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すでに臨床試験がはじまっています。

イギリスの国民保健サービスやさまざまな大学の科学者たちが参加する研究プロジェクト「RESTORE」では、ラボで培養された赤血球をヒトに輸血するという初めての試みに挑戦しています。この研究が成功すれば、従来の献血の必要性は変わらずあるものの、めずらしい血液型の輸血にも対応しやすくなるかもしれないのだとか。一体どんなものなのでしょうか。

どんなメリットがありそう?

まずは安全性を検証するために第一相試験が始まっています。ここでは健康なボランティア10名が参加し、ラボ培養の血液細胞と標準的な細胞(両方とも同じドナーから採取したもの)から少量の輸血を、4ヶ月の間隔をあけて2回受けることになります。現在のところ2名が実験用の血液細胞の輸血を受けましたが、副作用は確認されていないとのこと。

通常の献血で採取される血液細胞は新旧混在した状態のため、理論的にはラボでつくられた人工の血液細胞のほうが新鮮(赤血球の寿命は約120日間)だとみられています。そのため、標準的な細胞よりも長く生き残るのではないかと研究者らは期待しているとか。「この世界初の試みがうまく成功した場合には、長期的な輸血を必要とする患者が、将来的にはその回数を減らすことができるはずだ」と今回の主任研究員で血液学者、ケンブリッジ大学輸血医学のCedric Ghevaert教授はコメントを残しています。

効率性は高くないけれど...

血液をラボでつくる研究については、これまで科学界で困難なものと考えられてきたようです。というのも、骨髄にある幹細胞が新しい赤血球になるという自然の仕組みを再現することは難しいのだとか。そんななか今回の「RESTORE」の研究者らは、献血された血液から幹細胞を抽出し、独自の栄養素を混ぜることで細胞を増殖させ、そこからさらに健康で成熟した赤血球を精製するという方法を発見しました。

ただ、人間の体内で起きている仕組みと比べれば明らかに効率は落ちるといいます。人間の血液の約45%が赤血球で構成されている一方で、たとえば大さじ1〜2杯の赤血球を濾過するためには約24リットルの栄養溶液が必要とされています。このため研究が成功しても、献血の必要性は依然として変わらないようです。

とはいえ、この技術によって、めずらしい血液型の人や、鎌状赤血球症などにより通常の輸血を受けることが困難な人に、より確実で長持ちする血液細胞を供給できるようになる可能性があります。現在の見通しでは、ラボで培養された血液細胞が一般に利用できるようになるには、ヒトでの研究をさらに進めたうえで、5〜10年の開発期間を要するとのことです。