軌道(GEO)に13トン投入可能。用途は 「人と積載物を定期的に地球軌道とその彼方に輸送すること」(Blue Origin)です。

6.ESAのテミス

テミス打ち上げイメージ ESA

再利用型ロケットのトレンドに乗り遅れまいと、ESAが用意したのがテミス(Themis)です。

再利用型第1段ステージのプロトタイプの試験飛行は順調にいって2023年を予定。 デモ用ロケットの開発を手掛けるのは、2020年に最初の契約(3300万ユーロ)を取り付けたArianeGroup、搭載するのは再使用型プロメテウス・エンジン。

7.ユナイテッド・ローンチ・アライアンスのVulcan Centaur

ULA

ユナイテッド・ローンチ・アライアンス (ULA) の「ヴァルカン(Vulcan Centaur)」も遅れに遅れてる超重リフトロケットです。2020年に飛ぶ予定でしたが、今年12月デビューにずれこみ中です。

2段ロケット。低軌道(LEO)に10.6トン投入できるものから27トン投入できるものまで、ミッションに応じてさまざまな構成を用意しています。上段ステージを推進するエンジンはセントールV(Centaur V)、第1ステージはBlueOriginが開発するBE-4エンジン(こちらの納入が4年以上遅れている関係で年内初フライトが見送りになった)。

2019年にULA社Tory Bruno CEOは声明でこう語っています。

「ULAのアトラスロケットとデルタロケットは長年、米宇宙開発のバックボーンの役割りを果たしてきた。次世代ロケットはこの長き伝統を未来につなぐものとなるだろう」「ヴァルカンは、より高性能でありながら、より低価格。信頼性と精確性においては当社が誇る比類ない水準を維持している」

8.中国の長征9号

長征8号の初打ち上げ(2020年12月20日) 中国国家航天局

独自の宇宙ステーションを建設して人をじゃんじゃん送り込み、宇宙開発レースで存在感を増す中国。 いつの間にかロボット探査機も月の裏側と火星で計2台運用中だったりします。

中国版の大型ロケットといえば長征(Long March)ロケットの5〜8号が現役ですが、9号は別格のビーストです。高さ93m。低軌道(LEO)に140トン、月には50トンの輸送が可能(SpaceNews)。思わず二度見してしまうペイロードで、NASAのSLSといい勝負。

9.ロシアのエニセイ

超重量ロケット比較図。次世代ロケットは左からエニセイ、長征9号、NASAのSLSブロック1、ブロック2 Graphic: Thorenn

ロシアにも超重ロケットはあります。計画だけですが、「エニセイ(Yenisei)」という名前で、いちおう2028年に打ち上げ予定です。

今はウクライナで忙しくてクレムリンもそれどころじゃないし、昨年暮れから親露メディアに宇宙開発が崩壊寸前と叩かれて針のむしろ。実現するかどうかは定かではありませんが、それで大きな夢をあきらめる宇宙航空局ロスコスモスではありません。

国営メディアのタス通信が伝えるところによれば、エニセイは中サイズのソユーズ2号ロケットより15倍パワフルで、第1段は低軌道に70トン投入でき、将来的には月に27トンの貨物輸送を目指しているみたいですよ? 今はすっかりフィクションの領域ですが…。

10.Firefly Beta

Firefly Betaのイメージ図 Firefly

S〜Mサイズでも今後が楽しみなロケットはたくさんあります。たとえばFirefly Betaはテキサスの民間宇宙会社ファイアフライ・エアロスペース(Firefly Aerospace)が開発中の2段ロケット。 「8000kg級以下のすべての軌道発射ロケットでkgあたりのコストが最低」なロケットを目指しています。高さ60m。初打ち上げは2024年を予定しており、ペイロードは高度200kmの低軌道に11トン。静止トランスファ軌道(GTO)への投入だって可能です。

11.Relativity SpaceのテランR

テランR のイメージ図 Relativity Space

「テランR(Terran R)」は100%再利用可能な3Dプリントのロケット。カリフォルニアの宇宙ベンチャーRelativity Space社が昨年6月、6億5000万円の資金調達を発表して開発中のものです。2段ロケット、高さ66m、低軌道に20トン投入、3DプリントでこしらえたAeon Rエンジンを7基搭載。エンジンはおのおの13万7000kgの推進力を備えています。

気になる3Dプリンティングの工程は独自のもので、「ソフトウェア主導の製造、エキゾティックマテリアル、ユニークな設計ジオメトリを採用しており、既存の製造では再現不能」(同社発表)とのこと。ケープカナベラル基地から早ければ2024年打ち上げとなります。

12.ESAのPhoebus

Ariane 6ロケットを支えるPhoebus(イメージ図) ArianeGroup

最後のPhoebusはロケットじゃないけど、次世代ロケットをぐんとパワーアップしてくれる力持ちくんです。たとえばAriane 6の静止軌道へのペイロードは2トン以上プラスになって、製造コストの切り下げにつながります。ESAが2019年5月に開発を委託したのはMT AerospaceとArianeGroup。上段はふつうアルミ製ですが、Phoebusが使うのはカーボンコンポジット。そのほうが安いし、ペイロードの重量アップになるんだって。…未来!